6 防災に関する知識の普及、意識の向上資料の企画

6−1 課題把握の方針

 防災知識の普及、意識の向上資料の企画について、アジア諸国でのこれらの課題に対するニーズの把握を行うとともに、各国が行っている防災知識の普及、意識の向上のためのツールや広報資料、教育資料など普及資料の収集を行う。それらの結果をデータベースとして作成し、アジア防災センターのホームページを通じて、それらの情報の共有化を図る。
 さらに、各国が防災に関する普及・啓発資料等を作成する際に参考となるガイドライン、マニュアル等の資料を開発するとともに、アジア防災センターとして主体的に企画段階から参画し、上記リソースの有機的活用を図っていく。

6−2 ニーズの把握方法

 アジアにおける自然災害の多様性と、災害多発国の多くは開発途上国であることを考慮すると、アジアにおける自然災害の軽減を図るには、災害による直接の被害者である一般市民層など国民一人一人への防災知識の普及と彼らの防災意識の向上が不可欠であると思われる。
 しかし、各国の事情はそれぞれ異なるため防災知識の普及及び防災意識の向上に関する各国のニーズもまた異なるものであり、アジア防災センターとしても、各国毎のニーズを把握し、適切な対応をする必要がある。
 そこで、アジア防災センターでは、次のような方法により防災知識の普及及び防災意識の向上に関する各国の状況を調査すると共に、各国のニーズを把握することとした。

