ラオス人民民主共和国

カントリーレポート

1999

 

 


 

目  次

 

T.ラオス概況

U.環境問題の概況

V.災害対策

1.天然資源の効率的利用

1)土地資源管理

2)水資源管理

3)森林資源管理

2.生活の質

W.現在の政府及び地方政策

1.全般的政策及び社会経済面での成果

2.環境政策

3.災害管理政策

X.法律制定と国際協力

1.国際環境協定へのラオスの参加

2.災害管理における地方分権化の過程に関する結言及び欠落事項

 

 


T.ラオス概況

 

かつてラオスは、地味が肥え、鬱蒼とした森と山を持ち、数多い種類の野生生物が生育する国であった。このことから14世紀には「百万の象の国」と呼ばれていた。ラオス人民民主共和国は1975年12月2日に設立された。ラオスは東南アジアの中心部にある多民族国家であり、面積236,800平方キロメートル、人口480万人(SPC-1997)、人口密度は1kuあたりおよそ20人である。この人口は多種類の民族から構成されており、大きくは3民族に分けられる。ラオ・ロウン(低地民)が70%で、メコン川とその支流沿いに住む。ラオ・テウン(高地民)が20%で、1,000m以下の標高の山とその斜面に住む。ラオ・スン(山岳民)が10%で、高い山岳地帯に住む。国土のおよそ85%は山で、経済面でのインフラストラクチャ、運輸、通信、生産及び近代的灌漑システムの発展を妨げている。

 

ラオスは行政面で17の県と1つの特別区域に別れている。これらの地域はさらに142の地区、11,390の村、792,287の世帯に分けられる(SPC-1997)。ラオスは顕著な農業国であり、人口の約80%が農村地帯に住み、66%ほどが自給農業に頼っている。貧困の度合いは高地農村地帯でもっとも甚だしく、地域によって次のように異なる。中部地域33.6%、北部地域26.5%、南部地域16.2%。絶対値で表すと、約250万人が貧困度数でいう貧困である(北部地域46%、中部地域40%、南部地域60%)。ラオスはGDPが一人あたり382US$(1997年)と、世界において最も開発の遅れている国の一つである。経済は発展しておらず、天然資源にもっぱら頼っている。

 

ラオスはまた、国際標準から見て、森林、水、生物多様性、鉱物及び土地資源においてまだ比較的に豊かである。しかし、ラオスが広大な未利用資源を有しているとはいえ、森林資源を有する土地の大部分は、劣化しやすく、また全般的に土壌は肥沃ではない。

 

閉鎖された熱帯林は、1950年においてラオス全土の約70%を占めていた。この30年から40年の間に、この数値は47%に低下した。過去30から40年でのこれだけの下落があったにせよ、ラオスは、いまだにアジアにおいて最高率の比較的健全な自然林を有する国である。

 

農業地の利用度も同様に地域によって異なる。中央地域ならびに、とりわけ南部地域の県が耕作可能な土地資源を有しており、その中でもかなりの部分が未開発である。需要の多い北部地域は山がちであるため、耕作可能な土地はより少ない。ラオスの人口は少ないとはいえ、急速に増加しつつあり(増加率2.5%)、メコン川とその支流に接する県に特に集中しているので、高地地域での天然資源への依存度を高めつつある。

 

高地地域での農業生産はいまだに移動耕作、あるいはスウィッデンとよばれる焼き畑農業による自給農業に支配されている。ラオスにおける深刻で持続した森林伐採及び土地劣化は移動耕作によるものがほとんどである。人口圧力による輪作期間の短縮化がなされている地域、及び収穫の少ない低地水田でのさらなる低収穫を補うために低地農民が隣接する高地に蚕食している地域、ではこれは特にいえることである。

 

慣習的な農業方式に起因する土地の劣化が、高地地域での農村の貧困に直接的につながっている。高地地域での移動耕作を安定化しようとする挑戦は成果を挙げてないが、貧困の縮減、代替食物の供給、食品安全性、土地保有の保証を平行して進めなければ実現できない。これには、共同体を基盤とした天然資源管理計画が必要であり、その成果として、土壌、水資源、野生生物、及び共同体ならびに地域にとって価値のある生物資源を保護するための森林の保全も含めた、土地の複合的な使用を高地地域の共同体が実現できるようになる。高地での生活と社会文化システムの多大な複雑性に取り組むために、ラオス政府は「重点地域」制度を発足した。これは、高地における持続的な森林土地管理を地方分権によって行えるように支援するものである。

