4 防災協力の推進に関するニーズとシーズの把握

 
4−1 ニーズとシーズの把握

4−1−1 各国へのアンケート調査

各メンバー国のアジア防災センターWebサイトへのニーズ把握という観点から、メンバー国の方々に対するアンケート調査を実施し、各国ののニーズを明らかにした。アンケートは、アジア防災センター第2回専門家会議の案内にアンケートを同封し、各メンバー国のカウンターパートの責任者に回答を依頼した。アンケート内容は、アジア防災センターのサイトへのニーズに関して、選択肢を列挙し、回答者が選択を行なう(複数選択可)ものである。回答結果を表4-1-1-1に示す。
回答数15の中で10以上チェックされた項目は以下のとおりである。

@ ADRCサイトへのアクセスの目的

a)災害の最新情報の収集
b)他国・自治体の防災情報

A 災害発生前に得たい情報

a)他国・自治体の防災基本計画
b)災害監視・防止のための技術動向

B 被災後に得たい情報

a)役に立つ教訓

C 望まれる技術情報

a)統合的な情報システム

D 望まれる教育・訓練情報

a)防災計画に携わる行政官向けの教育・訓練
b)防災関係の国際会議

E 望まれる人的ネットワーク情報

a)防災計画に携わる行政官
b)防災計画の専門家

F 防災システムに関する情報を検索する際に役立つ分類

a)検索する情報の目的(予報・防災計画など)

G 被災後の情報を検索する際に役立つ分類

a)災害の種類

H 災害を特徴づける情報を検索する際に役立つ分類

a)災害の種類

アンケート結果を見る限りでは、防災担当行政官という回答者の所属を反映していると思われるが、防災計画を立案するための具体的な事例及び能力育成に対するニーズが非常に高いことがわかる。日本のウェブサイトを見る限りでは、東京都が防災基本計画を情報発信している程度であり、教育訓練プログラムを提供している組織も少ない。以上のことから、この分野でアジア防災センターのイニシアティブが期待されていることがわかる。
情報の検索では、回答者が目的意識を持っており予報情報や防災計画などのカテゴリー別に提供されることが望まれている。また、人的ネットワークを除き、災害の種類別に検索できると役に立つという回答が多かった。したがって、情報のナビゲーションにあたっては、「災害の種類」と「情報の目的」の二軸で整理すると利用しやすいことが明らかとなった。また、バングラデッシュやパプアニューギニアのような経済的に発展途上にある国々では、コストに対する意識が非常に高いことがわかる。
メンバー国のネットワーク利用環境の平均水準は、メールの利用が主流であり、ウェブは必要時のみ利用する程度である。よって、当面は、サイトのデザインは、データサイズの小さい軽いデザインを目指すべきである。また、ミラーサーバの設置にあたっては、回線の提供はできるものの、構築・保守をする能力は十分でなく、技術的な支援が必要な状況である。
 このようなネットワーク利用の現状を勘案すると、ホームページを通じた情報提供のみならず、ニューズレターなどを定期的に作成し、紙媒体あるいは、メール配信などにより情報提供を補完的に行っていくことも必要であることが認識された。

表4-1-1-1 アンケート結果


4−2 メンバー国からの防災協力プロジェクトの提案

4−2−1 各国への防災協力プロジェクトの意向調査

 アジア防災センターを構成する22のメンバー国に対して防災協力プロジェクトの提案を求めたところ、7カ国より計12件のプロポーザルがあった。詳細は次項に譲るが、いずれも各国の現在の必要性・ニーズを反映しており、それぞれの提案の重みは無視することができない。
 内訳としては、カンボジア・モンゴル・ネパール・ベトナムの専門家・人材育成のための研修プロジェクト又は普及啓発プログラムなど、アジア防災センターで協力可能と思われるものが7件、さらにインドネシアの全国防災会議開催、カザフスタンの防災情報システム、ネパール・ベトナムの防災情報センター具体化等、世界銀行や日本の国際協力事業団(JICA)など関係機関からの支援の可能性について検討せざるを得ないものが5件となっており、今後実施可能性について検討する予定である。

 

