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ADRCの活動
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ADRC活動報告

2022年3月31日

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日本の準天頂衛星システム早期警報サービス(QZSS-EWS)は、衛星を利用して災害警報情報を送信します(図)。これは、特にネットワーク接続が制限されている地域(山岳地帯や島嶼地域など)で、警報情報を伝達する際に、地上の電気通信設備(TV、ラジオ、携帯電話、その他のデバイスなど)を強化します。日本は、2024年にアジア太平洋地域でQZSS-EWSを拡大する予定であるため、アジア防災センター(ADRC)はこの目的のためにフィージビリティ(実現可能性)調査を実施しています。最近実施された調査では、ADRCは次の3つの異なる地域環境で、災害リスクの種類が異なる場合のQZSS-EWSの使用について調査を行いました。

1)熱帯低気圧が発生しやすいバングラデシュの沿岸地域のコミュニティ
2)氷河湖決壊洪水(GLOF)を起こしやすいブータン・ヒマラヤの下流地域の農村のコミュニティ
3)ズッドの影響を受けやすいモンゴルの草原に住む遊牧民のコミュニティ

調査により得られた結果は以下の通りです。

- 既存のネットワークの接続が限られているため、警報情報が危険にさらされているコミュニティに到達しないか、到達した場合、情報が不明確、歪曲、または遅延する。したがって、これらのコミュニティの早期警報システムを強化する必要がある。
- 各対象地域には、バングラデシュのサイクロン準備プログラム(CPP)、ブータンのGLOF早期警報システム、モンゴルのズッド・リスク・マップなど、QZSS-EWSの運用化のための入り口が存在する。
- 長期的により大きな利益を得るためには、コミュニティメンバーの能力開発と意識向上に投資する必要がある。

3つのコミュニティにおいてQZSS-EWSは、以下の通り、人命と生計を救う大きな可能性を秘めています。

-「災害圏内」にいる個人に直接警報を伝達し、最寄りの避難場所の情報を通知する。
- 低電力広域ネットワークを介して作動するコミュニティのサイレンで自動的にアラームを鳴らす。
- コミュニティの電子掲示板に警報メッセージを直接表示する。

(2022/4/7 15:00)

2022年3月29日(オンライン)
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アジア防災センター(ADRC)は、1999年からメンバー国からの外国人研究員(VR:Visiting Researcher)の受け入れを実施しています。2021年3月時点で27か国から合計117名を受け入れており、メンバー国の人材育成および防災情報の収集を進めています。VRのプログラムは、日本国内で実施されるADRCでの研修プログラムを通じて、革新的かつ実用的な防災の取組みや技術を学び、国際機関との協力や連携について知見を得ます。同プログラムは、メンバー国の人材育成、対応能力の強化に留まらず、メンバー国とADRCとの間の防災協力の発展に貢献することが期待されます。

2020年度のVRプログラムについては、ミャンマー、タイ、インド、バングラデシュから4名が選考されました。しかし、新型コロナウイルス感染拡大の影響により来日が困難となり、「VRオンラインプログラム」が実施されました。
2021年度は、アルメニア、モンゴル、ベトナム、パキスタンから4名が選考されましたが、新型コロナウイルスの影響が続いたことにより、ADRCは、VRの方々の研究テーマを支援するため、来日前の活動として、「DRRレクチャーシリーズ」を開催しました。

この「DRRレクチャーシリーズ」は2022年3月に実施され、日本国内の防災に関する専門家を講師として招聘し、日本の国及び地方自治体レベルにおける基本的な防災対策、洪水や地震など、災害別の具体的な防災対策や最新の取組み、防災教育の普及、災害時要援護者と連携した防災活動など、合計8回の講義が行われました。この、「DRRレクチャーシリーズ」は、来日できていない上記8名のVRを対象としていましたが、さらに、外国人研究員の活動を幅広く知っていただくよう、メンバー国の関係機関の職員の方々にも多く参加いただき、聴講して頂きました。

(2022/5/2 15:00)