既存資料の収集分析
各国防災担当者との対話
カントリーレポート
専門家会議

これらの結果把握した各国の状況を表6-2-1に示す。

表6-2-1 各国の防災知識の普及・啓発に関する状況

国 名 普及・啓発に関する状況
バングラデシュ @ サイクロンや高潮に関する一般情報
A 洪水に関する一般情報
B Thana災害活動計画の概要
C Union/Pourashava災害活動計画の概要
D 災害発生箇所を描いたバングラデシュカレンダー/ポスター(毎年発行)
E Thanaのカラーベースマップの購入と配布
F 災害管理に関するニュースレターの発行
中 国 @ TV放送、新聞、定期刊行物といったマルチメディアを利用して、すでに起こってしまった災難や災害軽減のための適切な活動を、視聴者受けする形でタイミング良く報道し、災害軽減についての知識を教えるコースや特別プログラムを提供。
A 中学校や小学校のカリキュラムに災害軽減に関する新しい内容を追加し、十代の若者が災害を引き起こす原因や宇宙の法則、そして、災害が発生する場合の予防策について理解できるようにしている。高等教育の学校では、どのレベルでも災害軽減についての教育を行い、このような教育が災害軽減に結びつき、災害軽減のための多くの中堅的人材を育成。
B 地方政府の全ての階層や専門部署がその特殊な環境や状況に応じていろいろなレベルの災害軽減のためのトレーニングコースを設けてきた。(Hubei省のChangyang郡では、過去数年に7期に亘り、地質学的災害予防についてのトレーニングコースを開催し、150人を超える人々が参加した。また、その科学的普及の宣伝に120を超える催しを行い、1万8千人の人達を教育。)
C UNDP、関係国及び国際機関と協力し、災害軽減についての一連のトレーニングコースを開催。(1993年から1999年にかけて、災害の取り扱いに関するいろいろなトレーニングコースが、BeijingAnhui省のHefeiYunnan省のJinhongHunan省のChangshaそしてShandong省のJinanで連続的に開催され、全ての階級の幹部達の災害管理レベルを向上。)
インド 自然災害管理プログラム(NDMP)に関する中央政府の計画は199312月から、初めて実行されている。プログラムの主な成果は次のとおりである。
@ 1995年、ニューデリーにおいてインド行政管理研究所において、国立災害管理センターを設置。
A 国の25州のうちの16州の訓練機関において災害管理部門を設置。
B UttarkashiLatur地震のような主な災害の文書化、KeralaSikkimでの地滑り、Rajasthanでの干ばつ、Andhra Pradeshでのサイクロン緩和に関する研究
C Lal Bahadur Shastri 国立行政研究所の訓練生が利用するための教材の作成
D 自然災害管理に関する様々な訓練プログラムやセミナーの開催や支援
E 新聞、郵送物や国際防災の日や映画を通した、公共教育と住民意識に関するキャンペーン
F 国際防災の10年に関する子ども用の広報誌(英語とヒンズー語)を45,000部作成し、学校の子どもたちに配布。
インドネシア @ 全てのBAKORNAS(国家自然災害管理調整委員会)のメンバーは、職員訓練、市民参加の訓練あるいは公衆の意識啓発といった教育活動によって組織づけられる
A 洪水、干ばつ及び地すべりに関する教育活動は、公共事業局の州/地区レベルのスタッフや大学などの他機関によって行われる。
B 地質学の災害教育は、エネルギー・鉱山省、気象学及び地球物理学委員会、大学等によって行われる。
C 山林火災/もやに関する教育は、応急活動関連については林野省によって、モニタリングと初期検地及び移送手続きについては、大学と連携して環境庁によって行われる。
D 1999年、BAKORNAS事務局は、山火事啓発キャンペーン(Forest Fire Awareness Campaign)と「即答チーム(Quick Response Team)」(QRT)の訓練を組織する。
    9月1日は防災の日、1月17日は防災とボランティアの日と定め、それぞれ一週間前から、普及、啓発、訓練のイベントを実施。特に、前者には首相が訓練に参加して国民の意識改革に努力。
識字率は100%に近いが、国民の防災意識の一層の向上のため、今後教材として、まんが、写真、絵なども活用したい。
各自治体は各種ガイド、パンフレット、学校教育向け防災教育読本等を作成。
ハザードマップ作成は最近まで反対があった。これは、地価の低落につながるためだが、早く危険を知らせるメリットを評価されて、作成されつつある。
カザフスタン 緊急時に要求される活動についての国民への教育では、特定の地域に特有の自然災害についての情報と自覚を普及してもいる。危機管理スタッフや関連する職員の教育と再教育も指導されている。
@ 国内の27の訓練センターでは、異なるレベルからの職員が毎年50,000人以上、訓練を受けている。
A 実際的な教育と現実的な練習は、市民防衛の基礎を成すと考え、主に、救助・技術・事前調査・その他の専門的な準備が指導される。訓練は、非常時に行われる実際の活動に絞られている。
