3 防災情報の収集と提供

3−5 人材情報

3−5−1 人材情報の目的

 アジア防災センターでは、かねてよりアジアをはじめ世界各国の災害に関する人材情報を把握することが、防災対策において重要であると考えていた。それは、たとえば、ある国での災害発生時にどのような行政機関や専門家などに連絡・助言を求めればよいかを知ることによって対応のスピードが変わるからである。またアジア地域は、世界中で災害がもっとも多く発生する地域であるため、アジアを中心とする人材情報の存在が災害に関するその地域の交流に役に立つに違いない。このような人材情報が一般に公開されてこそ、広く他分野との交流も深められる。
防災においては、他の分野と異なり、優れた知識や技術を持つ研究者だけが、エキスパートとして認められるものではない。これらの研究者、それらの知識・技術を基に政策を決定する行政の防災担当者、決定された政策を基に行動をとり、また意見を行政サイドにフィードバックさせていく市民の3者が密接なネットワークを作り、情報の交流が円滑に進んでこそ真の防災対策が存在する。そこで、人材情報については、高度な知識や技術を持つ研究者という狭義のエキスパートではなく、より広く防災に従事するもの、ということで人材情報の提供をよびかけている。具体的には、学識経験者、防災の研究者・技術者、行政の防災担当者、防災を主な業務とするNGOのエキスパート、防災関連の国際機関の担当者などを想定し、情報提供を呼びかけている。
情報提供に関しては、一部の個人情報を除く全ての情報を公開し、誰でも参照可能な形で提供を行っている。ただし、集められた情報をそのまま提供しても、ユーザーのニーズに合致した情報以外の無駄な情報の流れが多くなるため、国別、専門分野別に検索機能を設け、よりニーズに近い形でユーザーが情報収集を行えるよう配慮した。

 

3−5−2 収集・提供された情報

表3-5-2-1に示すように、現在58カ国1,391人の情報を収集することができた。これらのうち、アジア防災センターメンバー国の人数は1,298人である。これらの情報はすべてアジア防災センター内のデータベース上で管理され、ユーザーのリクエストに応じて情報の提供を行っている。ユーザーのリクエスト方法は、

(1) 全データの一覧の取得

(2) 国名、研究分野、氏名による検索結果の一覧の取得

の二通りで、これらにより選られたリストを閲覧し、ニーズに合致した人材情報をさらに選択することで、その人材の全ての情報(公開対象となっていない項目は除く)を入手することができる。

表3-5-2-2に、人材情報データベースの専門分野による検索機能を用いて、災害名を基にキーワード検索を行った結果を示す。

表3-5-2-1 収集された人材情報の国別一覧
                   M:メンバー国,A:アドバイザー国

 

表3-5-2-2 災害名による検索結果

Disaster

Number

Typhoon

1

Cyclone

17

Hurricane

0

Tsunami

3

Tidal Wave

0

Landslide

1

Flood

66

Drought

20

Earthquake

101

Volcanic Eruption

36

Forest Fire

4

 

図3-5-2-1で示したように、人材情報ネットワークで収集している人材情報は、国・地域によって大きな偏りがある。これは、それらの国・地域にエキスパートが少ないためではなく、アジア防災センターの初年度の調査地域選定によるものである。

図3-5-2-1 データ数国のベスト6                図3-5-2-2 メール有りの割合





 人材情報ネットワークで収集している人材の6割以上がメールをもっている(図 3-5-2-2)。これらの人材に対しては、情報提供や連絡調整などが電子メールでも可能である。また、性別の割合については図3-5-2-3で示したように女性の登録も22%あり、今後ますます増えることが予想される。さらに図3-5-2-4で示したように博士、修士と学士の割合はほぼ同じく30%前後である。なお、本データベースは、高等教育を終了した人材だけを対象とはしていない。

図3-5-2-3 性別による割合                   図3-5-2-4 学歴による割合






3−5−3 今後の展開

 アジア防災センターは、今後まったく新しいデータベースを目指している。それはアジア防災センター・エクスパート・ネットワーク(ADRC Expert Network)であり、ADRC E-Netと略称する。今までの人材情報ネットワークと異なるものが以下のように明記できる。

1) データベースの内容がより細かくなる

人材情報の収集と提供の方針に基づき、収集する情報の項目は以下のとおりである。

  敬称、氏名、生年月日、性別
1)勤務情報 勤務先名、勤務先住所、勤務先国名、勤務先職位、職種、
勤務先電話番号、勤務先FAX番号、勤務先電子メールアドレス、
勤務先ホームページアドレス
2)個人情報 推薦されているホームページアドレス、最高学位、最高学位名、
最終学歴、卒業年次、言語能力、勤務経験(国内)、
勤務経験(国際)、研究分野、発表論文、その他


  このうち、生年月日、性別、最終学歴、卒業年次、発表論文、その他を除く項目が、オープンにされている。

2) データベースの操作がより簡単になる

 データベースの操作がどこの国からでも可能なシステムを選択し開発を行う。データベースシステム上に入力された1人分の公開可能なデータのサンプルを図 3-5-3-1に示す。

3) メンバーをより拡大する

 平成12年度ではインドネシア、ベトナム、ネパール、スリランカとバングラデッシュの国々を中心とするデータの拡大を行う。また数だでなく拡充策も考慮する。

4) 各国における端末の設置

  試験的にいくつかのメンバー国に端末を設置する。それにより、その国からの最新の災害情報などを迅速に把握可能な状態にする。端末管理責任者は行政機関または民間に委託する。

5) メンバーの活動を積極化にする

 各メンバー同士で防災に関する交流を目指すためにメーリングリストを作成する。これによってメンバー同士で研修、情報交換、データ交換なども可能になる。またそれを使い定期的に情報を提供することが可能となる。

 

図3-5-3-1データベースの一覧の例