2023年10月20日(タジキスタン、ドゥシャンベ)
アジア防災会議(ACDR)が2023年10月20日、タジキスタンのドゥシャンベに於いて開催されました。テーマは「効果的な防災対策の実施―防災分野におけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進―」で、タジキスタン共和国政府非常事態・市民防衛委員会(CoES)、内閣府、アジア防災センター(ADRC)の共催で開催されました。ACDR2023には、18メンバー国の他、国際機関、地域機関、民間セクター、学術・研究機関の代表など120名が現地で参加し、オンラインでは7メンバー国から合計111名が参加しました。
<開会式>
タジキスタン共和国のマトゥルバホン・サットリヨン副首相は、タジキスタンが災害に強いインフラへの投資や国家災害リスク軽減戦略の採択を含む様々な取り組みを通じて、仙台防災枠組の実施に尽力していると挨拶しました。また、気候変動の影響は、地形の93%が山岳地帯であるタジキスタンを含むすべての国に影響を与えることを強調しました。
水鳥真美国連事務総長特別代表(防災担当)は、2030年までに中央アジアでは気候変動により500万人以上が国内避難民となると述べ、その影響を軽減するために、リスク管理へのパラダイムシフトが必要であることを強調しました。また、エビデンスに基づくデータ主導の意思決定を支援するため、データ分析や機械学習を応用してDXを取り入れることの重要性を指摘しました。
日本の松村祥史内閣府特命担当大臣(防災)は、災害リスクの特定、災害軽減への投資、「Build Back Better」の経験の共有の重要性を強調しました。また、ACDR2023が災害リスク軽減のための極めて重要な技術や専門知識を共有する場となることへの期待を表明しました。
ADRCの濱田政則センター長は、2023年8月にフィジーが32番目のADRCメンバー国として加わったことを発表するとともに、気候変動による災害リスクの増大と、それに適応しより強靭になるためのインフラや社会システムの強化の必要性を強調しました。
CoESのルスタム・ナザルゾダ議長は、ACDR2023がCoES、内閣府、ADRCの協力で実現したことを強調しました。本会議が、防災の政策共有、知識交換、協力のためのプラットフォームとして機能することを期待しました。また、タジキスタンは国連イニシアティブ「全ての人のための早期警報」のパイロット地域の一つとして活動していることに触れ、ACDR2023のホスト国として、国際社会の結束を高めることを表明しました。
<ラウンドテーブルセッション>
2030年に向けて仙台防災枠組の実施を加速させるため、ADRCメンバー国の経験と課題を共有することを目的として、CoESのナザルゾダ議長、SEEDSアジアの角崎悦子理事、国連防災機関(UNDRR)欧州・中央アジア地域事務所のセバスチャン・ペンジーニ所長代理が共同議長を務めました。
このセッションでは、ADRCメンバー16カ国(アルメニア、ブータン、インドネシア、イラン、マレーシア、モルディブ、モンゴル、ネパール、パキスタン、パプアニューギニア、フィリピン、シンガポール、スリランカ、タジキスタン、タイ、ベトナム)が、仙台防災枠組の4つの優先事項の実施における進捗状況と課題を強調する公式声明を発表しました。
これらの課題に対処するため、以下の提言を公式声明としました。1)特に災害データベース、早期警報、コミュニティベースの災害リスク管理に関する政策や、情報管理システム、地域的な知識の共有、災害対応メカニズムに関する施策について、協調して防災の取組を促進する政策や施策の共有を拡大すること。2) 複雑かつ越境的な災害リスク、特に地震、洪水、台風に対処するための地域協力を推進すること。3) 科学的根拠に基づくアプローチを重視し、複合災害リスク軽減のためのDX技術を取り入れ、ハザードやリスクの特定、マッピング、評価の分野におけるパートナーシップや共同プロジェクトを構築すること。
<セッション1 「災害に強い社会のための革新的な解決策:地震や地盤災害に対する防災技術」>
このセッションの共同議長は、タジキスタン国立科学アカデミー地質学・地震工学・地震学研究所のプロド・アミンゾダ所長と、アルメニア国家地震防災研究所(NSSP)のソス・マルガルヤン所長が務めました。
セッションには、タジキスタン、キルギス、東北大学災害科学国際研究所(IRIDeS)、UNDRR、CoES、トルコから6名が登壇し、地盤災害に対する現在の取り組みと課題について報告しました。本セッションでは、DXを活用した災害リスクの可視化、都市における耐震・斜面安定化対策、災害に強い建築・構造物の設計技術や新素材の開発など、多面的なアプローチによる災害リスク軽減のための最新の解決策が紹介されました。地震・土砂災害への対応には、センサーや人工知能(AI)技術を活用した震度推定や防災対策、新たな建築技術や材料の開発、防災の視点を取り入れたまちづくりなど、多面的なアプローチが必要であることが確認されました。また、地震による被害を最小限に抑えるためには、地域住民、関係機関、事業者が一体となって防災対策に取り組むことが不可欠であり、地域全体での迅速かつ効率的な対応が必要であることが確認されました。これらの課題解決に向けた最新の技術や実践事例を共有し、地震に強い社会の実現に向けた提言を行いました。また、地震や土砂災害による被害を軽減するための先進的な技術や取り組み、実践的な防災対策についても情報を共有しました。
<セッション2 「気候危機への対応: 氷河湖決壊洪水(GLOFs)や森林火災や洪水の観測と対応への革新的取り組み」>
このセッションの共同議長は、タジキスタン国立科学アカデミー氷河研究センター長のアブドゥルハミド・カユモフ教授と、韓国国立防災研究所(NDMI)のチャンジェ・クァク研究員が務めました。
タジキスタン、中央アジア防災センター (CESDRR)、国際総合山岳開発センター(ICIMOD)、韓国、CoES、アガ・カーン(Agha Khan)から6名のセッションスピーカーが登壇し、気候危機に関連する災害に対する現在の取り組みと課題について報告しました。気候危機により、世界各地で異常気象が報告され、社会と環境にとって特に深刻な脅威は、高温と降水量による氷河の後退、GLOFの増加、森林火災の頻発と広域化、洪水の大規模化・長期化・被害拡大などであり、本セッションでは、GLOF、森林火災、洪水の監視と対応に関する革新的な取り組みに焦点を当てました。また、気象災害リスク評価・予測におけるこれまでの取り組みや、衛星観測、リモートセンシング、AI、機械学習などの技術を用いた分析手法や予測モデルについても言及・評価しました。
<閉会式>
セッションの冒頭では、CoESのナザルゾダ議長がタジキスタンにおける防災分野での貢献者への表彰式を行いました。
次にADRCの笹原顕雄所長がACDR2023会議のサマリーを報告し、ホスト国であるタジキスタンに感謝の意を表しました。また、ラウンドテーブルセッション及びテクニカルセッションで共有された重要なポイントを紹介しました。
ADRCの小川雄二郎理事長は、世界災害共通番号(GLIDE)を通じた情報提供の取り組みを称えました。また、世界的に災害が頻発していることを指摘し、災害から学ぶことの重要性を強調しました。そして、ADRCが主催するトルコの地震被災地視察が、自国の将来の災害に備え、災害管理と災害への備えを強化することにつながると説明しました。
最後に、CoESのナザルゾダ議長は、地震と災害リスク軽減のために必要な対策を知ることの重要性を強調しました。また、メンバー国間でデータを共有・収集することの重要性を強調し、会議の終了を宣言しました。
(2023/10/28 15:00)