スリランカ 

カントリーレポート

1999

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Presented by

W. B. J. Fernando

Director,

National Disaster Management Centre

Ministry of Social Services

Government of Sri Lanka


 

目  次

 

T.序論

U.スリランカの主な自然災害

1.洪水

2.地滑り

3.干ばつ

4.サイクロン

5.海岸侵食

6.地震

V.スリランカの災害緩和方策

1.侵食防止戦略

W.国の防災政策とプログラム

1.防衛組織とその活動

2.ボランティアと災害準備と救援のための非政府組織

X.能力評価とニーズの把握:防災、危機管理、救援、復旧への障害

1.資金不足

2.被災者への特別支援策の欠如

3.救援物資分配の遅れ

4.不充分な捜索、救助活動

Y.結論

Z.付録

付録11995年の災害での被災世帯の割合

付録2:1981年〜1997年の自然災害の発生と救援・復興活動資金

付録2:1981年〜1997年の自然災害の発生と救援・復興活動資金

付録3:洪水にあいやすい地域(南西モンスーン期の降雨による)

付録4:洪水にあいやすい地域(北東モンスーン期の降雨による)

付録5:コロンボの主な洪水

付録6:地滑りと洪水の発生しやすい地域

付録7:スリランカ沿岸の侵食傾向

付録8:沿岸侵食管理のマスタープラン

付録9:国立災害管理センター

目的・ねらい(Mission Statement

国立災害管理センターの機能

責務

付録10:提案されている国家災害管理の制度的枠組

付録11:国立災害管理センターの組織構成

付録12:スリランカ:災害軽減、管理プログラムとプロジェクト

付録12:スリランカ:災害軽減、管理プログラムとプロジェクト

付録13:災害への準備の評価

 

 


T.序論

スリランカは、国土面積65,610平方キロメートルで、北緯5度5分〜9度51分と東経79度41分〜81度54分の間に位置し、本島は最大幅224km、最大長さ432kmである。島のほとんどの地域において平均気温は26〜28度である。湿度は、南西部において夜間90-95%、日中70%程度となっているが、北西や南西地域の乾燥した地域では、60%程度と下がる。スリランカの降雨は南西、北東モンスーン期に発生する。南西モンスーン期(5月中旬〜9月)において、降雨は主に島南西部に限られるが、北東モンスーン期(10月〜2月)には、島の北部と東部において降雨が発生する。

スリランカの経済は、主に農業によるもので、茶、ゴム、ココナッツ、染料、宝石やその他の少量だが輸出穀物に頼っている。水田が主な農地であり、米が主食である。海外への出稼ぎと観光が、本国経済において重要な位置を占めている。

スリランカの人口は1996年で1,830万人、その79%が地方に住んでいる。仏教はスリランカの主な宗教である。人口の69%が仏教で、残りはキリスト教、ヒンズー教、イスラム教である。本国は社会民主主義共和国であり、大統領制をとっている。行政上の地域は、9つの州、25地域、264地区に分けられている。

 


U.スリランカの主な自然災害

本国の主な自然災害は、洪水、地滑り、サイクロン、干ばつ、嵐や沿岸浸食である(付録1)。これらの自然災害によって、人命や財産に数多くの被害を受けている(付録2)。さらに、最近の民族紛争や政治闘争に加えて、森林伐採、無秩序なさんごや宝石の採掘、産業危険物といった人的要因による災害が数多く発生している。

 

1.洪水

本国において洪水が自然災害の中で最も起こりやすい。(付録3、4、5)水源地図から、103の河川流域が分かり、そのうち10河川が主なものである。これらの主要な河川の中で、Kalani、Gin、NilwalaやMahaweliが洪水の危険性が高い。人口増加とその結果による土地需要により、より多くの人々がこれらの地域に暮らし、働くようになっているが、このことが大洪水の発生時の人命と財産の危険を大きくしている。降雨量や河川流域への浸水水量が大きく、森林伐採、不適切な土地利用や化学的な土壌保全策の欠如が本国の洪水の要因と分かっている。さらに、温室効果による世界的な温暖化現象で、熱帯の諸国において、年の降雨量の減少と降雨の集中化が予想されている。本国の平均降雨量は500〜800mmの幅で、最高で1897年にKanukkenで805mm、また1911年にNedunkerniであ508mmであった。南西、北東モンスーン期の降雨により、洪水が発生する。Kegalle、Ratnapura、Kalutara、Colombo、GampahaとGall地区が、南西モンスーンにより洪水にあいやすく、Ampara、Trincomalee、Badulla、Polonnaruwa、Batticaloa、MataleとMonaragalaが北東モンスーンによる降雨で被害をうける。