B 異なる施設で教育されている児童と学生のために、「危機的状況の生命維持の保護(Protection of Critical Life Support)」という課程を考案。専門学校と大学では他に「生命維持の基礎(Basics of Life Support)」という課程がある。
C マスメディアは積極的に国民の教育に参加している。毎日ラジオやテレビで、機関の専門家によって数百の発言や短い指導がある。小冊子やビデオ、パンフレットもある。
D 本部スタッフは特殊な訓練を受ける。同様に軍人の訓練も進んでいる。これらの方策は、緊急救助チームやその他の関連する職員を訓練するためのものである
マレーシア @ 災害準備を向上するためにマレーシア政府は、社会崩壊と経済的損失を避け、最小化するとともに人々の生命と財産を保護するという究極的な目標を持って、洪水が起こりやすい地域の人々に対し、防災に関する教育を継続的に行っている。
A 教育と意識啓発プログラムは、自然災害の危険に対する意識向上を目指し、テレビやラジオなどの様々なメディアを通して行われている。
B 救急処置に関する市民教育と実践的な訓練も、自然災害の起こりやすい地域で実践されている。
C さらに、洪水中の救命に関する発表が行われたり、洪水のおこりやすい地域に、モンスーン期には子供たちに防災に関する冊子を配布したりしている。
D マレーシア赤十字社や防衛省のような機関はまた、どのように洪水から身を守るのかについて、一般の人々、特に子どもたちを教育する役割を果たしている。このため、防災に関する社会教育と意識啓発によって、適切な緊急対策を起こす能力を含めた高いレベルのコミュニティ意識をつくることを目指しており、それによって人々が自然災害の影響に対処し、災害に備えて生き残っていけるようにするのである。
モンゴル 自然の危険に関する周知活動について組織的な活動は十分とは言えない。あらゆるタイプの災害に対する予・警報は、ラジオやテレビを通じて国内全域で放送される。しかし災害た起きていない時に人々に周知を促すためのいかなる活動もない。不幸なことに、ラジオ、テレビ、及び新聞は、自然災害が既に起こった後にのみ、特別番組を報道する。自然災害に関連する問題についてのいかなる宣伝もない。また大衆への周知のためのいかなる本、及び小冊子も出版されていない。予・警報システムは、大都市や定住地域では有効に作動するが、人口密度が低く、また通信システムが不充分であるのために、田舎の人々は、即時に情報を得ることができない。
韓  国 @防災教育
42,984名の職員が、1999年3月29日から5月14日まで、自然災害対策の能力を高めるために、研修を受けた。プログラムは計画、危険な状況の管理、被害報告、復旧計画の策定や関連法の習得が含まれる。
A防災訓練・演習
災害に対する予防対策と早急な応急対策を強化するため、1999年3月12日から3月14日にかけて、地域住民や関係機関とともに、コンピュータでシミュレーションされた災害条件下での演習や、災害予防のための包括的訓練、各地域ごとの予防訓練が行われた。
・コンピュータでシミュレーションされた災害条件下での演習
災害管理の能力を高めるため、1999年3月12日から3月14日にかけて、コンピュータでシミュレーションされたさまざまな災害条件の下での演習が行われた。
・災害予防のための包括的訓練
1999年3月25日、Sumjin川において、YANNY台風(1998年7月)と同じ威力を持つ台風が襲来したという条件下で防災のための包括的訓練が行われた。訓練プログラムには、救命救助、復旧測量等が含まれていた。
・各地域ごとの予防訓練
1999年3月15日、地方自治体がそれぞれの地域特性に応じた条件での災害予防訓練を行った。
地震に効果的に対処するため、政府は、1999年4月15日、5月14日及び9月15日に、コンピュータでシミュレートされた地震条件の下の練習を行った。 
B防災のための広報活動
韓国は、防災に対する国民の参加及び意識啓発のため、5月25日を「防災の日(National Disaster Prevention Day)」として制定した。
「防災の日」の主なイベントは、災害防止施設・器具の点検、防災のための教材やキャンペーン、被災地域とその復旧過程の写真の展示、防災ポスターのコンテストである。
ネパール  災害管理関係者、教師、生徒、ソーシャルワーカーや国民が、IDNDRデイプログラムに参加した。毎年、国民の意識啓発プログラムがラジオやテレビで放送される。これに加えて、災害の危険のある時期には、国民の意識啓発のために、ポスターやパンフレットが配られたり報道機関による広報が行われる。公共メディアは様々な政府組織・NGO・社会組織との連携のもとで、国民の意識啓発に貢献している。
パプアニューギニア @ Ulawun山の火山錘の崩壊と津波に関する小冊子の作成
A 津波に対する意識啓発ポスターの作成
B 19999月より、パプアニューギニアとADRCは“津波に対する意識啓発プロジェクト”に
