ニュージーランド
カントリーレポート
1999
Neil
R Britton and Gerard J Clark
Ministry for Emergency Management
目 次
ニュージーランドは緊急事態管理の機構やその枠組みを改善している最中である。この改善の目的は、焦点を応急対策から各コミュニテイが被るリスクマネージメントへと向け直すことであり、これによって、弾力性のあるコミュニテイをつくることができる。緊急事態管理省は、一方において、土地利用管理や危険(危険要因)軽減及び持続的発展に含まれている既存のいろいろな方法を結びつけることをめざしており、それは、一方で、ある程度は経済的社会的発展を支え、他方で社会的経済的危険を減らすものである。
それを行う場合、包括的アプローチで、現在ある立法の枠組み、地方政府機構、及び訓練、教育、研究の分野を緊急事態管理の専門家に委ねようとしている。この報告書は、現在進められている経過の概要を示すもので、1980年代からの、ニュージーランド経済のほとんどの領域に及ぶ広範囲な改革の中で進められている。
ニュージーランドの緊急事態管理の改善は、しっかりした緊急事態管理の原則と国際的に最善な慣例に基づいている。しかしながら、それは、ニュージーランドの危険やこの国の社会的、政治的、経済的そして文化的状況にしっかりと合わせてある。このため、これは、1980年代の初めからニュージーランドで行われてきた広範囲の社会経済改革との関連で捉える必要がある。経済のたいていの分野で十分に規制が撤廃され、一方社会政策は、みんなが認めていた国への依存をなくし、必要に基づく福祉体制の方向へ変わった。このような変更及びその他の重要な変更に伴って、たくさんの政府の機能の意義ある移管がなされ、商業化された。一部の批評家は、これは、政府を商売から追い出し、商売を政府に持ち込む試みだと、評した。
地方政府も広範囲にわたって改革された。これらの特定の改革の意図は、地方政府が確実に下記のようになるためである.
●もっと効率的で効果的になる。
●コミュニテイの要求にもっと注意を払い対応するようになる。
●もっと柔軟性持って、自冶を行う。
●もっと責任を持つ。全般の成果に対して政治家が選挙民に対して責任を取る事も含む。
ニュージーランドの改革の重要な所産は、意志決定(decision-making)のための多くの責任と権力を中央政府から地方政府に移管したことである。この移管に伴って、公共分野内での危機管理の枠組みへの注目が増えた。
この事は、中央政府(例えば、政策を可能にする意志決定(decision-making)のための、その決定が管理されていることを保証する枠組みを立案している)及び地方政府のような他の分野(その枠組みを実行するというような)両者についてはっきりしている。
専門委員会報告(Task Force Report)及び政府委員会(Officials Committee)からのコメントに続いて、政府は、以下の4つの基本的決定を行った。
・ 1996年、橋渡し(overarching)的緊急事態管理の枠組みの基盤として、一連の原則を承認した。
・ また、政府の責任は、緊急事態管理の枠組みを確立することであると再定義し、この分野の全機関の原則、役割及び責任を確認した。
・ 1997年、新しい省(後に緊急事態管理省と名称変更、1999年7月に組織化)の設立を承認した。
・ 1998年、緊急事態管理の枠組み原則に基づいて、地方の緊急事態管理協会(緊急事態管理グループと呼ばれる)の構想を承認した。
この決定は、緊急事態管理対策を近代化するためのもので、特に、関係する緊急事態管理部門やコミュニテイが危険を理解し、それによってもっと効果的に危険と対処する能力を改善するためになされた決定である;また、危険管理の慣習や方法を制度化して、コミュニテイが持続性や弾力性を持てるように促進することである。しかしながら、新しい緊急事態管理の枠組みにとって重要なのは、以下の一連の原則である。
・ 包括的そして統一の取れた緊急事態管理体制
・ 全ての危険への対処
・ いろいろな機構は適切な技術的情報や専門知識によって裏付けられていること
・ ボランテイアー組織の承認と参加
・ 宣言(緊急事態の)は、選ばれた代表によって政府の最も適切なレベルで行うこと
・ 個人とコミュニテイの責任及び自立
・ どんな財産でも、持ち主は再建の責任がある
・ 日常的な事件や緊急事態は可能な限り地方レベルで取り扱うのがベストである。
ニュージーランドの取り組みは、土地利用の管理とリスク(危険要因)管理及び持続的発展を結びつけようとする意図的な試みである。このためには、自然環境や創造された環境がどのように危険を生むのか、また、一方においては、社会的経済的発展を支えながら,どのように人々や財産を危険にさらさないか、もう一方では、どのようにして社会的経済的危険を減らすかを理解する必要がある。この緊急事態管理省の仕事はこの試みの前にこれを支援する枠組みを用意することである。この省が実行しているプログラムの一部は下記の通りである。