 

2.地滑り

豪雨と地質の変化に加え、山地における無秩序な急斜面の開墾が、最近20年間の中央と南西地域における山地斜面での頻繁な地滑りの原因となってきた。地滑りは、他の自然災害と同様、斜面に暮らす人々と財産を脅かすものとして懸念されている。1986年1月と1989年5・6月の地滑りで、多大な人命と財産を失った。1986年1月の地滑りによる被害がそれまでで最も大きく、死者51名、避難世帯は100世帯と、地滑りの起こりやすい7つの地区に影響を与えた。それからほんの3年後の1989年5・6月の地滑りはさらに大きく、死者300名と大量の避難世帯を国のほとんどの地域に発生させた。最も最近では、1993年10月にRatnapura地区のHelaundaでおきた地滑りにより、29名が死亡し、多くの家屋が倒壊した。1989年の地滑りだけで、その地域における経済的損失額は1億4200万ルピーであった。

 

3.干ばつ

1996年には、人々に困難を強い、国経済に重大な影響を与えることとなり、電力供給までもが停止した深刻な干ばつを経験した。毎年、国のどこかで、報告はされることは少ないが地域的に重大な短期的な干ばつが発生している。地域的に大きな干ばつは3−4年に1度発生している。国全体に重大な影響を与えるような干ばつは10年に1度発生する程度である。1935-1937年の深刻な干ばつの後、国全体に影響を与える干ばつは1947-1949年、1953-1956年、1965年、1974-1977年、1981-1983年、1985年、1995-1996年に発生した。このなかでも1953-1956年、1974-1977年、1981-1983年、1995-1996年の干ばつは、国経済に悪影響を及ぼした。干ばつは突然発生する災害ではないが、主に農業者に苦難を与え、財政的な損失となる。1996年の干ばつで、17地区の181,095世帯が大きな被害を受けた。

 

4.サイクロン

スリランカはベンガル湾で発生するサイクロンの被害を受ける。東部、北部、北部中央地域がサイクロンの被害を受けやすい地域である。本国においてサイクロンはあまり頻繁に発生しないが、大きな災害といえる。東部、北部、北部中央地域がサイクロンの被害を受けた記録が残っている。過去70年間、サイクロンによって大きな経済的損害を被っている。1978年のサイクロンだけで、百万人以上人々が被害を受け、およそ1,000人の死者を出し、半壊、全壊家屋は25万戸、Batticaloa地区のココナッツ農園の90%を破壊した。これにより、政府は救援活動に6億ルピー以上を費やした。また、1921年、1931年や1964年には、集中してサイクロンが上陸した。(付録4)

 

5.海岸侵食 

本国は1585kmの海岸延長を有している。沿岸部の村や町、市には1830万人の人口である。急速な都市化の進行や商業港湾(Colombo、Galle、Trincomalee)の開発、漁港や停泊地、道路や鉄道といった主要な交流網、レクリエーション施設や観光により、沿岸地域は、経済的に重要な位置を占めている。

50-55%の海岸線が、侵食しやすい、若しくは侵食の危険にあると推定される。北西部のKalpitiyaと南部のMatara間の地域が最も影響を受けている。付録7はいくつかの海岸侵食の経過である。最も深刻な部分はMaha OyaからLansigamaの部分で、3.5―4.5m/m/年で侵食が進んでいると記録されている。

本国において、海岸侵食による沿岸後退は深刻な問題で、財産や基盤施設、開発における被害が発生している。

 

6.地震 

本国において地震は最近発生していない。17世紀にColombo近くの沿岸地域で海水の浸水による数百名の死者の地震が記録されている。200年以上も前に発生したため、どの程度の高潮の高さであったのかのは不明である。それは、おそらく沖合で発生した地震の津波や波が本島の西岸部に浸水したものと考えられる。少なくとも過去数10年間で、本国は沖合で発生した6個以上の地震によって影響を受けている。最近では1953年のColomboの西100kmの地点での地震(リヒタースケールは5.6)である。本国は、津波が頻繁に発生する太平洋のように地震活動が活発な地域にはないが、1993年に、地震からは安全とされたインドにおいて地震が発生し、1万人以上の死者を出している。地震はいつ何時、知らせもなく発生するものである。

 