 


U.環境問題の概況

 

ラオスの環境特性は東南アジアの他の国のそれとは異なっている。中でも顕著なのは次の点である。

 

 

●1平方キロメートルあたり20人以下という、東南アジアで最も人口密度の少ない国でありながら、農地が少ない。耕作面積に対する人口の比は、ヘクタールあたり約5人である[1]

 

●主要部分での地理的条件が障害となっている。国土の表面は山地であり、浸食されやすい。道路基盤はほとんど整っていない。

 

●高地の森林及び未改修水路の経済性も独特である。国土の自然条件(気候、土壌、地形)が定住農業よりも農林業に適している。

 

●およそ半分の地域で不発弾を処理しなければならない。戦時の枯れ葉剤によって汚染された地域もある。

 

●孤立し、また隔離された国と見なされてきたが、計画経済から開放市場経済への転換が始まって、増大する東南アジア経済の新しい貿易ルートの中心に位置するようになりつつある。

 

●内外からの圧力により、天然資源を基盤とした貿易立国を目指す開発が急加速している。

 

ラオスの天然資源基盤は、国土の三分の一以上を占める森林、潜在的な水力発電力、及び鉱床である。これには、石灰岩、無煙炭、褐炭、石膏、砂、非鉄金属、貴石、原鉱、があり、石油も可能性がある。これらの多くは未開発である。膨大な投資提案がなされているが、これらは天然資源の探査あるいは/及び採取を目的としたものである。水力発電、森林、鉱業が主要な海外取引の稼ぎ手となっている。経済発展の持続性に十分な注意が払われることを確証するために、納得できる需要が必要であることをラオス政府は深く認識している。

 

ラオスにおける重要な環境問題は森林伐採である。これは高地民及び山岳民による集中的な焼き畑農業に主として起因している。また、急激な人口増加による、森林地の誤った伐木及び転作にも原因がある。さらに、都市の環境問題も当初から考えに入れておかねばならない。森林の急速な消滅と非力な保全システムにより、この国の豊かな生物多様性は危機に瀕しつつある。水資源管理に関する環境問題は主要な分水界における分水界の劣化の脅威、水力発電能力及び灌漑能力低下の可能性、水力発電所開発の環境対策費用を適切に査定するシステムの不在、及び清潔な生活用水の不足と衛生問題である。鉱業も、必要な環境保護手段をとらなければ、激烈な環境破壊につながりうる。集中的な焼き畑農業、休耕期間の短期化、及び低地農民による隣接高地への浸食による高地での環境劣化は重大な関心事となりつつある。初期の段階で環境問題に正しく取り組まなければ、工業及び輸送地域の開発の拡がりにより、ラオスも環境問題にさらされるであろう。

 

1999年4月3日、ラオス議会は環境保護法を制定した。科学技術環境庁、関係省庁、県に対してあらゆるレベルで環境管理及び天然資源の持続的な利用を促す必要施策を取るよう、明確に指示した数々の方策を政府は発足させた。ラオスにおける環境及び天然資源利用の基本原則は次の通りである。

 

1.       環境保全が重要任務であり、緩和及び復元よりも上位である。

2.       環境保全計画が社会経済発展計画と平行して建てられ、後者に含まれねばならない。

3.       ラオスに在住するすべての個人及び組織は環境保全に積極的に貢献しなければならない。

4.       環境にいかなる損害でも与えたものは、その影響について責任がある。

5.       天然資源、原材料、及びエネルギーの使用はすべて注意深く行い、持続的発展のために公害及び空費を避けなければならない。

 


V.災害対策

1.天然資源の効率的利用

 

1)土地資源管理

 