 共同で取り組む。(別紙6−3参照)
フィリピン 全国で防災訓練実施。コミュニティ、NGO等の活動活発で地域住民の防災意識は高い。
    ロシアEMERCOMの活動のひとつの主な方向性は、異常な状況下での行動の規則に関する国民の意識啓発である。非常事態に対し国民及び国土を保護するためには、この責務は連邦の対策システムの主流に位置する。
数年前に、新しい訓練プログラムが高校及び専門教育用に導入。それは「生命維持の安全性の基本」とよばれ、「人間の自己防衛の技術を発達させること」を目的とした。この種の訓練プロセスは次の3段階で進行する:
・ 迫りくる状態についての把握
・ それを回避する対策
・ 個人に影響が及びそうなときの行動の順序
 高等教育機関の教育課程にも類似したプログラムが含まれているが、訓練計画は各機関の設備にしたがって変えられている。このプログラムにおける大きな注意点は、異なる学生グループに対する専門性の必要の度合いを考慮し、危機状況を防ぐことに集中している点である。例えば、技術者のたまごは、化学上危険にさらされそうな設備において起こりうる状況やそのような状況の発生を防ぐために何をすべきかといった点について意識を高めるよう指導される。
ロシアEMERCOMは、マスメディア機関との綿密な連携をもって活動している。省の要請により、特別のラジオ番組「Survival school」及びテレビ番組「TV-guard」が製作され、定期的に放送されている。これらの番組は、危機状況下での正しい行動を説明している。この他、省は、危機状況における正しい行動に関しての意識啓発のため印刷物を配布している。省独自のイラストの入った小冊子も同様の目的で配布されており、長い経験と伝統を誇る。
シンガポール @ 訓練及び練習
偶発的な事故の計画が包括的かつ効果的であることを確実にするために、様々な緊急事態関連機関によって訓練及び練習が指揮される。このような訓練及び練習は公共機関はもちろん、建物の所有者や在任者にも必要とされる。一つの例として、様々な高層商業建築物で、毎週月曜日の朝、市民防衛軍により火災訓練が指揮される。加えて、実際の準備と緊急時の職員の対応能力を高めるため、定期的に訓練が指揮される。
A 一般人の自覚、教育、参加 
 ・ 効果的な非常時準備は全住民の参加を必要とする。1982年の開始以来、市民防衛軍は緊急時の準備のために共同体関係計画を実行してきている。人々は、定期的に知識を保持され、ニュースや広告、ポスター、リーフレットなどの様々な伝達手段を通して緊急時の準備の必要性と重要性を思い出す。人々へのメッセージの根底にあるものは、「準備だけがあなたを守る」ということである。
 ・ 火災予防、安全、避難、救助、初期援助などを網羅する公教育計画は異なる対象のグループに対して発達してきた。これらの対象は、子供、主婦、年輩の市民、学校、工場や商業施設である。長期の目標は、それぞれの家庭に少なくとも一人は緊急時の準備を体得した人がいることである。
 ・ 市民防衛を促進し、緊急時の準備活動、特に救助、飲料水の配給、献血などの運動を人々に参加させるため、市民防衛軍によって膨大な共同体と大衆のネットワークが設立されている。
スリランカ 国立災害管理センターにおいては、住民の災害に対処する自信を高めるために、災害管理、災害準備、防止、緩和措置と危険軽減に関する分野で、意識啓発を進めている。また、メディアを含む各種の情報発信源を通して、災害管理、災害準備、防止、緩和措置と危険軽減に関する政策やプログラムが周知されるよう努めている。
    歴史上、タイの人々の多くは大災難にほとんど遭遇していない。その結果、タイの人々は安全性の文化を欠き、日常生活をあまり用心せずにおくっているように見える。これらのことは大災害、特に自動車災害の増加につながりかねない。しかし、政府高官や市民防衛ボランティアが受講することが可能な市民防衛事務局が実施する災害に関連するコースが必要である。さらに、関連する政府又は非政府機関の双方の要求を満たすため、災害に関連するカリキュラムと一緒に、災害管理の多くの研究所が最近設立された。コースは次の通りである:
・ 地方自治体及び公衆衛生部門からの政府高官のための基礎的及び専門的な消防士コース。
・ 学生、若者及び市民の防衛ボランティアのための基礎的な救助コース。
・ 多数の消防士と衛生部門高官のための消防インストラクターコース。
・ 災害に関連する他のトレーニング・コース及びセミナー。
 さらに、市民防衛事務局は常に非構造的方策による災害軽減、ラジオ、テレビ、新聞、パンフレット、パンフレット及び小冊子を通じた災害の脅威に対する意識啓発を行う。
ヴィエトナム テレビ・ラジオなどマスメディアで洪水暴風雨予報・警報を放送。
中央レベル、プロビンスレベル、ディストリクトレベル、リージョナルレベルに分かれて研修実施。最も重要なのはディストリクト、リージョナルレベル。コミュニティーの代表を招待して研修を行っている。
ス イ ス マネジメント・レベルを対象に研修実施。
人道的救援では、スイス救済ユニットがあり、ここの研修コースには海外からの参加もある。