V.スリランカの災害緩和方策

スリランカには古代文化が多く存在する。乾燥地帯に発見されている古代Sinhales王による水利文明から、干ばつ対策への人類の多大な努力が証明される。その古代文明の特徴は、農業用水の貯水池の複雑なシステムの建設である。現在の乾燥地帯の人々は、古代王によってつくられた、時機を得た適切な災害計画の結果生き延びているのは明らかである。過去、人々は河川堤防の上に住み、完全に自然と調和して暮らしていた。人々は洪水の被害を軽減するために、自分たちの方法を発展させてきた。洪水による被害緩和には2つの方法がある。1つは、人々から水を取り除き、もう1つは人々を水から引き離すことである。この1つめの方法は構造的な方法があり、Kilani、Gin、Nilwala川流域において、浸水とそれによる被害を抑制する方法として採用されている。もう1つの方法は、非構造的な方法で、時機を得た洪水警報によって洪水の発生する地域から人々を避難させることである。これは、Kelani Ganga川の下流や、Colombo郊外で行われている。

Kelani Gangaの洪水は、首都Colomboの近くまで達するため、深刻な被害を生じさせる。Kelani Gangaの洪水レベルが5-7フィートになると、洪水は大規模なものとされ、9フィートを超えると危険となる。1832年の最大の嵐が発生したときは、Nagalagamで最大13.5フィートを記録した。その後、洪水は、1913年10月、1927年5月、1928年5月、1930年10月、1933年5月、1936年5月、1939年5月、1947年8月、1966年10月、1967年10月と1989年7月に発生した。

Colombo近郊のKelani Ganga川の堤防が、洪水の保護堤防として整備された。25年間に一度の大洪水に対し、Colomboが安全であるように整備されている。しかしながら、侵食と不充分な維持管理のため、現在この洪水防止策の見直しが必要となっている。

Gin Ganga洪水防止策は、中華人民共和国の援助をうけて1975年に始められた。10年間に1度の大洪水に対する防止策で、頻繁に発生する洪水から5000haの水田が保全されてきた。10個の電力ポンプが地方の排水路に取り付けられた。

Nilwala Ganga洪水防止策は1993年に完了し、3つのディーゼルポンプを設置し、5600haの水田の保全を図った。このプロジェクトの施策は3段階だが、第3段階を残して、そのうち2段階までを完了した。この方策はもともと洪水からの保護を目的としていたが、低地部に排水施設を設置したため、毎日ポンプを動かしている。第3段階が未完了であることなどから、この計画は成功しなかったといえる。第3段階の方策が完了しなかったため、Matara町の洪水の危険性を高めることとなった。さらに、約2,000haの開発された土地が、保護領域に入らず、河川堤防から離れたところに新たに堤防をつくらなくてはならない。

非構造的な洪水緩和方策の中で、洪水予報システムはKelani Gangaの場合だけ取り入れられている。4つの上流の計器によって、水位が予報され、ラジオ機器によってデータが送られている。洪水期に、各種の機関の調整を図る組織が設置され、必要な規則も定められている。この方策は、1968年に策定、1993年に灌漑庁によって改訂され、Colombo市の詳細な災害緩和計画への総合的な研究となっている。RatnapuraはKalu Ganga川の上流の町で、頻繁に洪水が発生するところである。しかしながら、洪水の波は短い間に移動するため、人々に警報を発することができない。現在、Kalu Gangaの洪水緩和方策の計画はない。

洪水を抑制するための、近年の構造的な方策のなかで、Gin GangaとNilwala Ganga洪水防止策が主なものである。これら2つのプロジェクトが10年間に1度の大洪水に対する安全方策として策定された。

Kelani Ganga川の洪水防止研究が1990年のDANIDA基金のもと行われ、Kalani Gangaをモデル化するコンピューター機器とソフトを提供した。灌漑庁によって施策が、Kelani Ganga川のリアルタイムの洪水予報システムを設置するための世界気象機構による資金提供をうけるために、策定されている。このプロジェクトは先導的なものとなるだろう。

干ばつを全く防止することは不可能だろう。それにもかかわらず、干ばつに適応し、起こりうる損害を軽減することは可能だろう。これに関して、まずなによりも、政府と人々が、自然災害とその被害を生じさせる自然環境の破壊を止める努力が必要だ。人々はまた、干ばつの発生に備えていなければならない。これらの災害に備えた活動に加え、次のような災害後の活動の効果的な仕組みが必要である。

(a)財産への被害の評価

(b)経済活動への被害の評価

(c) 干ばつの被災者への迅速な救援活動と復興活動

 

1.侵食防止戦略 

海岸保全庁は、法律上海岸侵食の防止策に責任を負う。海岸侵食防止戦略は2重になっている。既存の基盤施設が危険な状態にあるところは、護岸や防波堤といった海岸保全方策が整備されている。緊急度にもよるが、計画された護岸や保全施設が整備さて、ダンプカーで運ばれる各種の素材による緊急護岸では、gabion箱(ネットに小石をつめた箱)が利用される。この整備は灌漑省によって行われている。

