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ADRC活動報告

2023年度ADRCオンライン津波セミナーの開催

2023年11月15日(オンライン)
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2023年11月15日、ADRCオンライン津波セミナー「住民主体の津波対策の現状と課題」が開催されました。津波常襲地域に住むコミュニティは、意識向上、避津波への備えが住民の日常生活に組み込まれていれば、人命を守り、財産や生活への影響を軽減することができます。

ADRCメンバー国から3名のスピーカーを招き、ADRC主任研究員のジェリー・ポトゥタン氏がモデレーターを務めました。本セミナーの目的である、1)コミュニティベースの津波対策プログラムや活動を共有する、2)コミュニティベースの津波対策活動を各国で実施する際の課題について議論する、をもとに発表および議論が行われました。

タイ・ミン・フオン氏(ベトナム防災総局(VDDMA)科学技術国際協力課防災専門官)は、ベトナムはいまだ津波災害を経験していないが、政府はコミュニティや学校を動員して津波に備えていると報告しました。その活動とは、学校やコミューンでの津波に関する啓発活動、定期的な津波訓練の実施、津波早期警報システムの設置などです。フオン氏は、ベトナムにおける津波災害への備えは積極的なアプローチであると指摘し、「ベトナムでは津波の経験はないが、津波が発生しないという意味ではない」と強調しました。同じ観点から、政府は、津波に襲われる可能性のある地域のコミュニティに対して、津波への備えに関する活動へ積極的に関与するよう求めていますが、困難に直面していると報告がありました。

ランジス・アラコーン氏(国防省県防災調整ユニット課長補佐(ポロンナルワ県)は、2004年のインド洋大津波でスリランカのいくつかの沿岸地域が被害を受けたと述べました。その経験を生かし、政府はコミュニティ組織(VDMC)の設立を含む津波対策プログラムを実施してきました。しかし、VDMCには「法的地位」がないことが課題のひとつであると述べました。そのため、政府はVDMCに財政的支援を与えることができませんでした。その結果、VDMCは「オーナーシップ」がないため、政府が導入した災害対策プログラムに「積極的な関与」をすることができませんでした。この経験からの教訓の一つは、法的な資金付与を伴わない「トップダウン」のアプローチは困難であるということです。

中野元太氏(京都大学防災研究所巨大災害研究センター助教)は、日本は過去に津波災害を経験していると報告しました。その中で、地域に根ざした備えの取り組みは時代とともに進化してきました。近年、日本では、地域の津波対策に「協働モデル」を採用し、より組織的なアプローチが推進されています。中野氏は、高知県四万十町の興津集落の事例を紹介すると、このモデルは、各協力パートナーが以下のそれぞれの役割を担っていると説明しました。1)ボランティア組織が学校、自治体、専門家をつなぐ、2)小学校が子どもたちに津波から身を守る教育を行う、3)町役場がインフラ整備を実施する、4)大学が地震・津波災害に関する専門情報を提供する。共同活動の一例として、「防災マップ」の作成が挙げられ、生徒たちは必要な津波避難対策を考えることができます。

閉会にあたり、ADRCの笹原顕雄所長は、知識を伝え、共有し、忘れないためには、津波災害に関する啓発活動を定期的に行うことが重要であると強調しました。 

本セミナーの詳細は、津波オンラインセミナー2023のウェブサイトをご覧ください。
(2023/11/22 15:00)

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