7.防災教育・訓練に関する課題の把握

7−1 アジア防災センターにおける防災教育・訓練の企画

 アジア防災センターでは、上記の通り、メンバー国をはじめとした各国の多様なニーズを受けた形での防災教育・訓練の可能性につき、検討を進めているところであるが、同時に、既存の国際防災教育・訓練についても、これらをより適切な内容・方式で実施していくことも今後の重要な課題となった。その具体例として国際協力事業団(JICA)防災行政管理者セミナーの企画及び実施計画等について、次に説明する。

7−1−1 JICA防災行政管理者セミナー

1) 概要

 JICA主催、国土庁受託の各国政府防災担当者向けの1999年度「防災行政管理者セミナー」が、2000年2月に初回の開催より10回目を迎え成功のうちに終了した。関係機関の調整の結果、次回2000年度より主たる研修会場を神戸に移し、JICA兵庫センターよりアジア防災センターが受託し、このセミナーを実施することとなった。
 アジア防災センターとしては、約1年後の実施を控え、これまでの防災行政管理者セミナーの実施状況を把握し、次回以降の実施の参考とするため、平成11年度JICA防災行政管理者セミナーに実施協力することにより、次回研修のための予備調査を進めた。また、今回の研修結果につき、参加者に対してなされたアンケート結果も検討したところ、次のような点で改善の余地のあることがわかった。

中央政府レベルでの防災体制・災害対策だけではなく、地方自治体レベルでの防災体制・災害対策をより具体的に学びたいとの要望があり、これに応える必要があること。
東京を主会場としたこれまでの研修は、中央政府の防災対策につき研修する上では非常に好適であったが、神戸を主会場とする次回以後の研修では、中央政府の防災対策に加え、阪神・淡路大震災など被災地での地元関係諸機関の対応を中心とした、より具体的な経験及び教訓を学ぶことができる。このような特性にも配慮すること。
講師が参加者に説明するいわゆる講義スタイルの研修に対して、参加者自身が積極的に参加できる方式の研修の比率を増やし、参加者のニーズにより応えること。
研修での説明は可能であれば直接英語で行うことが望ましい。これにより、日本語を英語に翻訳する場合に比較し、約2倍の内容を扱うことができる。

2) 1999年度のJICA防災行政管理者セミナー

 1999年度のJICA防災行政管理者セミナーの実施風景の一端を紹介する。

(1) 東京都災害対策本部室において都の防災対策について説明を受ける参加者

(2) 兵庫県北淡町震災記念公園にある野島断層保存館において、地震の時に崩壊した阪神高速道路をリアルに再現した震災モニュメントを見学する参加者

 1999年度の研修に対する参加者の満足度は非常に高く、次回についても、これまで同様によい研修となるよう努めたいと考えている。

3) 2000年度の防災行政管理者セミナーの実施プログラム(案)
 次に、検討中の2000年度の防災行政管理者セミナーの実施プログラム(案)について、その内容の一端をここに紹介する。

平成12年度防災行政管理者セミナー・実施プログラム(案)

 1.目的

各国の防災行政担当者に対し日本の防災体制、災害対策及び防災協力に関する理解の涵養を図る。
前項の理解を基礎として、今後自国及び周辺地域の防災対策に適用しうる応用力の向上をめざす。

 2.セミナーの名称

平成12年度よりアジア防災センターが担当し、神戸が主会場となることに鑑み、自然災害被害の予防・応急・復旧・復興の各対応を多面的にとらえる趣旨から英文名称を次のように見直す。
英語名:Seminar on Disaster Management(旧称Seminar on Administration for Disaster Prevention)