このような保全策は短―中期的な解決策であり、毎年維持管理が必要である。しかし、護岸のような保全策のために、釣りやボートやレクリエーション(観光)のような海岸での活動が制限される。

長期的な方策は、海岸侵食管理計画(CEMP)と海岸地帯管理計画に基づいている。両計画は現在進められている。CEMPは、侵食が進んでいる地域を重点地域(付録8)とし、施策で人々への影響が最小になるであろう。高潮は頻繁に発生しないが、時に大きな被害を及ぼし、特に東部において基盤施設や住宅に損害を与える。この地域の戦略は、後退した地域を記録し、海岸の植生を向上させることである。

海岸地帯管理計画(CEMP)は、位置や開発の種類による開発禁止地帯を法的に強制し、開発を規制する。海岸保全法と施行令による開発禁止地帯を強制して、海岸への開発圧力を軽減している。さらに、省は意識啓発プログラム(PAP)を行い、沿岸の住民が、基本的な海岸資源管理と海岸侵食による被害を最小にする適切な行動について学べるようにしている。

 


W.国の防災政策とプログラム

行動計画と防災法が準備されたことにより、スリランカの災害管理は1993年に新しい局面を迎えた。内容は次のとおりである。

(a)災害の防止と緩和策

(b)人命と財産の保護

(c) 被災地域の復旧

(d)災害対応、救援、復旧、復興のための施設の提供

計画では次のようなグループのもと活動を行う。

(a)準備活動

(b)救援活動

(c) 修理、復旧、復興

(d)意識啓発と教育

計画のなかで行われる施策の政策的枠組みは次のとおりである。

(a)農業、土地利用、建設や維持管理の地域で、専門的な活動を向上すること。

(b)非政府組織、私的研究機関、個人の参加を促進し、被災地への寄付を懇願すること。

(c) 科学・技術的な研究(地滑り危険地マップなど)を持続可能な開発のために活用すること。

(d)災害後の救援、復旧、復興能力を維持し、さらに向上させていくとともに、災害前計画と準備へと重点を移すこと。

(e) 地域計画過程だけでなく、国の開発計画過程にも防災と準備対策を統合すること。

 

町、地域、地区、州レベルでの災害管理活動を調整するために、同計画は各レベルの委員会設置を提案している。これらの委員会は、公的、私的機関からの人員によって構成される。また、国立災害管理センターの機能(付録9)を定めている。このセンターは国家災害管理機関(付録10)の事務局として機能する。同センターは、スリランカ防災法(付録11)のもと設置された。災害管理調整委員会は防災に関する最上級の組織である。本委員会は災害防止、被害緩和、復興に関する事項を扱う(付録12)

社会サービス省の社会サービス庁は災害管理において重要な役割を果たす。災害管理は、現在社会サービス省の管轄となっている。被災者に対する災害救援活動は社会サービス庁によって実行され、管理されている。また、復旧、復興に関しても、同省の管轄である。

本国はまた、災害準備と直接の復旧活動に、州行政庁、地域事務局、地区事務局といった各種のレベル機関を有している。4.4段落で述べたように、地区、地域レベルの災害管理調整委員会は地区、地域レベルにおいて、災害管理活動を調整する。社会サービス省は、すべての災害防止、救援、復興活動を、地区事務局を通して実行する。社会サービス省と地区事務局は、社会サービス事務局という、中間事務局であり、地区レベルでの災害防止と救援活動を行う。これらの事務局にはGrama Niladaryという、村レベルの行政局が、管轄において災害に関連する活動を実行する。災害管理委員会が底辺レベルでは、村レベルの災害関連の全ての活動を調整するために設置された。

 

1.防衛組織とその活動

スリランカにおいては、防衛組織が洪水、地滑り、サイクロンといった災害から生命と財産を保全するために、災害発生時に重要な役割を担う。底辺レベルでは、防衛組織を支援するGram  Niladaryがある。次に、上記のように地域事務官が率いる、災害時の緊急救援に関する全ての活動を調整する地域事務局という、地域レベルの機関がある。地区レベルでは、地区事務官が防衛組織のもと、災害に関連する事項を調整する。州レベルでは、大臣が議長を調整を行う防衛委員会がある。これらの組織は防災対策法案に基づいている。防衛委員会は、首相のもとにもあり、国レベルでの災害に関するすべての活動を調整している。各レベルの防衛組織の概要は次のとおりである。

