はじめに

  

 

自然災害の流行やその規模は、私たち人間社会や地球規模での経済活動に深刻な結果をもたらし、また社会・文化面、経済、環境、国家政策にいたるまで有害な影響を与えている事実は無視できません。また、自然災害の度重なる発生やその深刻な被害は世界中で増加しています。開発途上国で発生した自然災害による経済損失の急増は、その国の開発の障害となり、更にこの状況は、地域の弱いリスク移転とも重なって、悪化しています。そのため、開発途上国での自然災害による深刻な被害は、経済の不安定とも結びつき、地球規模での競争を妨げています。過去100年間の統計を見てみると、災害被害を受けた国の中で、アジア地域がその矢面に立っているのが見てとれます。それ故に、世界の被災者数の約90%、死者数・経済的損失の50%以上を占めているアジア地域は、世界でもっとも災害の影響を受けやすい地域ということができます。そのため、開発メカニズムという観点から災害の例年の傾向を検証しながら、過去の災害について分析することは極めて重要な作業になってきます。

自然災害によってもたらされる深刻な被害に対処し、効果的な防災システムを構築するために、世界・地域レベルでの社会・経済的な取り組みを推進し、強化することが重要となってきます。そのため、2002年に発生した自然災害の傾向を分析したこの本を発行する運びとなり、政策決定者や研究者、学者等の方々だけでなく、地域の防災活動に携わる草の根レベルで活躍されている方々にも有益であるものと思います。このデータブックが、地球規模での持続可能な開発を助ける手段として、さらに総合的な防災政策(TDRM)への取り組みを推し進めてくれればと切に願っております。

  

 

 

20034

 

アジア防災センター

所長 西川智