現在の市民防衛法1983(Civil Defence Act 1983)に替わる新しい緊急事態管理法が現在準備されている。承認された政府の原則に基づいて提案されている緊急事態管理法案は、緊急事態管理に関連する決定が首尾一貫して行われるような枠組みを確実に実現し、異なる環境に対して柔軟性を持ったものになるであろう。
この提案法案の目的は、包括的、統一の取れたそして危険に基づいた緊急事態管理を通じて、コミュニテイの弾力性と継続性を改善し促進することである。
個人とコミュニテイの責任及び自立についての原則に関しては、危険な出来事が起こらないようにするために、また、コミュニテイが攻撃されないようにするために計画的に努力することによって、別な言い方をすれば、危険を全般的に管理し(危険に対処するだけとというより)悪い影響を最小限にとどめる努力をすることで、そのような弾力性を達成することと、この法案は定めている。
これを支援するには、地方と国との間を調整するStakeholder達の連携、立派な意志決定、危機に基づく緊急事態管理のゴール、目的及び目標を取り入れた計画及び開発決定、そして意志決定に対する学門的アプローチが必要である。
緊急事態管理を国中に亘って統合するのために、緊急事態管理行動を導くためのゴールや目的や予測可能な目標の概要を示し、見通しや価値、行動の優先順位を決めるための基準及び緊急事態管理行動を強化するテーマというようなものを提供する国家危機管理戦略(National Emergency Management Strategy)が提案されている。この戦略は、より広範な枠組みとは矛盾してはいけないEMGの計画プログラムに結びついたものになるであろう。機構が適切な技術的情報及び専門知識に支えられるという承認されている別の原則を達成するために、この法案には、情報体制の確立及び維持が用意されている。この法案はまた、関連機関が有能な人材を持つように規定している。
ニュージーランドの緊急事態管理の枠組みを確立して維持する役目にしたがって、中央政府は、また地方レベルでの緊急事態管理を伝達するためのモデルを承認した。そのモデルは、確実に実際に実施できるよう、また、広範ないろいろな状況で実行するのに十分な柔軟性を持つようにするため、地方政府と相談し、協力して開発された。承認されたモデルは国中の緊急事態管理グループ(EMGs)のためのものである。EMGsは、その地方の危険に基づく緊急事態管理を監督する仕事を与えられている公共機関(緊急事態サービスや生命線となる公共事業と一緒に働いている)の集まった協会である。法的枠組みの中で活動し、緊急事態管理省が用意した国の指導要綱を使って、これらの協会が地方の機構、方法、方針を定めるようになっている。これらの協会は、定期的な危険分析、弱点査定(傾向や結果分析を含む)を行い、適切な危険査定のための手段を適用し、危機に基づいた緊急事態管理方法を採用することになる。
このアプローチには3つの利点がある。
・ これらの協会は、EMGを代表するいろいろな地方公共機関から出る特有の問題にしっかりアプローチできる。
・ これらの協会は、いろいろな方策を調整し、緊急事態管理に対する配慮が確実に関連する地方公共機関の活動や責任の中に総合的に取り入れられるようになる。
・ これらの協会には、危険を理解しその管理を選択するために、コミュニテイが確実に広く参加する。
ニュージーランドは、最近になって、オーストラリアとニュージーランドの規格技術協会が共同で作成した、非強制的危機管理規格AS /NXS 4360 –1999を採用した。緊急事態管理省の高級官僚が、1993年以来、この委員会の一員であった。この規格には、望んでもいなかった予期しない結果が重大なことになる恐れのある状況や、事態がはっきりしているような状況に適用できる方策が明記されている。AS/NZ 4360. 1999に略述されている方策には次のようなものがある。
・ 背景をはっきりさせる
・
危険が何かきめる
・
危険を分析する
・
危険を評価する
・
危険を取り扱う
・
監視し、見直す
・
意志疎通を行い、相談する
この方策は、体系的アプローチを確実にやれるようにするためのしっかりしたチェックリストを提供している。多くの場合、この方策はそのままで特に問題なく適用することが出来る。この規格は、緊急事態管理への危険管理アプローチを開発するためにの手段として緊急事態管理省が採用したものである。
しかしながら、自然の危険要因に起因する危険を管理しているコミュニテイの背景には、ひとつの危険管理方策があるだけでなく、危険を管理することを考慮しなければならない多くの方策があることは、はっきりしている。この中には、公共分野用の方策(土地利用に含まれる方策など)と同時に私的分野用の方策(財産管理、私的分野での公共事業の継続管理など)が含まれる。これらの全ての方策は戦略的に整合されることが大ことである。例えば、危険を取り扱う選択の範囲は軽減という面と対応するという面を含んでいる。危険の取り扱い方について最も効果的で効率的な決定を下すために、コミュニテイがある特定の危険に関して使用するかも知れない、軽減や対応活動のタイプやレベルを決めるための方策は、同じ全般的枠組みの中で計画されなければならない。ニュージーランドでは、これらの方策は適切であるが、一方で、もっと良く統合する必要がある。