2022年3月29日(オンライン)
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2021年10月14日に開催された第1回日アセアン(ASEAN)防災閣僚級会合(AMMDM+Japan)において、ASEANと日本は、早期警報、緊急対応、情報共有、データ分析、事業継続など、災害管理におけるイノベーションとテクノロジーを活用した互恵的な協力に取り組むことに合意しました。この合意に沿って(また、ASEAN災害管理緊急対応協定(AADMER)作業プログラム2021-2025の実施に貢献するために)、内閣府とASEAN事務局は、2022年3月29日に「日アセアン官民防災セミナー」をオンラインで開催しました。日本からは、ADRC、国際協力機構(JICA)、国立環境研究所(NIES)気候変動適応センター、国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)、三井住友海上、応用地質株式会社、株式会社パスコといった機関がセミナーに参加しました。

セッション1「防災における技術革新」では、ASEAN事務局から「ASEAN災害レジリエンス概観(ASEAN Disaster Resilience Outlook)」、JICAから「地域防災計画策定8ステップ」、ADRCから「防災イニシアティブ」、NIESから「気候予測」、JSTから「事業継続マネジメント」に関する講演が行われました。ADRCの中川雅章所長は、GLIDE、センチネル・アジア、準天頂衛星システム早期警報サービス(QZSS-EWS)、コミュニティ防災(タウンウォッチングなど)、人材育成(客員研究員プログラムなど)、JICA防災研修など、同センターの革新的な活動を紹介し、ADRCの災害リスク軽減推進に向けた取組みについて説明しました。

セッション2「防災技術」では、ASEAN防災人道支援調整センター(AHAセンター)から「防災に関するICTロードマップ」、内閣府から「災害時情報集約支援チーム(ISUT)」、三井住友海上火災保険株式会社から「ビッグデータを活用した洪水リスク情報」、応用地質株式会社から「リスクコミュニケーションツールとしてのServiBers」、株式会社パスコから「防災におけるリモートセンシング技術の貢献」が発表され、防災における技術的な成果が報告されました。

本セミナーの成果は、AADMER作業プログラム2021-2025の実施や、日ASEAN防災作業計画2021-2025の策定に寄与することが期待されます。また、2023年に開催される科学技術フォーラムの開催に向けた協力も検討されています。

(2022/5/2 15:00)
2022年3月9日(オンライン)
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ADRCは、「世界津波の日」普及啓発イベントとして、今年度もオンライン津波セミナーを2022年3月9日に開催しました。今回のセミナーは、津波頻発国であるチリのバルパライソ大学(チリ)からマウリシオ・ライス・ガラルド准教授を招き、「チリにおける津波防災の経験」と題して講演いただきました。

はじめに、チリの概要について、スペインの植民地化から現代に至るまでの歴史的経緯、人口動態の変化と都市化の進展、地震や津波の多い地理・地形などが紹介されました。そして、災害リスクについて、チリはマルチハザードの国であり、その中でも最も顕著なハザードが地震と津波であり、例として1960年、2007年、2010年、2015年等に発生した津波を挙げ、これらの経験は津波リスク管理を強化する契機になったと述べました。

具体的には、第一に、日本のツールの採用などによる津波早期警報システムの技術的な改善や、津波現象の監視と研究の継続的な取組みが促進されました。第二に、国家建築基準法および耐震補強基準の策定と採択を導きました。第三に、「国家津波警報システム」(SNAM)と「津波予測・警報統合システム」(SIPAT)が適用され、人々に津波の危険性を周知させるとともに、安全な避難行動を促すようになりました。しかし、津波リスク管理は改善されたものの、チリでは都市計画の欠如、社会的・経済的・文化的な複雑さ、教育不足、テクノロジーの活用不足、インフラの整備不良などの要因から、依然として津波に脆弱であり、複雑な津波リスクの中で更なるシステムを構築していくためには、リスクガバナンスが重要であると強調しました。

最後に、ADRCの中川雅章所長が、講師と参加者への謝辞を述べるとともに、2022年1月に発生したトンガの火山噴火とその後の津波は、多くの国に津波の危険性があることを改めて認識させたとし、今後も日本や他の国で得られた経験や教訓を共有することで、ADRCは津波防災を推進していくと締め括りました。

本セミナーの講演資料など詳細につきましては、下記のサイトからご覧ください。
2021年度オンライン津波セミナー:https://www.adrc.asia/acdr/2021tsunami

(2022/5/2 15:00)
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