4−2−2 メンバー国のプロポーザル

 アジア防災センターがメンバー国に対して行った防災協力プロジェクトの意向調査に対し、各国から得たプロポーザルの概要は次のとおりである。

表4-2-2-1 防災協力プロジェクト・プロポーザル一覧

国名 プロジェクト 実施内容 期間 費用(概算) 担当
カンボジア 地域防災研修プログラム 3地域で地域防災管理者対象の研修を希望。トレーナー・チーム有り。普及啓発プログラムの実施、防災体制強化・教育のため専門家派遣希望。 1年 US$10,000 ADRC
インドネシア 各州・地域等の防災力強化計画 各州・地域等の防災力強化のため、中央及び各州・地域防災管理者による全国会議を実施。各州・地域での防災力強化策をまとめる。 1年 US$90,000 支援要
都市間防災協力の推進 尼崎市、Malang City間で防災システム等情報交換、相互交流による防災協力実施。今後の協力モデルとする。 1年 US$16,500 ADRC
カザフスタン アルマティ防災情報システム開発 アルマティ工業地帯をカバーするGISベースの緊急事態管理システムの開発、人材育成。 2002年6月 US$1,200,000 支援要
モンゴル 普及啓発プログラム 防災教育の推進
普及啓発活動の実施
4月 US$10,000 ADRC
ネパ-ル 災害救援部の対応能力強化計画 内務省災害救援部の対応力強化のため、災害情報センター設置、システム開発、要員訓練、専門家受入れ実施。 1年 US$100,000 支援要
普及啓発プログラム 防災教育(教師、保健・福祉、女性指導者、スカウト等)
啓発ポスターの企画・作成・配付
ラジオ広報の企画・実施
6月 US$10,000 ADRC
シンガポ-ル 防災研修 SCDF管轄の市民防衛大学(CDA)における倒壊建物救助研修にメンバー国の参加者を受入れ研修実施。 2週間 US$1,000 per person ADRC

ベトナム

国家防災情報センターの設置 全国の災害・防災情報を集約・分析し、判断支援を可能にする防災情報センターを政府内に設置。 2年間 US$570,000 支援要
NOAA衛星画像による洪水モニタリング メコンデルタを対象にNOAA情報を活用した洪水モニタリングシステムの開発。 1年間 US$100,000 支援要
防災研修 防災管理者の専門的研修の実施。 1月 US$10,000 ADRC
研修資料 防災管理者向け研修資料の作成。 3月 US$9,000 ADRC


4−2−3 今後の取り組み方針

 つぎに、今後のアジア防災センターの対応について説明する。

1) プロポーザルの整理分類

アジア防災センターは、多国間防災協力を推進する組織ではあるが、いわゆる資金援助機関ではないことから、これらプロジェクトの推進に際しては対応能力の限界を十分に踏まえた上で対応していく必要がある。
そこで、上記のプロポーザルについては、アジア防災センターが中心となって推進を検討していくプロジェクトと、世界銀行・JICAなど外部の支援機関の協力援助を検討するプロジェクトに分け、それぞれについて具体的な対応を検討することにしたいと考えている。

2) アジア防災センターで取り組むプロジェクトへの対応

アジア防災センターが中心となり、推進していくプロジェクトとしては、防災教育訓練や普及啓発プロジェクトなどがある。これらについては、比較的低額の予算で各国の細かな必要性・ニーズに応えることが可能と考えられる。また、メンバー国の研究者、防災行政担当者などの専門家のほか、関係諸機関の支援も得られやすいと思われるので、センターとして積極的に協力の可能性を探索していきたいと考えている。

3) 関係機関との協力調整

アジア防災センターとしては、既に第2回アジア防災センター専門家会議に参加した世界銀行と防災協力プロジェクトの推進に関して予備的な協議を開始している。またJICAについては、今後具体的な防災協力の可能性について、相談することにしている。
このうち、世界銀行については、専門家会議の場で紹介し、その後実現された防災コンソーシアムとの連携を図り、具体的な防災協力プロジェクトの推進につなげていきたいと考えている。この防災コンソーシアムにつき、若干説明する。

4) 世界銀行の防災コンソーシアム

2000年2月3日、世界銀行の主導する防災コンソーシアムが正式に設立された。しかしながら、具体的な活動、特に諸提案に対応する資金その他の体制面の整備はこれからの課題であり、現時点ではなお正式のプロポーザルは受けられない状況にある。
しかし、予備的なアイデア又は提案については、「これを正式提案を受け付けるため検討する可能性はある」(世界銀行)ので、上記のプロポーザルについても、可能な限り防災コンソーシアムに連絡し、協力を求めていく方向で対応したいと考えている。なお、仮のものであるが、提案書式については、次のとおり、世界銀行からの連絡を受けている。