ごく最近の法律は暗示的であったり、時には明確であったりするが、危険管理アプローチを必要とする枠組みについてははっきりしている。注目に値するのは、以下の点である。
・ 1991年資源管理法(The Resource Management Act. 1991)、これには、危険要因をはっきり区別し、それが含んでいる中身を査定し、それによって引き起こされる危険に振り向ける選択肢を決める規定を含んでいる。
・ 生物安全法(Biosecurity Act 1993)…望ましくない生物、国境管理と有害動物管理についての法律
・ 1974年の地方政府法の1996年修正案。これは、地方公共機関が少なくとも10年間の財政戦略を採用することを規定している(これは、財産に対する危険、環境上の責務等を含むべきである)
・ 危険物質及び新生物法(The hazardous Substances and New Organism Act 1996)。…これは、危険物質の輸入と生産及び新しい生物についてのもので、環境危険管理機関(Environment Risk Management Authority )を設立した法案である。
ニュージーランドの緊急事態管理に対する修正されたアプローチは、国際的傾向に沿ったものである。国は、明日の緊急事態を管理する人達が、今までになかった問題に挑む必要があり、解決策を見つけるための仲介者として行動しなければならないことを認識している。彼らは、複雑な物理的社会的体制を理解し、緻密な原価利益分析を行い、土地利用や資源配分に関連する長期解決策を斡旋する義務を負っている。したがって、危険要素管理や緊急事態準備における教育は、熟練に基づく訓練を補強し、学問的、総括的プログラムを含んだものに拡大させる必要がある。
緊急事態管理省は、新しい専門的開発の主導権を決め、促進し、新しい主導権を監督し、援助し、緊急事態管理のための政府の成果を達成する上での専門的開発プログラムの全般的効果を監視する義務を負っている。ニュージーランドのプログラムに影響のあるテーマは下記のとおりである。
●多角的知識と広範な政策開発技量を必要とする事前の災害緩和をより大きく強調すること
●対人関係と計画的に仕事をする技量を必要とするより高いレベルの機関内部の調整(公共及び私的分野にわたる)
●研究知識、情報技術、データー分析技量を継続的に更新することを必要とする最新の研究や技術を最大限利用すること
●もっと広範に広がり、非常に危うくなっている資源に直面し、契約管理や論理的計画技量を必要とする対応能力を維持すること
ニュージーランドの訓練プログラムでは、関連する緊急事態管理の仕事を効果的に行うため、多くの組織にわたって、広い範囲で個人が教育を受ける必要があることも認めている。したがって、訓練プログラムにおいて、柔軟性と多様性を持つことは重要である。
緊急事態管理分野を改善するには、この分野に対する研究の準備を見直す必要がある。これは、この分野が、ある程度、包括的緊急事態管理と危険管理の枠組みに関連する活動を含む従来の対応機能から事実上広がってしまったという事実があるためである。研究は今これらの一連の活動を支えるのに必要である。さらに、緊急事態管理省の設立と、特に、この省が、緊急管理分野における専門的開発への戦略的方向を発展させて行くことに焦点を合わせていることが、関連研究における多くの歴史的ギャップに本気で取り組むしっかりした基盤を提供している。研究科学技術省の支援のもと、研究科学技術基金よって管理されている将来展望(科学と研究に優先的に投資するという政府の戦略)の広範な背景の中で見た場合、次のような問題が考えられる。
●
危険を基とする緊急事態管理に関連する全ての面で、研究の包括的適用を広めること
●
危険要因や危険及びそれがもたらす結果に対する国家的見通しを確立し、政策を作成する人達が国が直面する危険を測り、その危険の管理に進歩があるかどうかを、見極めることができるようにする
●
例えば、社会的行動科学や公共の政策に含まれる研究分野と物理的方法や工学に含まれる研究分野との間の連携というような異なる関連研究分野間の連携を育成すること
●
研究をエンドユーザーに焦点を合わせて行うこと
・興味本位の奨励ではないエンドユーザーに奨励される研究
・専門自営業者や、科学仲間以外への研究結果の発表
一度実行されると、政府が、総合的な危機管理方策の問題を取り上げ決定するまでに長い道程がある。多分、最も重要なことだが、コミュニテイが喜んで共存できるようなレベルの危険を与えられると、その方策によって、いろいろな取り扱い選択肢(軽減、準備、対応と回復という範疇での)がお互いに評価し合って、確実に最善の手段が適用されるようになっている。このアプローチの重要な利点は、既存の手段や方法を使って、自然の危険要素による危険の管理に統合的にアプローチが出来るようにしてあることである。それは、全ての関連する方策の中で、危険に基つく緊急事態管理が確かに有効であることを確認し、別の緊急事態管理方法(それは、自然災害危険要因発生による危険に影響をあたえる重要な決定を動かせないので、これは成功しないと分っている)が作られるのを回避している。