恒久的農地及び移動耕作地域の増大が森林資源の劣化に与える影響を見ると、ラオスにおいては土地と森林資源管理が密接に関係していることは明確である。農地の森林地への拡張が森林伐採につながるだけでなく、以前は森林であった土地の土壌条件に適した農業生産システムが採用されなければ、耕作が重大な土地資源劣化ならびにシルト化及び水流の減少にまでいたる下流効果をもたらすこともありうる。

 

ラオスの人口密度は比較的低いが、耕作可能地は少ないのみならず、今後の拡張も地理的条件から限られている。未利用地の多くはは地味が悪いか、到達不能の地である。政府は増大する人口を支えるために農業を振興する任務があるが、その遂行を妨げるのが灌漑可能地域を限定する地勢である。雨期において260,000ヘクタール(傾斜5%以下の耕作可能地の15%)以下の土地が灌漑可能であり、乾期においてはわずかに116,000ヘクタールしか適地がないと推定されている。雨期においてはこの半分以下及び乾期においては三分の一以下しか、これまで開発されてない。

 

耕作可能地の増大及び農耕地の適正な耕作を妨げるもう一つの要因は、農山村地帯における不発弾による広範囲の汚染である。「秘密戦争」中のこれらの残留物によって、主として農民あるいは子供である多くの人たちが毎年殺されるか不具者となっている。一人あたりの1トン爆弾の個数において、ラオスは地球上で最大の被爆国である。不発弾認識及び除去国家プログラムが社会経済発展のための最重要事項となっている。

 

土地法を設定して、政府は現在次の事項に注力している。

 

     土地の測量及び配分

     地質測定及び評価

     高地農作システムの改善

     低地生産の改善

     農業研究と拡張の促進

 

2)水資源管理

 

ラオスは豊富な地表及び地下水資源を有している。一人あたりおよそ60,000立方メートルの水資源のため、アジアに置いて最大の再利用可能な淡水利用率を有している(アジア平均の20倍)。水理的数値は顕著な乾期雨期に強く影響されるが、深刻な水不足及び水資源獲得競争は大きな問題となることはない。

 

ラオスは内陸国であるため、下記の問題点は陸水だけに限ったものである。

 

a)河川及び湖沼

幹線水路はメコンであり、タイとの主たる国境を形成している。メコン川委員会によれば、およそ流域の35%はラオスにある。しかしながら、国土の90%がこの流域に属しているので、ラオス河川に影響をおよぼすあらゆる活動がメコンにも影響するといえる。

 

メコン川とその支流はこの国にとって、きわめて重要である。慣習のため、また灌漑の貯めに使われるだけでなく、食料(魚類、水生動物及び植物)及び飼育動物のための飼料(ミズホウレンソウ、ホテイアオイ)をも供給している。多くの遠隔地へは、旅行は舟でのみ可能である。メコン川委員会によって、ラオスはこの重要な資源の利用について強調と管理を行っている。

1991年の破滅的な渇水と洪水がもたらしたのは、農業成長率の低落である。1993年には8.3%、1995年には4.9%となり、1996年の過酷で広範囲の洪水が生産の増大と1997年のための食料保全を悪化させた。

 

b)地下水

ラオスには膨大な地下水資源があり、雨期には毎年かなりの量の涵養がある。再生可能な国内水資源は1年あたり、270立方キロメートルと推定されている。前述のように、55.100立方キロメートルという一人あたりの水資源量は、東南アジアにおいて最も恵まれたものであるが、人口密度が低いことを考えると誤解をまねく数値かもしれない。実際には、地下水の利用率は地域ごとに異なっている。ある地域では、地下水岩盤がきわめて深いということがなく、そこの住民を支える十分な地下水がある。他の地域では、水不足に苦しんでいる。いずれにせよ、徹底した研究はまだなされていない。

 

 

c)地帯別の水利用

ラオスにおける水の主体は農業に使われている(82%)。工業及び家庭用の給水はそれぞれ10%及び8%である。

 

水資源の持続不能な利用を防ぐため、政府は水資源管理国家特別委員会を設立した。委員は水利用についての最重要関係省庁とSTENO委員長の指揮下の管理職である。水利法は1996年に公布された。

 