 

世界銀行・防災コンソーシアム

プロジェクトに関する予備的提案の書式(案)

 

プロジェクト名:                              

 背景:(提案理由、問題点、課題等)                                       

                                                             

                                                             

 対応分野:(対象となる災害リスク、災害リスクの軽減方法、リスク負担等)

                                                           

                                                           

 プロジェクトの目的:

                                                             

                                                            

 防災コンソーシアムによる資金協力の必要性:

(他の機関による支援の可能性に言及)

                                                           

                                                           

 活動内容:(ワークショップ、研究等)

                                                             

                                                             

 実施計画:(開始時期、期間、参加者等)                             

                                                             

 評価手段:(プロジェクトモニタリング等)                                

                                                              

関係機関・組織との協力/人的能力開発の可能性:

(開発途上国の相手機関、当該国における災害リスク管理能力強化等)

                                                             

                                                              

予算規模:                                 

  

                                 

今後、アジア防災センターでの調査検討を経て、必要な手続を行っていきたいと考えている。このような活動を通じて、アジア防災センターのメンバー各国の防災体制及び防災対策を少しでも強化するように必要な協力を進めていきたいと考える。

 

(関連資料)世界銀行・防災コンソーシアム設置

「防げる被害」を軽減
−開発途上国にとって不可欠の防災対策−

ワシントン、2000年2月2日――途上国を襲う災害の犠牲者と経済的損失を少しでも軽減しようと、このほど、世界銀行、国連、国際機関、民間保険会社、大学、非政府機関が手を結んだ、国際的なパートナーシップ「防災コンソーシアム (ProVention Consortium)」が、明日からスタートする。

このパートナーシップの目的は 、地震やハリケーン、洪水などの災害に、より効果的に取り組めるような「体制」を途上国に整えさせて、こうした災害の犠牲者や被害を軽減しようというものである。

1998年には、災害による死者が5万人を超え、インフラや家屋の倒壊など被害総額も650億ドルに及んだ。災害に関連した死者のおよそ95%は途上国の国民で、極貧層の人々が最大の犠牲者となっている。世銀は、過去20年間に災害後の復興支援として190億ドル以上もの資金を貸し付けてきた。度重なる災害で貸付を数回受けた国も多い。

「国際社会は、あまりにも長期にわたって、災害の事後処理にあれこれと対応するだけにとどまってきましたが、この防災コンソーシアムは、途上国が災害を予知し、万一それが自国を襲ったときでも、犠牲者の数を減らし、建造物の倒壊や道路などの分断による被害を少しでもなくすことができるよう、途上国を支援するもの」と語るのは、ジェームズ・D・ウォルフェンソン世銀総裁。
「今や、多くの途上国で、河川流域の森林伐採が進み、不備だらけの建設工事が横行し、安全とは言いがたい場所に居住地が次々と建設される中で、途上国の貧しい国民が災害の犠牲者となる危険性があまりにも高いといえます。このコンソーシアムはこうした傾向を打開しようというものです」。

防災コンソーシアムの主な目的は以下のとおりである。
・ 安全性の普及:政府やコミュニティーの間で災害に関連したリスクについての認識を高め、効果的な防災対策の策定につなげる。
・ 途上国を襲う天災や技術的要因によって生ずる災害のリスク軽減に役立つ公共政策の支援:その例として、開発計画の中に防災・被害緩和のメカニズムを導入することや、建築法規の改善、土地利用や非常対策に携わる関係省庁の効果的管理などが挙げられる。
・ 早期警報システムや国民防衛対策を通じて、災害を予知し、万一それが到来した場合でも効果的に対応できる能力を各国政府の身に付けさせる。

「このコンソーシアムは、死者が出る前にそれを未然に防ぎ、事後処理から準備体制の確立へ、救済からリスクの軽減と移転の戦略実施へと切り替えることを旨としています」と語るのは、世銀の災害対策ファシリティの責任者であり、同コンソーシアムの主要企画者でもあるアルシラ・クリ―マー。「これからも災害は起こるのですが、防災対策や緩和策を慎重に講じたならば、最近の災害のように多数の死傷者や多額の損失を出さずに済みます」。