これまでに把握できた各国の防災知識の普及及び防災意識の向上に関するニーズは、概ね以下のとおりである。
(各国に共通するニーズ)

インド、パプアニューギニアなど、多言語国での防災知識の普及及び防災意識の向上
インド、ネパールなど識字率の低い国における、防災知識の普及及び防災意識の向上
ネパール・モンゴルなど国民の多数が遠隔地に住む国での、防災知識の普及及び防災意識の向上
防災知識の普及及び防災意識の向上のための「ローカルコミュニティ」の強化
各地での防災知識の普及及び防災意識の向上活動に携わる人材開発のための地域協力など


6−3 普及・意識の向上資料の企画

6−3−1 パプアニューギニア津波防災啓発資料

「4.ニーズ・シーズの把握による防災協力の推進」の項で触れたように、アジア防災センターは、PNG政府からの要請により津波防災啓発プロジェクトへの協力を行うこととし、それによりPNGの政府各層のみならず沿岸部の住民及び学校生徒向けにパンフレット及びブックレットを作成の上、配布することとなった。以下に、本プロジェクトの企画内容及び実施状況につき説明する。

1) プロジェクトの背景

 1998年7月17日午後7時過ぎにパプアニューギニア北西沿岸沖合い30kmを震源とするマグニチュード7クラスの地震があり、その直後アイタペ西岸を中心とする沿岸部を幅40〜50kmにわたり巨大な津波が襲い、少なくとも2,200名もの尊い命が失われた。以来パプアニューギニアでは、国をあげて津波災害で傷ついたり家族や住む場所を失ったりした住民への支援に加え、将来の津波災害に備え、防災体制を整備するための努力を開始した。
 この動きの中で、国民・住民に対して津波に関する正しい知識を知らせ、もって防災に役立てるため、同国政府・大学等を中心とした国家防災啓発委員会(議長:パプアニューギニア大学地質学教室Hugh Davies教授)が津波啓発プログラムを計画・実施することになった。

               ワラプ村付近の状況             シサノ村の状況(基礎の上には何もない)

 

2) 問題点


 国家防災啓発委員会では、国民への津波防災啓発プログラムを策定していたが、その過程で次の問題点が明らかとなっていた。
 まず、津波防災啓発プログラムにおいて作成すべき、とされた対象は、「津波啓発ビデオ」、「津波防災ポスター」、「津波防災パンフレット」及び「津波防災ブックレット」(小冊子)である。しかし、同国だけでこれらすべての資料を作成する余裕はなく、海外の関係機関に協力を求める必要があった。
 アジア防災センターも協力要請を受けたが、普及啓発資料の企画作成を行うのは、防災情報の共有化を通じてアジア地域における防災協力を推進しようとする当センターの設立趣旨にもかなうことから、アジア防災センターは同国と協力して津波の知識を国民に広める津波防災パンフレット及びブックレットを作成することになった。同時に同国の津波防災体制の強化のために開かれたパプアニューギニア津波防災会議(PARTIC)に参加し、アイタペ津波災害の実状をより詳しく把握し、パプアニューギニア各層の対応を理解するとともに、日本及び世界の津波災害の経験や教訓を伝えることが不可欠と判断し、同会議にも参加した。なお、会議の模様については、「4.ニーズ・シーズの把握による防災協力の推進」の項で説明したとおりである。

国家防災啓発委員会議長・Hugh Davies教授  国家防災委員会の主要メンバー
 

 

3) 津波防災パンフレット及びブックレット


 アジア防災センターは、パプアニューギニア政府との間で津波防災啓発資料共同プロジェクトを実施することで合意し、1999年9月23日覚書に調印した。(写真参照)

パプアニューギニア政府地方自治省での覚書調印式
(左からColin Travertz次官、Ludwick Kembu NDMO局長、ADRC小川所長)

○ 津波防災パンフレットの主な構成
 パンフレットの構成は概略次の通りである。

過去の津波災害(パプアニューギニアは津波危険国)
津波の発生メカニズム(津波はなぜ起こるのか)
防災対策の知識(津波から身を守るには)
緊急時の連絡先など防災知識

           1990年代の世界の津波災害          パプアニューギニアの過去の津波災害
  


津波の代表的な発生メカニズム(断層のずれによる波の伝播)

4) 今後の課題

 アジア防災センター及びパプアニューギニア国家防災啓発委員会の協力により津波防災パンフレットの内容はほぼ固まり、印刷を待つ状況にある。
 英語版を20万部、現地語であるTok Pisin語版を10万部印刷し、英語版については、15万部を中等学校(6〜8学年)で配布し、 あとの5万部を日刊紙にはさみこむことを計画している。これ以外のものについては、政府災害管理室の支援で各州の地域住民に配布する予定である。時期は5、6月頃を予定している。
 さらに、より詳しい内容の津波防災ブックレットについては、2000年度中に2万部を作成し、学校及び地域社会のほか、同国の指導者層や専門家にも配布する計画となっている。
 このように、パプアニューギニア国家防災啓発委員会は、津波防災啓発プログラムを学校を中心として展開することを極めて重視しており、政府・教育省も本プログラムを全面的に支援している状況である。教育省では、学校のカリキュラムの中に津波防災の知識を取り入れることでほぼ合意している。学校で子供たちが津波について学ぶことは、本人のみならず家族や地域社会にも津波の知識が伝えられることが期待できる。これを繰り返し行えば、地域社会の文化として、次の世代にも津波防災の知識が伝承されることにもつながるであろう。日本と同様に、パプアニューギニアにおいても一種の「津波文化」が広がるのもそれほど遠い将来のことではないと思われる。
 アジア防災センターとしても、関係機関等の理解・協力のもと、このような活動に対する必要な協力を通じて防災知識の普及及び防災意識の向上を支援していく方針である。
 なお、既に作成された津波防災ポスターのほか、パンフレット作成において参考にした諸資料のうち、「奥尻島防災ハンドブック」、地球科学雑誌「TSUNAMI−PNG 1998」を次に示す。

