2024年8月19日
カンボジアのハック・マオ氏(気候変動局局長)とセム・サブス氏(気候変動局気候変動情報管理副主任)によると、カンボジアの全コミューンの44%は、気候変動により引き起こされ、頻発や強度を増した洪水、干ばつ、暴風雨に対して脆弱となっています。海面上昇が1,302mmに達すると予測される2050年までに、カンボジアの沿岸地域の約242平方キロメートルが浸水し、3億400万米ドルの経済損失が生じると推定されています。もし政府が気候変動の影響に対抗するための追加的な行動を提示しなければ、2050年のGDP計画は10%減少することになります。
2024年8月19日に開催された第3回アジア太平洋地域における災害リスク軽減のための気候変動予測に関するウェビナー・シリーズでこのような発表があり、パネリストや参加者はカンボジアにおける気候変動対策と課題について関心を示しました。これに対し、マオ氏とサブス氏は、カンボジアは他の地域諸国と同様、気候変動に適応し、その影響を緩和するための政策や規制を制定していると述べました。例えば、1)2030年までに再生可能エネルギーの使用率を現在の62%から70%に引き上げる、2)2050年までにオートバイの70%、自動車の40%をEVにする、3)2050年まで毎年100万本の木を植え、森林被覆率60%を達成する、といった目標があります。しかし、主な課題は、これらが異常な洪水や暴風雨などの気候関連災害による具体的な影響を予測していないことであると説明しました。そのためには、ダウンスケールされた気候データが不可欠となっています。現在のところ、カンボジアの過去の気候データはあまりありません。この問題は、気候変動の影響を測定したり、正確な予測を行ったりするためのツールや技術が政府内に限られているために、さらに深刻になっています。
このような懸念を踏まえ、他のパネリストからは、カンボジアで進行中の気候変動対策を補完する可能性のある気候変動予測に関する取り組みやツールが紹介されました。森信人教授(京都大学防災研究所 気象・水象災害研究部門)は、SENTANプログラムについて紹介し、極端な水関連事象の影響評価や、アジア太平洋地域の国々にダウンスケールした地球表面温度の上昇に伴うハザードの変化の分析といった、カンボジアとの協力の可能性について発表しました。中江川敏行氏(気象庁気象研究所応用気象研究部第二研究室長)からは、高解像度モデルとスーパーコンピュータを用いた地域レベルでの将来の気候を予測するツールについて紹介がありました。村田明彦氏(気象庁気象研究所応用気象研究部第一研究室長)からは、局地的な気候変動をシミュレートするための動的ダウンスケーリングのツールや手法について発表がありました。森範行氏(水災害・リスクマネジメント国際センターグループ長)は、ハザード、被害、社会経済的要因のデータ統合を含む、水災害とレジリエンスに関する包括的なプラットフォームについて紹介しました。このプラットフォームでは、様々な機関がそれぞれの気候データを提供し、統合することで、効果的に影響を予測し、危険にさらされているコミュニティに早期警報を提供することができます。
最後に、立川康人教授(京都大学大学院工学研究科 社会基盤工学専攻 水工学講座 水文・水資源学分野)は、アジア太平洋地域の国々が取り組んでいる気候変動対策に、SENTANプログラム(ツール、技術、データセットなど)が貢献できる可能性を強調しました。また、このウェビナーを通じて、SENTANプログラムとカンボジアの協力関係がさらに深まることを期待しました。
(2024/08/26 15:00)