人造貯水池。水力発電開発プログラムの施行後は、国土がいくつかの貯水池で覆われるであろう。それぞれがシルト化と浸食を防ぐための管理計画を必要とすることになる。近隣の村の住民もその農水産技術を修正するか(たとえば、河漁から湖漁へ)、移動から定着へと生活方法そのものを代えるとかせざるをえなくなる。現在の所ではナムグム湖が唯一の大貯水池である。付属する水力発電は150MWである。

 

水力発電。唯一の国家的関心事は、この国が経済発展を加速するために水力発電能力をさらに高めて、輸出しようとしていることである。メコン川主流及び支流には膨大な発電能力が秘められている。ラオスにおけるメコン水路の潜在発電能力は約18,000MWであり、年間には110,000GWhのエネルギーを供給できる。

 

しかしながら、このような開発にあたっては、移住条件、環境及び社会文化的な影響について注意深く事前評価されなければならない。地方の電化はその地方の社会文化的条件を高める一要素であり、特に遠隔地である山岳地帯では大きな要素となる。電化にあたっては、送電線の延長か地域ごとの小水力発電計画のいずれかが考えられる。全国送電網もこれらの機会を増大するであろう。

 

3)森林資源管理

 

a)一般的問題点

前述の通り、ラオスは貿易材料として、また多数の国民の収入源として、いまだに森林資源に多くを依存している。経済、とりわけ輸出基盤の材料が限られている以上、予見しうる範囲の将来においてもラオスは森林が発出する収入に頼らざるをえないであろう。したがって、必要なことは、特定地域における生産林と保護林との持続的な管理を行ってバランスをとることである。特定地域とは、豊かな生物多様性があることをもって保護に値する地域と限界状態にある分水界である。

 

1992年の全土調査に基づくと、商業林からの持続可能な年間木材搬出量は288,000立方メートルである。これは、熱帯雨林実行計画が採用した年間許容量ならびに最近の年間割当量にほぼ等しい。この数値に加えて、さらに年間100,000立方メートルが森林地区共同体によって伐採され、現地の需要(建築資材等)を満たすために販売されていると見られている。これらの多くは、公開地あるいは独立樹から伐られたもので、潜在的商業林への影響はない。最後に、エネルギー消費の80%が木材から得られている。現在の人口からすれば、一人あたりの年間木材燃料消費量は1立方メートルであると見積もられてきている。これらのほとんどは、地域社会での自己消費用であり、しばしば灌木及び自然死した大林冠樹が用いられる。ラオス、特に農山村、においては、燃料樹木伐採が重大な環境問題となるとは思われない。

 

開発ヴィジョン2020において設定された目標数値は、劣化した森林の復元2百万ヘクタール、植林500.000ヘクタール、ならびに天然林の再生16.5百万ヘクタール以上、である。これは、残存する森林資源の持続可能な開発(最大許容伐採量が500.000立方メートルを超えないこと)と平行して具体化されることになっている。

 

b)伐採とその原因

ラオスの全森林面積は、過去10年間で年間67,000ヘクタール減少している。森林地の減少に加えて、残りの地域においては劣化がかなり進行している。これは政府内部での関心を高め、20箇所の国定保護地域が宣言された。この地域は全国土のおよそ12%になる。また、熱帯雨林国家実行計画が承認され、1996年には森林法が採択された。

 

森林資源の枯渇にはいくつかの要因がある。計画及び監督が不十分なままの伐木、山火事、蚕食、移動耕作などである。

 

政府統計によると、年間におよそ300,000ヘクタール以上が移動耕作により空閑地となっている。いまのところ森林伐採の3原因(伐木、蚕食、移動耕作)は等しく重要と思われているが、急激な人口増及び高地での肥沃度の低下が続く限り、移動耕作の拡大による森林地での耕作が最大の問題となるであろう。したがって、政府は移動耕作に最も注意を払っており、焼き畑地域の減少が最優先事項であると宣言している。

 

c)政府戦略

森林資源の持続可能な管理が必要であり、これがラオス経済及び社会にとってきわめて重大であることを政府は認識している。そのため、政府はいくつかの核心計画を建てる事を決定した。これは資源管理システムの改良の枠組みを実現するものであり、重点は次のようになっている。

 