(a)災害が発生したら、できるだけ迅速に、人員を派遣し、被災者を確認、支援する。 

(b)重傷者を確認し、住民の健康治療センターへの緊急避難を支援する。

(c) 警察署の機能を直ちに確保する。社会サービス庁は最近情報センターを設立し、自然、人的災害に関する情報を収集、提供する。

本国はすでに基礎的な災害緩和策を行ってきた。災害の被害を軽減するため、地滑りが発生する地域において、構造的方策や、法制度や誘導策のような非構造的な方策をとってきた(付録13)。しかしながら、人々は、地滑りが発生しやすい地域に暮らしているが、住みなれた土地から移住したがらない。社会サービス省はKalutara地区の低地部において、洪水に強い住宅を建設するよう資金的な援助を行った。しかし、人々はこの種の施策に自分の資金を費やしたがらず、このプログラムは不成功となった。このため、洪水、地滑りや深刻な干ばつにあいやすい地域に暮らす人々の意識を喚起し、被災しないためのプログラムを受入れ、災害へ対処できるようにする必要がある。

 

2.ボランティアと災害準備と救援のための非政府組織 

本国は、災害への準備と救援プログラムにおいて、明らかに非政府組織に頼っている。非政府組織は官僚的な手段をとらずに行動するため、緊急事態の知らせに対し、迅速に対応できる。また、短期間に必要な外部組織から専門家を集めることもできる。さらに、その予算は自由に変更できるものである。その一方、権威はなく、時に正式な連絡先が不明という不利な点がある。災害準備のためのボランティアや非政府組織の主な利点は次のとおりである。

(a)非政府組織は政策決定や国家計画の策定段階で、その専門知識を持って参加できる。

(b)災害管理において、食糧、医療、衣料といった必要な物資を提供する際に活用できる。

(c) 地方公務員を訓練する専門家を派遣できる。

(d)災害準備と救援に関する、市民に対する情報資源を作成する際に役立つ。

(e) 災害前においても、緊急物資や応急手当器具の供給といった事項を行う。

(f)  避難所の運営を支援できる。

 


X.能力評価とニーズの把握:防災、危機管理、救援、復旧への障害

 

不充分な災害管理情報システム:現在の情報は、最下位の公務員であるGrama Niladary、次に地区事務官、そして社会サービス庁、またその逆の方向へと流れる。災害が発生した際、Grama Niladaryは財産や人命被害の情報を収集し、地区事務官へと報告する。地区事務官は社会サービス庁に報告する。

地区事務官は、社会サービス庁の情報にしたがって、すべての救援、復旧、復興活動に必要な基金についての報告書を作成し、社会サービス庁へ提出する。現在の災害に関する情報システムは、旧式の情報収集方法で、近代的な通信施設、機器の不足、底辺レベルや地域レベルの公務員の訓練不足のため、かなり弱く、非効率的である(付録12)。

救援、復旧活動要員の訓練不足の解消が主要な問題であった。緊急事態の救援活動に必要な技術的訓練、各レベルにおける危機管理に携わる管理者や計画者の訓練と教育、そして一般市民の意識啓発については、災害管理要員の準備に関する各政策決定レベルで、未だ十分に考慮がなされていない。スリランカにおいては、危機管理者を訓練したり、一般市民やボランティアの意識啓発を行う施設はない。このため、救援、復旧活動が効率的に行われないのである。

 

1.資金不足 

社会サービス庁の1年間の資金は限られているため、被災者に対して、十分な資金での救援、復興プログラムを行うことは不可能である。例えば、1996年被災者の救援、復旧とその他必要な事項に、社会サービス庁に対し、1億1100万ルピーが割り当てられた。しかしながら、この額は被災者のニーズを満たすのには十分でなかった。スリランカ政府が直面した資金面での問題からも、もし、寄付がなければ、緊急事態に対処するために十分な救援活動を行うことは不可能である。被災者は財産と人命の被害に対する必要な賠償金をもらうことができない。

 

2.被災者への特別支援策の欠如

本国においては、社会サービス庁による支援を除いては、全災害の被災者に共通の特に大きな災害の被災者の必要とする額に見合った支援措置はない。すべての人と財産を災害の危険のある場所から安全な場所に移すことは、いつでも可能なわけではない。融資制度や経済活動の再開に対する特別の支援があれば、回復の速度は早くなるだろう。災害の発生しやすい地域の人々と財産をカバーする保険という形の安全措置を創設する価値はあるだろう。このことは被災者と政府にとって有益なものとなろう。

 

3.救援物資分配の遅れ 

これまでのパラグラフで述べたような被災者への公的な支援は、社会サービス庁や地域事務局、Grama Niladalyといった政府組織を通して行われる。地域事務官は、社会サービス庁からの資金を受け、村レベルの生協を通じて、調理済食糧、穀物やその他の必要物資を提供する。NGOやボランティア組織はまた、一般的に社会サービス庁が調整する救援活動を行う。救援物資の分配は、災害の発生による交通問題や道路の被害のために、遅れることもある。