同コンソーシアムを貫く原則として以下の3点が挙げられる。
・ 貧困と被害を受ける危険性とは密接な関係にある。 貧困者は特に災害の犠牲者となる危険性にさらされているため、これらの人々に対する防護策を講ずる最初のステップとして、同コンソーシアムは、貧困と災害を結ぶリンクについて調査する。
・ 環境保護がカギ。同コンソーシアムは、ハリケーンや台風といった天候に関連した災害から人々の住居を守ってくれる森林、沿岸地帯のマングローブ、サンゴ礁といった天然資源の保護に力を入れる。
・ リスクの共有は可能。 途上国のほとんどの国民は災害保険をかけることができないため、同コンソーシアムは、災害リスクを幅広い層に分散して、一人一人のリスクを減らすことができるような保険やセーフティーネットなどの防護メカニズムを低所得者層にもたらす方策を模索する。

同コンソーシアムは、最近世銀が貸し出した5億500万ドルのトルコ向け復興資金のような"最善の慣行"例を奨励してゆく。このトルコ向け貸付には、建築法規の更新や施行に関する対策が盛り込まれている。昨年8月、トルコのマルマラを襲った地震で多数の犠牲者を出したのは、ずさんな建設が原因といえる。復興プログラムのなかには、土地利用計画の改善、住宅保険の義務付けなどが盛り込まれている。また非常対策の管理内容も改善されることになっている。

こうしたトルコのリスク削減対策は他の途上国でも採用されている。
例えば、1980年以来、災害による犠牲者1万人、総額65億ドルに及ぶ被害を出したメキシコでは、同国政府が世銀の協力を得て、災害に対する準備体制にテコ入れをして、被害を軽減できる方策を講じている。その中には、同国政府の災害基金(FONDEN)に対する支援をはじめ、災害の復興資金を賄うのにいちいち政府予算から拠出せずに済むよう、民間セクターに資金を出して、災害リスクを同セクターに移転する作業などが含まれている。

中米では、世銀と、米州開発銀行、日本政府が、災害リスクの評価、非常警報・対応システムの導入、建築法規の改善と施行に加え、災害による被害を軽減できる環境対策の特定に向けた調査の実施において、6ヵ国の政府を支援している。一方、ニカラグアでは、世銀の支援を得て、雨量を指標とした作物保険の派生商品(デリバティブ)を開発し、民間資本市場で販売することによって、農夫が災害による損失から身を守れるようにする作業が進んでいる。

またカリブ海諸国では、電力システムや道路などの重要なサービスを保護し、非常対策の管理内容を改善し、災害に関連したリスクの共有に民間保険会社を関与させる業務を世銀が支援している。

リスク管理をもっと効果的に行いたいという関心が、災害を受けやすい諸国の間で高まっている折、このまたとない好機を現実のものとするには、保険業界の積極的な関与が不可欠となる。

さらに地域の組織や団体も、リスクの軽減に大きな役割を担う。例えば、1998年にインドのマハラシュトラを襲った地震では、村落レベルの委員会が復興プログラムで中心的な役割を果たした。
「このような強力な連合体制のもとで、政策担当者や科学者のコミュニティー、国際機関とそれに協力する国家機関、援助供与者、被害者が一体となって力を合わせるのです」と語るのは、同コンソーシアムの主要メンバーである国際赤十字・赤新月社連盟のピーター・ウォーカー災害政策担当ディレクター。「こうした幅広い参加が得られればこそ、災害とその対策に用いられてきた従来のアプローチから脱却できるチャンスが生まれるのです」。

同コンソーシアムに参加する世銀パートナーの中には、米州保健機構、国連開発計画(UNDP)、国際赤十字・赤新月社連盟、国連人道問題調整事務所、世界気象機関,国連環境計画、世界自然保護連合(IUCN)、米州開発銀行、アジア開発銀行、アフリカ開発銀行、米連邦緊急事態管理庁(FEMA)、米州機構、日本政府国土庁および建設省、国際応用システム分析研究所,ノルウェー政府、セント・ルシア政府、メキシコ政府、トルコ政府、ペンシルベニア大学ウォートン・スクール、バージニア・ポリテクニック・インスティチュートおよびバージニア州立大学(バージニア・テック)、連邦技術研究所などが含まれる。

※ 防災コンソーシアムと世銀の災害救済作業についての一般的な情報は災害対策ファシリティのウエブページ(英語版http://www.worldbank.org/dmf)を参照。