●伐木事業の管理改良

     生産、地域共同体、及び保護林の明確な設定

     特定生産林地域での商業的伐木をしどうする森林管理計画の開発

     森林管理案及び造林案に合致した伐採に責任を持たせる林業会社との契約

     損失を減らし、リサイクルを行うための伐木と現地処理の協調改善

●制度の強化

     不法伐木、不正仕様、及び不正輸出を最小限とするための効力ある規制と制御機構の制定

     森林資産、土地利用計画、森林管理、林学、収穫逓増及び保護に関する能力強化のための林業従業員の教育

     森林管理活動改善のための持続的基金を確保するため、森林税収の一定率を財源とした森林管理基金の設立

     包括的土地利用及び森林管理法制の開発及び採択

 

●資源管理への地域共同体の参加

     資源利用及び管理計画を厳守させることと交換に、伝統的に共同体によって管理されてきた森林地への立入権と長期使用権の授与

     低地農民による近隣高地への蚕食を防ぐため、彼等への収穫増大の支援

     移動耕作地域が森林地に拡大することを制限するための、より持続可能な高地生産システムの開発と漸進的な導入

 

2.生活の質

a)貧困の撲滅

広く知られている通り、環境への圧力は貪欲と需要との二つの力によるものである。第一の点では、制約のない資源採取及び負の結果を顧みない開発とがこの国の天然資源及び文化遺産を急速に激減させ、破壊している。第二の点では、生存への圧力が収穫と土地利用とを限度以上に押し進め、広い地域に亘って劣化をもたらしている。この第二のシナリオがラオスにあてはまるものである。環境破壊は必要最低限の生活条件の「副産物」であり、この条件が持続不可能となってきている。

 

社会経済開発は政府の第一優先事項である。ブラジルのリオデジャネイロ以降5年を経て、環境を考慮に入れた開発だけが長期的には持続可能であるということがますます明らかになってきた。

 

したがって、ラオス政府は貧困を駆除し、都市及び農山村での開発の平衡をとり、貧困者にも富裕者にも成長の分け前を与えて行かねばならない。これが貧困撲滅国家計画の起草を政府に促すことにつながっている。この報告書全体に亘って強調されているのは、大衆の貧困の撲滅こそが我々の主要な開発目標だということである。公平で永続的な成長及び持続可能な開発戦略が、この目標に到達するための主要な道具である。

 

経済成長及び農山村開発計画が進むに連れ、農山村住民は社会経済的な代替手段を手に入れられるようになり、これが貧困の撲滅だけでなく、移動耕作によって破壊されることのない森林、分水界、水流保護にもつながることになる。したがって重要なのは、この人々ができるだけ早く環境教育、訓練及び意識付けを受け、環境を破壊しない代替生産方法を受け入れやすくすることである。

 

b)保健水準の向上

リオ以後5年を経過したが、保健分野への投資はいまだ政府目標に達していない。保健歳出を国家予算の2から6%に増す(1994-96)計画であったが、達成できなかった。この状況は最優先事項として保健改善宣言とともに次の5カ年計画で表明されるであろう。保健に関しては、下記の目標が設定されている[2]

 

     現代保健科学と農山村での伝統的慣行とのく見合わせに基づいた保健活動の促進強化。特に、少数民族への保健サービスの強化。

     より高度な無料処置システムの適用範囲拡大

     免疫力の強化、栄養改善の促進、清潔な水及び便所の使用による大衆レベルでの予防的健康推進

     麻薬基金開発

     保健従事者訓練及び農山村での派遣制度の改善

     医師の技能向上

     設備の増設

     エイズ防止

     私設診療所の監督改善

 

c)人口増加抑制

1995年の人口調査で、人口は4.58百万人であった。これは1985年の前回の調査より百万人増えたことを意味している。最も増加したのはヴィエンチャン市であり、増加は自然増に加えて移入によるものである。都市基盤の改善及び医療サービスの地方への拡張により、母子死亡率は減少しそうである(表4)。母子の健康を確保し、人口増を抑制するため、政府は家族計画を主導してきている。

 


