国連世界防災白書の紹介
Global Review of Disaster Reduction Initiatives
-Living with Risk-

 

国連国際防災戦略(ISDR)は「国際防災の10年(IDNDR)(1990‐1999)」の後継として2000年に設立された国連プログラムであり、世界的な防災戦略として、事後の応急対応から事前の予防に重点を移し、災害に強いコミュニティーを形成することを目標とし、他の国連機関や各国政府、地域機関、NGO等防災活動を行うあらゆる機関と協力することにより、自然災害による被害を軽減するための活動を行っている。

ISDRでは、日本政府、神戸にあるアジア防災センター(ADRC)、世界気象機関(WMO)の支援により、国連として初めて防災に関する総合的な報告書である「世界防災白書−Living with Risk」を作成し、2002年8月に公表した。本白書の主な特徴は、以下の3点。

@ 各国の防災活動の成功事例を紹介するとともにその要因を分析し、他国の政策決定者が、今後、災害対策を実施するうえで、ガイドラインとして活用できる具体的情報を提供。
A 国連組織として、初めて世界各地の防災への取り組みを総合的に評価する試みを行っており、各国の担当者がこれまでの業績を評価する指針を提供。
B 最近の自然災害による人的、物的被害に関する情報とその傾向の分析など、防災に関する基礎的資料を提供し、一般の人々に対する防災活動への理解を促進。

今回、国連がこのような白書を発行したのは、1994年に横浜で開催された国連世界防災会議で提議された「横浜戦略」及び「より安全な世界のための行動計画」に基づいた各国の防災活動について評価し、この会議から10年経過した2004年以降の新たな国際防災戦略の策定に向けた議論を活発化させていくことが目的。

国連事務総長コフィ・アナンは、この世界防災白書の序文において次の趣旨の言葉を寄せている。「自然災害が開発途上国に与える損害は甚大で(右表参照)、その結果、本来、貧困からの脱却に投入されるべき物資や資金が拡散している。防災活動、特に予防施策は、災害による人的・物的被害を大幅に減少させるうえで重要な要素となっている。災害が多発するこの地球で生きていくために、世界中の人々が十分な備えを怠らないよう、国際社会が最善を尽くすことが必要である。
アナン事務総長の言葉の背景には、従来、自然災害に関する国際支援は災害発生直後の緊急支援に偏り、災害の発生を未然に防止するための予防分野での協力は重視されて来なかった事情がある。脚光を浴びやすい緊急支援に比べ、予防は、将来にわたって災害が起こらないという地味な形でしか結果が表れないことから各国の関心が薄く、支援を得ることが困難であった。しかし、近年、災害が途上国の持続的発展にとって大きな障害になっていること、さらに地球温暖化など先進国を中心とした人間の活動が異常気象等新たな災害の発生に結びつくことが懸念されていることから、21世紀の持続可能な発展のためには、災害予防が不可欠なことが世界的に認識されつつある。

国連では、この防災白書が、世界中の自然災害による被害の軽減活動に関わっている人達や専門家などに新たな指針を提供し、今後の防災活動に役立つことを希望している。

 表 世界の自然災害による経済損失 1950−2001

 


地震を避けることはできないが、それによる死は避けられなくはない。洪水の発生は避けがたい現実だが、私たちの健康や希望、生活をも洗い流される必要はない。「世界防災白書―Living with Risk」は、災害・環境管理や、持続可能な開発に携わる人たちに指針と奮起を与える白書として、国連国際防災戦略事務局がまとめた。ここでは、どのようにして災害のリスクとそれに対する脆弱性を軽減するか、過去の経験から得られた教訓と将来の課題に焦点があてられている。

災害とリスクを軽減する努力は、持続可能な開発の基本である必要がある。というのも、自然災害や技術的、環境破壊災害に対する脆弱性は、社会、経済および環境の悪化に影響を受けるからである。自然災害は誰にとっても脅威であるが、それらと共に生きることもまた、村人から一国の首長、銀行家や法律家から農民、林業関係者、そして気象学者からマスコミ関係者にいたるまで、全ての人にとって避けられない現実である。気象の変化による災害で生じた年間損害額は、この5年で倍増し、気象の変化による影響の深刻化が懸念される。人間が環境に及ぼす影響も、かつてないほど深刻である。「Living with Risk」は、人類にとって一刻の猶予も許されないこれらの重大な課題をとりまとめたものである。

ISDRでは、皆さんが白書に積極的参画し、その経験を分かち合うことを歓迎いたします。その結果、災害リスクを軽減するための知識を増やすことができれば、今後の白書に反映させていく予定です。

 



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