 

4.不充分な捜索、救助活動 

捜索、救助活動は、人命や財産に影響を与える災害時の緊急対応の重要な項目である。地滑りを考えた場合、各現場のレベルにおいて、捜索、救助チームを支援する法制度はない。地滑り、洪水、サイクロンの場合、普通、警察と軍隊が捜索と救助活動を行うが、捜索、救助活動において人命と財産への二次的な損害がないようにするための、体系的な訓練を受けているわけではない。災害にあいやすい各地域において、軍、警察、ボランティアグループや人々は、必要な技術を与えられるべきである。また、必要な器具が利用できるようにして、捜索と救援活動が直ちに遂行されるように、地方レベルにおいて人員と機器が動員できるようにしなくてはならない。

 


Y.結論

スリランカにおいては、他国のような深刻な災害が頻繁に発生するとは思えない。それにもかかわらず、自然災害による被害、困難や移転は、内戦や政治闘争のような人的災害と同時に、スリランカのような小国にとってはまさに破滅的なものである。

このため、スリランカ政府は、結果的に安全性を高め、被害を最小にする、いかなる自然災害にも対応できる準備方策を推進している。ここで述べたような、最近3年間の政策と方策は、今後の長期的な議題を示している。

法制度と法制度化が災害対応のすべてではない。必要なのは、災害の兆候を見据えて行動を起こすとともに、災害を直視し、被災者、被災財産に対し、迅速な救援を行う計画である。これは、政府が率先して行動を起こすという国の責務である。

 


Z.付録

 

付録1:1995年の災害での被災世帯の割合

総計91,386世帯

 

 



付録2:1981年〜1997年の自然災害の発生と救援・復興活動資金

災害の種類

死者数

被災世帯数

救援のための支出

1981

洪水と地滑り

干ばつ

象による被害

不慮の事故

2

15,318

204,211

26

3,514

2,291930

42,654,647

3,065

570,193

2

223,096

45,519,835

1982

洪水と地滑り

干ばつ

不慮の事故

42

129,513

372,436

4,229

14,621,023

118,920,957

787,828

42

506,178

134,329,808

1983

洪水と地滑り

干ばつ

象による被害

不慮の事故

 

204

435,926

175

4,967

58,077

87,929,636

35,821

877,946

 

441,272

88,901,480

1984

洪水と地滑り

干ばつ

象による被害

不慮の事故

44

248,356

3,008

429

8,783

4,658,558

209,842

84,135

1,296,527

44

260,576

6,249,062

1985

洪水と地滑り

干ばつ

象による被害

19

18,869

20,488

6,317

2,780,699

4,889,513

1,226,640

19

45,674

8,896,852

1986

洪水と地滑り

干ばつ

象による被害

不慮の事故

40

118,494

5,303

91

3,969

13,676,252

2,400

27,000

780,080

40

127,857

14,485,732

1987

洪水と地滑り

干ばつ

象による被害

不慮の事故

Kantaleタンクの崩壊

68

5,053

484,925

140

4,617

2,035

568,820

72,969,136

89,950

585,500

4,200,000

68

469,770

78,413,406

1988

洪水と地滑り

干ばつ

不慮の事故

3

26,373

652,363

3,683

2,867,089

28,553,911

648,632

3

682,419

32,069,632

1989

洪水と地滑り

干ばつ

325

86,176

238,426

49,077,863

24,335,145

325

324,602

73,413,008

1990

洪水と地滑り

干ばつ

不慮の事故

37

157,427

203,794

38,694,275

6,721,942

311,000

37

361,221

45,727,217

1991

洪水と地滑り

干ばつ

不慮の事故

34

55,491

78,876,485

230,202,076

625,000

34

259,285

309,703,561

1992

洪水と地滑り

不慮の事故

25

71,080

154,572,300

27,403,000

25

71,080

181,975,300

1993

洪水

地滑り

海岸侵食

サイクロン

干ばつ

飲料水

象による被害

6

29

 

1

210,874

870

160

450

16,383

 

420

30,001,904

4,419,500

497,000

700,000

7,633,200

475,000

3,005,000

36

229,157

46,731,604

1994

洪水

地滑り

海岸侵食

サイクロン

干ばつ

飲料水

象による被害

 

8

 

10

353,409

284

384

456

37,401,904

628,520

880,183

627,600

618,700

205,500

199,800

18

354,533

40,562,207

1995

洪水

地滑り

海岸侵食

サイクロン

飲料水

 