W.現在の政府及び地方政策

1.全般的政策及び社会経済面での成果

政府の一般経済発展政策の基礎は、1986年に創設された新経済機構(NEW)にある。NEWは二つの目標を持っている。(i)経済の安定化、と(ii)中央管理型から市場先導型の成長戦略への転換である。過去10年に亘り、NEWは意義深い衝撃と成功をえたが、その中には海外投資及び輸出の増大がある。NEWは構造的変換という次の段階に進み、全国ハイウェイ、水力発電所、都市水道システム、及び大規模灌漑システムなどの大規模な都市基盤開発を優先事項とした。

 

現在の地方分権化された地方開発政策は、すべての国民に平等な持続的成長を目標とし、資源保全と生計手段の改善という平行した目的に注力している。1994年に政府は解決策を採択したが、これは地方分権による地方開発の重要性を強調したものであり、これにより国家及び地方開発委員会が設立された。

 

2.環境政策

総合経済革新の後押しをするものとして1986年に新経済機構が設立されて以来、政府は国家経済を中央計画型から市場先導型に変換する野心的な計画に取り組んできている。天然資源(農業、森林、及び水力発電)の開拓に多くを依存している経済基盤である以上、包括的な天然資源管理政策と計画の採択と実行とが持続可能な社会経済発展に欠かせない。国家戦略を変革し、再構築する努力の中で、1990年代の初期に政府は数々の天然資源管理政策文書を用意した。これらの文書には、熱帯雨林実行計画、全国森林実行計画、環境実行計画、及び社会経済開発戦略がある。

 

環境実行計画では、国にとって主要な環境問題点を列挙し、つぎの分野を取り上げている。

 

-環境面での計画及び管理枠組の開発

-森林資源管理

-生物多様性の保全

-土地資源管理

-水資源管理

-工業、鉱業及びアクセス・都市基盤整備

-行政、法律制定及び規制の枠組

 

3.災害管理政策

自然災害予防と保護は、ラオスにおいて環境保護法の中に深く結びつけられている。

 

「災害は極度に損害の大きい出来事であり、自然発生によるもの、人工的に発生するもの、他の理由で発生するものがある。災害は健康、生活、財産、及び環境に影響する。ラオスにおける災害としては、洪水、渇水、地滑りと浸食、火事、台風、害虫蔓延、大規模油漏れなどがある。」

 

「災害保護及び予防手段。政府は国家災害予防委員会を発足させる。国家災害予防委員会は地方行政機関と協力して、災害対応及び予防案を制定しなければならない。委員会は危険地域での予防監視を定期的に行わなければならない。」

 

環境保護サミットの前には、総合的災害管理事項を扱う組織はなかった。1999年4月3日の後、総理大臣布告[3]により国家災害管理室が創設され、UNCCDに関わる管理と協調の主たるセンターとして貢献してきている。

 

国家災害管理室は国内における災害予防と保護に関して、既存の関連省庁、県と協力しており、主要官庁、団体及び県の代表者から構成されている。

 

一般的に言えば、マクロ・レベルでの災害管理は労働社会福祉省(LSW)及び科学技術環境庁(STEA)によって遂行されている。各技術担当省庁と県は災害管理に関係するそれぞれの環境に責任を持ち、MLSW 、STEA、ラオス赤十字(LRC)、農業山林省、健康省などと密接に協力している。

 

 


X.法律制定と国際協力

1.国際環境協定へのラオスの参加

 

気候変化に関する協定(1995)

渇水への闘いに関する協定(1996)

生物多様性に関する協定(1996)

オゾン層保護に関するウィーン協定(1998)その他

 

ラオスは地球問題についての多数の国際会議に、次のように参加している。地球サミット(1992)、人口と開発に関する国際会議(1994)、世界女性会議(1995)、社会開発世界サミット(1995)、人類居住国連会議(1996)、世界食料サミット(1996)、気候会議(1997)

 

ラオスは自然災害予防と保護に関する国家法律、戦略及び実行計画を採択するものと予期されており、次のような法律がある。環境保護法(17-19条)、国家災害管理室をへの行政権を与える総理大臣布告第158号、土地法、水利法、UNCCDの実現に関する農業法。

