2022年6月15日(オンライン)
ADRCは、近年の津波災害リスク軽減の課題を踏まえ、2022年6月15日に開催さた津波セミナーのテーマを「津波リスクの理解と実践的な対策強化」としまた。課題のひとつは、津波災害リスクをいかにしてさらに低減するかというとです。津波の発生は稀ですが、その影響は他の災害と比較して致命的(例2004年のインド洋大津波では23万人以上が死亡)かつ高価(例:2011年の東本大震災による経済被害は約235億米ドルで世界史上最高)であるためです。
また、特に地震以外の津波発生源(2018年のスンダ海峡津波や2022年のトンガ山噴火津波など)に関して、津波リスクに関する知識をいかに高め、早期警システムやその他の備えを同様に向上させるかという課題もあります。さら、構造的な対策(堤防など)を、コミュニティレベルでの実践的な対策(意啓発、早期警報、避難手順など)でいかに補強するかという課題も残ります。
今年度のオンライン津波セミナーでは、ADRCが以下の3人の専門家を招き、経験や見識を共有しました。
1)インドネシア シャクアラ大学津波防災研究所 部長、同災害学大学院 教授 テク・アルビシャーリ氏
2)タイ内 務省防災局 国家災害警報センター 災害警報専門官 ソムヌーク・スワトゥク氏
3)ADRC研究部長 荒木田勝氏
議論の内容は以下のとおりです。
1)津波リスクは動的なものであり、タイやインドネシアの経験に見られるように、津波リスクは地域社会が脆弱性を軽減する能力によって増加したり減少したりする。2004年のインド洋大津波の際には、津波に関する知識や理解、対策が限られていたため、リスクは高かった。タイでは、国家災害警報センター(NDWC)を設立し、早期警報システム(EWS)技術を活用して津波リスクを軽減する取り組みが行われている。インドネシアでも、安価で効果的な津波早期警報システム(TEWS)、例えば安価な海面測定装置(IDSL)の設置が報告されており、津波リスクを低減するための取り組みが行われている。
2)コミュニティの回復力を高めるために、実践的な対策がスケールアップされる必要がある。TEWSが導入されたことで、当局は津波早期警報を発令し、避難のための時間を想定することができるようになった。しかし、コミュニティレベルでの実践的な対策はインドネシア、タイ、日本で異なるため、コミュニティがそれぞれの対策をさらに学び、改善できるように、経験(例:津波発生時の妊婦、障害者、高齢者の避難方法など)を共有することが重要である。
3)津波災害時の対応に役立つ宇宙技術、特に日本の経験で強調されているように、東日本大震災では、宇宙衛星が撮影した画像は、前後の写真を比較することによって、津波災害の影響を評価するのに役立った。また、2022年1月に発生したトンガの火山噴火と津波では、衛星画像が災害前後の植生マップ作成に役立ち、地上技術が途絶えた津波災害からの対応と復旧作業を補強した。
そして、全体的な議論では、将来的に津波災害の影響を軽減するためには、津波リスクについて更に学び、情報や経験の共有を続けることが不可欠であることが示唆されました。また、最も重要なことは、津波対策の知識や技術を、次世代に伝えていくことであるとしました。
(2022/07/31 15:00)