353,409

484

517

1,403

260

37,401,904

2,970,686

366,800

958,807

481,300

 

356,073

42,179,497

1996

洪水

地滑り

干ばつ

飲料水

サイクロン

事故/海岸侵食

3

 

10

 

 

84

8,238

75

8,360

199,535

22,807

84

12,224,897

52,400

14,870,185

424,856,387

568,000

1,165,130

97

239,099

453,736,999

1997

洪水

地滑り

干ばつ

飲料水

サイクロン

事故

海岸侵食

4

15

 

 

69

29,948

626

434,775

 

650

69

154

16,746,908

1,576,942

269,863,722

1,778,200

2,537,735

 

363,980

88

466,222

320,847,552

1998

洪水

地滑り

サイクロン

飲料水

事故

海岸侵食

不慮の事故

2

 

3

 

 

5

34,746

50

3,018

 

 

31

188

31,236,159

410,953

3,990,025

70,600,562

646,110

340,000

428,080

411,365

10

38,033

108,063,254

1999

洪水

地滑り

サイクロン

干ばつ

飲料水

海岸侵食

不慮の事故

象による被害

6

3

 

 

 

 

2

94,352

404

168

 

 

303

49

43,862,752

3,405

551,130

100,981,957

1,000,000

254,000

370,550

47,655,122

11

95,276

194,678,916

 


付録3:洪水にあいやすい地域(南西モンスーン期の降雨による)

 

 


付録4:洪水にあいやすい地域(北東モンスーン期の降雨による)

 

 


付録5:コロンボの主な洪水

 

コロンボの主な洪水

水位(単位:フィート)

1837

1872

1891

1904

1906

1913

1922

1925

1928

1930

1933

1936

1937

1939

1940

1942

1943

1944

1947

1947

1952

1952

1955

1957

1963

1966

1966

1967

1971

1975

1989

13.50

11.9

9.80

990

10.80

11.00

12.60

11.50

9.08

10.91

9.95

9.43

10.33

9.35

11.00

8.17

6.58

6.00

12.85

6.00

8.25

6.00

8.00

6.25

6.42

8.67

9.00

9.17

7.33

6.58

9.20

-

-

-

-

-

-

-

7

5

10

5

5

5

5

5

7

5

5

8

10

5

10

10

12

10

9

10

10

9

5

6

洪水の定義:2フィート以上が小規模な洪水

      7フィート以上が大規模な洪水

      9フィート以上が危険性の高い洪水

 


付録6:地滑りと洪水の発生しやすい地域

               

 

 


付録7:スリランカ沿岸の侵食傾向

 

位置・範囲

延長(km)

侵食の程度(m//年)

侵食の危険のある延長の割合

Maha OyaからLansigama

WellamankaraからMaha Oya

Maha OyaからPoratota

7.0

4.8

3.2

3.5-4.5

3.0

3.0

80

80

80

Colombo

UsewetekeiyawaからPalliyawatte

PalliyawatteからCrow

Crow島からMuttuwal FH

11.5

6.5

2.0

3.0

1.0-2.5

2.5

1.1

0.5

70

75

70

20

Kalutara

Kalutara北からKalu RI

Kalu GangaからMaggona

11.0

6.0

5.0

0.5-2.0

1.5

1.0

42

60

75

BeruwalaBentota

BeruwalaからBentota R

Bentota RからRobolgoda

11.0

8.0

3.2

1.5-2.0

1.5

1.0

42

60

75

Hikkaduwa

SeenigamaからCoral Garden

Coral Garden HI Dodandu

10.0

6.0

4.0

1.0-2.0

1.0

1.0

60

45

60

 


付録8:沿岸侵食管理のマスタープラン           重点地域

 

 



付録9:国立災害管理センター

目的・ねらい(Mission Statement

我々の使命は、意識啓発、防止策、準備策、災害緩和策と調整を通して、自然災害から人命と財産と環境を保護することである。

国立災害管理センターの機能

(A)国家災害管理計画の策定

(B)各省庁、企業、組織の災害管理計画の進捗状況の監視

(C)国家危機活動計画の策定

(D)  国、州、地域、地区、Grama Niladhariレベルのデータバンクと災害管理情報システムの創設

(E)自然災害管理に関する事項において、国家災害管理機関を支援する事務局としての機能

責務

1 事務局としての役割

 国家災害管理機関によって策定された法律や政策を実行するために、同機関が関連事項に関して国家を主導していく際に、事務的な支援と援助を行う。

 現行の災害管理法や規制の強制に際し、国家災害管理機関を支援すること。

 

2 国際的な人道的援助

国際的な人道援助を確認するシステム、とくに国家的プロジェクトの必要性と寄付を行う機関と直接連絡をとるシステムの確立

 

