3 防災情報の収集と提供

3−3 災害対策事例

 過去において発生した災害に際して、被災国をはじめ国際社会がどのような対応を行ったかを知ることは、今後の防災対策を強化していく上で非常に重要な情報となる。
 前年度は、インターネット上に存在する災害対策事例の抽出、阪神・淡路大震災における対策事例を収集したが、今年度は、1999年に発生したトルコ、台湾地震に際しての対策事例、並びにアジア防災センターに赴任した大韓民国、ベトナム、ネパール、インドネシアの各研究員から各国の特徴的な災害に際しての対策事例をとりまとめた。

3−3−1 トルコ大地震発生後の対策について

1) 地震の概要
(1) 発生日時 :1999年8月17日3時1分(現地時間)
(2) 規 模 :マグニチュード7.4
(3) 死 者 数:15,135人
(4) 行方不明者数:不明
(5) 負傷者数 :約24,000人(病院で治療を受けた者の数)
(6) 全壊家屋数:約24,000
(7) 半壊家屋数:約64,000

2) 地震防災対策の制度
(1) 地震防災活動の歴史と実績
 トルコ共和国は、オスマン帝国時代1509年のイスタンブール大震災後の被害調査、復興過程に発せられたスルタンの布令以来、地震等の自然災害には国家が補償する制度がある。
トルコの防災政策は、災害総局(General Directorate of Disaster Affairs: GDDA)を中心に組織化されている。ここは、トルコの防災政策の立案から担当者の教育訓練までの幅広い分野を統括している。災害対策の実施に当たっては、GDDAを中心に公共事業住宅省、市長、軍、赤新月社が協力する。 GDDAは、地震研究、緊急輸送、災害調査と被害把握、計画と法律管理、応急住宅、プレハブ住宅生産と建設、災害基金管理と供給の各部を持っている。災害復旧の経費はほとんどが国家予算でまかなわれるが、災害基金がGDDAによって運営されており、さまざまなルートから資金が手当てされている。毎年一定額が国家予算から基金に組み入れられている。昨年のGDDAの予算は、約3500万ドル、人員は1000名である。GDDAは、このほか、地震のゾーニングマップと耐震基準の作成と改定、地震観測、地震被害低減に関する国際協力なども担当している。

(2) 行政組織

図3-3-1-1トルコの防災体制

トルコは、内務省派遣の県知事と公選の市長が同じ行政区を担当している。県、市下図の組織で防災関連の対応にあたる。

 

図3-3-1-2 地方行政単位の防災組織

市は、日常の都市開発業務を担当するほか、消防等の災害対策部署も所管している。

 

図3-3-1-3 市の組織

3) 政府(中央及び地方)の対応実績
(1) 応急対策
災害復興法に規定された応急対策と所管部署は、下記の通りである。
@ 救援組織と計画の策定(内務省等関係各省と共同)ただし、下記の事項を含む
・ 救助計画
・ 負傷者の手当て
・ 仮設住宅
・ 消火
・ 瓦礫撤去
・ 食料配給
 所管:災害総局、内務省、厚生省、農業省、森林地方省
A 緊急対策の実施
   ・救援計画(@)の実施
・課役、車両の徴発等
・軍への要請
所管:県知事
B 緊急被災度判定
所管:公共事業住宅省

緊急被災度判定以外の全ての応急対策は、中央が計画し県知事が実施すると定められている。なお、軍の部隊は、県知事の要請で軍中枢の指令なくとも動けると規定されている(災害復興法 第7〜11条)。
救援計画の策定等には、各省の参加が必要であるがこれまでは、首相直属の救援委員会がコーディネーターを努めた。今回の地震での政府の対応は以下のとおりである。