                       パプアニューギニア津波防災ポスター

     

                奥尻島防災ハンドブック                                    TSUNAMI PNG 1998
         

 

6−4 学会・国際会議等の情報収集

アジア防災センターでは、防災に関する知識及び意識の向上を図るために、防災関連の学会や国際会議の情報のような、間接的な防災情報の収集も行なっている。ここでは、収集の方法、集めた情報、Webによる情報配信、今後の課題などについて説明を行なう。

6−4−1 収集の方法と集めた情報

 情報は、Webを通して入手したもの、e-mailで案内が来たもの、ニュースレターなどの書面で連絡が来たもの、学会誌や関連雑誌などに掲載されていたものを中心に収集を行ない、データベースに格納した。データベースの形式を表6-4-1-1に示す。一つの会議につき表に記した一セットの内容を収集した。情報は、日本語英語それぞれで収集を行なった。情報発信の際は、会議開始日程を基準として表示を行なうこととしている。平成11年度には、50件のデータの収集を行なった。

表6-4-1-1 学会・国際会議等の情報収集に用いたデータベースの形式

情報内容 情報種別 メモ
ID 数字 検索用番号
会議名(英語) テキスト
場所(英語) テキスト
連絡先(英語) テキスト
英文会議リンク先URL テキスト(URL) 存在する場合
英文場所リンク先URL テキスト(URL) 存在する場合
英文連絡先リンク先URL テキスト(URL) 存在する場合
会議開始日時(英語) テキスト 表示順の基になっている
会議終了日時(英語) テキスト
会議名(日本語) テキスト
場所(日本語) テキスト
連絡先(日本語) テキスト
和文会議リンク先URL テキスト(URL) 存在する場合
和文場所リンク先URL テキスト(URL) 存在する場合
和文連絡先リンク先URL テキスト(URL) 存在する場合
会議開始日時(日本語) テキスト
会議終了日時(日本語) テキスト


6−4−2 Webによる情報配信


情報は、Webを用いて、誰にでも参照可能な形で配信することとした。Webサーバーに参照のリクエストがある度に、データベースの内容を基に、会議の一覧が作成される。日本語の会議の一覧のサンプルを図6-4-2-1に示す。Web上の会議の一覧では、会議開始日の日付の逆順に情報が並べられ、収集された「会議・学会名称」、「日時」、「場所」、「連絡先」が表示されると共に、それぞれの情報のオリジナルWebページが存在する場合(テキストが青で描画され、アンダーラインが引かれている状態)には、その部分をクリックすることにより、オリジナル情報のページへ移行することができる。
このページを作成する場合には、会議開始日と現在の日付を照合し、既に実施済みの会議については表示しないようになっている。画面内の「過去の情報を表示する」というオプションボタンをチェックすることで、全ての情報を表示させることもできる。

図6-4-2-1 学会・国際会議等の情報のWebによる情報配信


6−5 今後の方針

 アジア防災センターとしては、専門家会議での決定(各国の防災知識の普及及び防災意識の向上に関する資料をアジア防災センターに提供していくこと)を受け、今後各国に対して具体的な防災知識の普及及び防災意識の向上に関する資料の提供を要請し、受領した資料をデータベース化して、アジア防災センターのホームページ等を通じて情報提供していきたいと考えている。
 また、これまでに明らかとなった上記のニーズを受け、共通する課題を有するメンバー国間で専門家や地域住民も交えての共同研究、ワークショップ実施などの多国間防災協力推進のために必要な支援を行っていきたい。
 たとえば、識字率の低い住民への普及啓発に関しては、絵文字や口承による伝達・周知などによる普及啓発手法の検討を、また遠隔地住民への防災知識の普及に関しては、地域毎にボランティアを育成し、各地域内での集会を実施したり、地域を巡回したりすることにより地域の対応力強化を図るなどの検討を進めていくことが必要と思われる。
 防災知識の普及・意識の向上資料の企画に関しては、各国のニーズ及び活用しうる各国のリソースの把握に加え、関係国の具体的な必要に対応した企画・調整などが大切であり、アジア防災センターとしては、メンバー国での個別のニーズに応じた普及啓発資料の企画作成などに積極的に参加していく所存である。