3.主要な研修項目主要な研修項目としては、次の事項を検討中である。

  1. 日本政府の防災対策・ 日本の災害対策の概要(災害対策基本法、防災基本計画等)・ 災害発生時の対応(中央防災無線等)・ 地震・津波・火山災害対策(国土庁)・ 河川管理、洪水・土砂災害対策(建設省)・ 森林保全対策(農水省)・ 気象・地震観測、予報・警報体制(気象庁)・ 災害救助法(厚生省)・ 国際緊急援助隊(JICA)・ 上記のフィールドスタディ
  2. 地方政府の防災対策・ 阪神・淡路大震災の理解(原因、被害状況、応急・復旧・復興対応)・ 兵庫県の地震防災対策等・ 初動対応の教訓と対策・ 交通管制(警察等)・ 救命救急対応(消防・病院等)・ 避難所運営・ ボランティアとの支援体制・ マスコミへの対応・ 上記のフィールドスタディ(災害対策本部、防災情報システム等)
  3. 各国の災害対策・ カントリーレポート(各国の災害対策に関する報告)・ 各国間での討議・意見交換
  4. 現地研修・ 鹿児島(桜島火山・砂防対策、気象観測、自治体消防体制等)
  5. テーマ別研修・ 災害管理へのGIS利用に関する演習・ 市民参加型防災意識向上プログラム・ 災害直後の負傷者の救命救急演習・ 都市災害管理のための机上演習(ロールプレイング)・ 古都京都の防災への取り組み(文化財・密集市街地防災対策)
  6. 国際防災協力・ アジア防災センター及び関係機関の取り組み、討議・ 国連OCHAの取り組み(災害評価演習を含む)

 4.実施上の留意点・ 現状の説明に加え当該対策の背景及び理由を明確に理解させる。

・ 研修を通じ、参加国の防災体制の強化、災害被害の軽減に貢献する。
・ 参加国との今後の交流拡大を図る。

 5.実施時期2001年1月上旬〜2月上旬を候補とする。※ 関係諸機関の事情を考慮。

 

上記のプログラム案において、ねらいとしている点は次のとおりである。

日本政府及び地方自治体の幅広い防災対策を学び、防災に関する広い視野を養ってもらうこと
阪神・淡路大震災の経験と教訓を踏まえ、より具体的な形で災害対策について考える機会を持ってもらうこと
アジア防災センターの有する知識、経験等の情報及びネットワークを駆使し、防災分野における国際協力について討議し、今後の防災協力の展開を図ること
参加型研修を増やし、参加者が自主的に考え意見交換し学ぶことにより、自国でそれらを展開できるようなプログラム展開にすること
参加者同士の意見交換、交流により、参加国どうしで防災体制及び災害対策に関する理解を深め、お互いに学びあう貴重な機会とすること

今後研修の実施に向けて、これらの研修項目につき、さらに具体的な内容の検討を行っていく予定である。そして、アジア防災センターの企画する次回からの防災行政管理者セミナーが、参加各国のみならず世界の防災体制の強化と防災力の向上に役立ち、少しでも自然災害被害の軽減につながることを期待している。


7−2 アジア防災センターにおける短期研修の実施

 アジア防災センターにおいては、これまでに、一日、半日の短期の教育訓練プログラムを実施した。対象は地方自治体の防災職員、消防職員、海外の防災専門家、マスコミ等多岐にわたるが、国際防災協力、日本における防災対策の現状、防災情報ネットワーク等に関する研修を行った。表7-2-1に海外からの来訪者を対象に行った研修の一覧を示す。

表7-2-1 短期防災研修(外国人)

日 時 場 所 国 名 主な出席者・出席人数 内 容
1999/8/18 ADRC チリ、中国、韓国、マレーシア、メキシコ、パプアニューギニア、 ペルー、フィリピン、ベトナム JICA国際緊急援助隊及び防災体制コース研修員一行10名 国際防災の10年、世界の自然災害数・損害額、阪神・淡路大震災、国際防災協力、ADRC活動概要他
1999/9/14 同上 米国、日本 在日米軍、陸上自衛隊一行17名
1999/10/27 同上 中国(台湾) 台湾立法委員一行16名
1999/10/28 同上 中国(台湾) 台湾工業区防災系統考察団一行17名
1999/11/9 同上 中国、エジプト、ペルー、フィリピン、タイ、トルコ JICA災害総合保健医療研修コース一行7名
1999/11/9 同上 中国 中国国家地震防災法律代表団一行9名
1999/12/14 同上 フィジー JICA青年招聘事業(フィジー政府職員)一行12名
2000/2/17 同上 韓国 ソウル市地震防災行政視察団一行4名