3 スリランカにおいて行われている災害管理プロジェクトを管理、調整、監督するとともに、ADPCや国連開発計画といった外部組織を効率的に導入すること。

 

4 対応と支援機関の関係

災害対応への準備方策に関連して、すべての対応機関と支援機関、地方政府と、継続的に通信し、情報交換を維持すること。

 

5 関連委員会との関係

災害防止、準備、調整と復旧に関連する各委員会を、先導し、支援すること。

 

6 災害管理専門家の育成の促進

災害管理の原理、役割や責務、また政府や非政府組織の準備計画を確実にするために、災害管理専門家の育成を促進すること。

 

7 一般教育と意識啓発

住民の災害に対処する自信を高めるために、災害管理、災害準備、防止、緩和措置と危険軽減に関する分野で、意識啓発を進め、国家災害管理機関を支援すること。

メディアを含む各種の情報発信源を通して、災害管理、災害準備、防止、緩和措置と危険軽減に関する政策やプログラムが、十分に周知されるよう、国家災害管理機関を支援すること。

 

8 政策、計画と調整

国家災害管理機関による政策やプログラムに基づき、国家災害管理計画を策定、調整、改訂すること。

各省庁、企業、組織によって策定される各種の災害管理計画を、迅速に行われるよう、必要があれば、それらが適当なものであるかについて助言、監督すること。

国家災害管理機関による政策やプログラムに基づき、国家危機行動計画を策定、調整、改訂すること。

災害管理資金の決定と割り当てにおいて、国家災害管理機関を支援すること。

国家災害管理機関の、各機関の災害管理に利用する資源の効率的、効果的な活用の監督を支援すること。

防災、災害緩和、救援、復旧、復興活動に関するプログラムを行う国家災害管理機関を支援すること。

 

9 情報と研究

国、州、地域、地区とGrama Niladaryレベルでの災害管理に関連する専門家、連絡先、情報、資源の国家データバンクを設立すること。

人員配属、第3機関の活用または国際資金の活用により、災害、脆弱性、社会影響や危険軽減の分野での研究や開発機会を促進、調整すること。

国、州、地域、地区とGrama Niladaryレベルでの、地域住民に被害を与える災害に関する、時機を得た、正確な情報を受け、発信するとともに、合意と調整された災害管理情報システムと過程を設立すること。

国家災害管理機関が、すべての災害後の報告書の見直しを行い、適宜、改善への助言を行うことを支援すること。

 


付録10:提案されている国家災害管理の制度的枠組

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 



付録11:国立災害管理センターの組織構成


付録12:スリランカ:災害軽減、管理プログラムとプロジェクト

(国、地域、コミュニティレベルプログラム・プロジェクトの例)

 

項目名

概要

対象

範囲

実行機関

計画の期間

(年)

資金源

費用

地域

人数

a)都市開発分野のプロジェクト

17町において、社会経済開発と環境向上

都市

2百万

45,000平方キロメートル

都市開発公社

5

ADB

3600万米ドル

b)国立災害管理センターの開発

災害管理の枠組を強化する。

都市

地方

合計人口

すべて

社会サービス庁

2

UNDP

250万米ドル

c)地滑り危険マップ

地滑り危険の軽減

 

7つの行政区

国土の20

国家建築物研究機関

5

UNDP

UNCHS

 

d)土地利用計画

国家土地利用制作の策定

都市

地方

合計人口

すべて

農業・土地省

10

スリランカ政府

 

 

付録13:災害への準備の評価

災害の種類

災害への準備

準備のレベル

監視とデータ収集機能

災害緩和措置における制限

資格のある人材の不足

資金不足

制度的な不足

設備、施設の不足

×

地域

地方

×

M

S

VS

M

S

VS

M

S

VS

M

S

VS

洪水

B

 

B

B

D

A

 

X

 

 

X

 

 

 

X

 

 

X

 

地滑り

B

 

B

C

D

A

 

X

 

 

 

X

 

X

 

 

 

X

 

干ばつ

B

 

B

C

B

A

 

 

X

 

 

X

 

 

X

 

 

X

 

サイクロン

C

 

A

C

D

B

 

 

X

 

 

 

X

 

X

 

 

 

X

海岸侵食

C

 

B

D

D

A

 

X

 

 

 

 

X

 

X

 

 

 

X

その他

(人的災害)

 

 

 

 

 

A

 

X

 

 

X

 

 

X

 

 

X

 

 

 

凡例:A−とてもよい

   B−よい

   C−普通

   D−悪い

   M−軽微である

   S−深刻である

   VS−非常に深刻である