実施したこととして、ラオスは総合的な短期及び長期開発優先順位を国家社会経済開発計画に公式化した。優先事項は次のようである。

 

・自給率を確保する食糧生産

- すべてのラオス国民のための基本食料確保及び米の備蓄

- 肉、卵、魚、及び野菜の一人あたり消費量を目標水準に高めること

- 穀物の多様化をはかりラオス国民の栄養状態を改善すること及び農業生産の商業化への機会を与えること

 

・移動耕作の安定化・低減

- 人口増と共に増大する焼き畑農業の廃止

- 分水界及び流域地の保全

 

・人的資源開発

- 健康、教育、雇用及び社会保険、環境及び難民送還

 

・インフラストラクチャ開発

- 生産、貿易、及び商品とサービスの供給を国内外で行うことにより、汚点のない経済成長を遂げるための基盤整備による支援を提供すること

 

・地方開発

- 地方開発計画は様々の要素と手段から成っている。家庭食料確保、地方都市基盤、健康及び教育、天然資源の持続可能な利用などである。

 

・社会経済管理及び国際経済関係の改善

- マクロ経済管理の改善

- 国際取引の拡大、直接海外投資、海外開発融資

- ASEAN及び国際会議のような地域グループへの参加

 

ラオスにおける貧困の大きな根本原因と取り組むのに、これらの事項の推進が優先となっている。

 

「開発途上国から2020年までに抜け出すこと」[4]。持続的で平等な経済成長によって2020年までに長期開発目標(LDG)から解放されることが我々の長期開発目標である。

 

LDGを裏打ちするものは大衆の貧困を撲滅することである。このことから二つの戦略が建てられる。平等で社会サービスが利用できる高い経済成長及び、とりわけ地方において、すべての人に開かれた市場である。1997年から2000年に向けた目標及び目的は、農山村における自給自足的生産から市場に向けた生産への転換を戦略的に推進し、加速させることである。

 

ラオス開発への財政は、借款、助成金、民間投資による海外資金に大幅に依存してきている。公共投資の五分の四は海外資本の流入に資金を得ているが、政府及び民間による国内貯蓄がきわめて少ないからである。

 

将来の経済開発は、ラオス政府が道路及び通信ネットワークを国内に張り巡らせられるかどうかにも懸かっている。北と南を結びつける道路は一つしかなく、多くの二級道路は乾期にしか通行できない。都市基盤開発計画は、運輸及び電気通信網を全国規模で2000年までに近代化することに焦点を置いている。この状況は緊急な改善が必要であることを認識している政府であるが、自然災害予防及び保護のような環境保全にもなお注意を払っている。

 

2.災害管理における地方分権化の過程に関する結言及び欠落事項

 

ラオス政府は、土地利用、水資源、及び森林管理を含めた環境管理を地方分権化することが、全国的な貧困撲滅のための国家的最優先事項であるとしてきており、これらの地方分権化の効果を支援するために、数多くの政策、法制的枠組、及び地方分権による別の形の災害管理機構及び様式を公式化し、修正し、試行してきている。しかしながら、この地方分権化過程から生じた制度上の真空領域を満たすには、様々の制約がいまだにある。

 

主要な欠落事項は、地方レベルで管理及び開発活動を遂行するための能力及び財政機構が県及び郡レベルでは限られていることである。永続的で適切な訓練及び支援業務の実施が県及び郡レベルで必要とされている。この中でも、データ及び収集した情報の解釈についての訓練が必要であり、指定地区での識別と分類を基礎として、他の推薦地区での土地利用、水資源及び森林管理計画策定を促進するようにしなければならない。

 

自然災害予防及び保護に関する法律施行。持続可能な開発のために、現在及び将来の環境及び天然資源保全に欠かせない多数の法律制定及び国家優先計画をラオスは表明している。現状では法的あるいは物理的に実施手段がとられたのは非常に少ない。災害保護管理の多くの要項は法律に制定されておらず、直ちに制定されなければならない。

 

 



[1] アジア及び太平洋の環境事情 1996

[2] 政府報告 第6回円卓会議、1997

[3] 国家災害管理室, (布告番号. 158. /PM, 1999823)

[4] 6回国会政策表明、19963