<政府の対応>

地震発生当日(17日)
危機管理センターを首相府に設置し、軍、赤新月社、民間ボランティアによる全ての救援活動を看視した。
18日
危機管理センターを被災した全ての県庁に設置した。
19日
政府は、市民防衛隊、赤新月社に加え多数の部隊を救援に動員した。
22日
以下の人事と措置を発表した。国務大臣のジェミジをイズミットの危機管理センター長に、教育大臣のボスタンジオールをアダパザルの危機管理センター長に、労働大臣のオキュイアンをヤロワの危機管理センター長に任命した。
全ての公的、民間施設、所有物(機材、物資等)を救援に徴用する
全ての公的、民間宿泊施設を被災者の収容に充てるこのため県知事は全ての宿泊施設を22日夕刻までに空にすること。
23日
23日から観光船等を被災民の輸送に用いる。
軍はマルマラ地方の全てのキャンプを被災民に開放する。
赤新月社に救援物資の受け取りと配給を委託した。
危機管理センターに以下の2つの委員会を設置した
・ 再建大臣アイドゥンの指揮する被災者の仮住居対応委員会
・ 長期的な復興に関する委員会(災害総局が準備)
24日
首相府の発表によれば、被災地への道路、アンカラ−イスタンブール間の鉄道が完全復旧した。
トルコ空軍が、被災地(ヤロワ、コジャエリ、サカリヤ)からイスタンブールのアタチュルク空港間の空輸サービスを開始する。このほか、ヤロワとジェンギズ トペルにある軍用空港からの空輸が計画中。
再建大臣アイドゥンは、30,000戸の仮設住宅建設を計画、まず第一段階として冬までに15,000戸を建設すると発表。
25日
首相代理バフチェリは、住宅開発局によって現在建設中の住宅15,000戸を一ヶ月先に完成させ、被災者に供給すると発表。
26日
首相府危機管理センターは、テント村、トルコ国有鉄道車両71両、仮設住宅(ギョクチェ島、チャナッカレ)150軒の増設、保健省所属のトレーニングセンター(イズミール県)を被災者に公開することを決定した。
住宅開発行政担当の国務大臣サディ・ソムンジュオウルは、被災地7都道府県で現在建設中の住宅を1―2ヶ月以内に完成させるために、国家援助を交渉中と発表。
住宅ストック4500戸の被災者提供を発表。
27日
政府は、12ヶ月以内に100,000〜120,000戸の住宅建設の計画を発表。
森林地方省は、被災地は建設機械1931機、機械取扱者3295人を派遣した。
テント村にいる被災者に現状伝達するため、無線通信システムを設置した。
発電、送電問題は、大部分が復旧したが、水道システムの工事は継続されている。
29日
国連へ仮設住宅提供の経験を持つアンカラの仮設住宅建設会社(テペ建設会社、総部長:セルチュク・アルタン)は、3ヶ月以内に仮設住宅60,000戸を建設できると発表。仮設住宅のコストは、uあたり120〜130USドル。
首相府危機管理センターは、トルコ軍隊が瓦礫下から40,646人を救助したと発表した。
30日
再建大臣アイドゥンは、仮設住宅問題で政府との合意を発表した。
被災地ヤロワに170台、アダパザルに248台、コジャエリに2020台、ボルに30台の無料公衆電話を設置。

<危機管理センター>
危機管理センターは、被災民と被災地を救助するための緊急決定、調整、実施を行う。

メンバー
@ センター長:オェズギュン・オェクメン(首相府、政務次官代理)
A 国家安全総事務局
B 内務省
C 外務省(ミュミン・アラナト、義援金担当:テイフィキ・オクヤユズ、責任者:ファズル・チョルマン、第一秘書:セルハン・イイト)
D 公共事業住宅省
E 国家安全評議会
F 陸軍司令部
G 地方総局
H 災害総局
I 赤新月社(トルコ赤十字)理事会

センター長、オェクメンの説明によれば、危機管理センターは、関係諸組織のコーディネイトを一定の期間(短期間)行う。上記メンバーの他に、TUBITAK(会長代理:トゥルル・タンクト教授)、国庫政務次官(対外経済関係総局・世銀プロジェクト部長ジャレ・アクタシュ)、公共事業設立省(Ministry of Public Works and Establishment)が危機管理センターの業務に協力している。ほとんどの省庁内には、独自の危機管理センターが設けられている。
SPOの主要業務は、被災地の復興計画を中・長期的に行うことである。この報告書は、経済部門調整総局(General Directorate of Economical Sectors and Coordination, 総局長代理ラティフ・トゥナ)、地域開発・組織調整総局(General Directorate of Regional Development and Structural Adjustment, 総局長:イスマイル・サルジャ)によって作成される。

<被災民>

赤新月社 海外援助 一般企業 テント合計 テント村の数
サカリヤ 9,846 600 12,539 2,524 25,509 39
コジャエリ 8,784 400 24,573 2,942 36,699 27
ヤロワ 8,800 230 4,608 1,704 15,342 19
ギョルジュク 5,357 355 7,673 750 14,135 22
ボル 3,730 4,996 8,726 44
イスタンブール 963 20 50 1,033 5
総合計 37,480 1,605 54,389 7,970 101,444 156

 

コジャエリ県知事オウズは、イズミトでは既にテント村が51村設立されたが、まだ50,000基のテントが不足していると発表。さらに冬用テントの迅速な設置の必要性を訴えた。

<瓦礫処理>
イズミト湾の汚染は、石油精製会社から流出した石油、燃料油に加え、投棄された瓦礫で非常に深刻な状態である。
イスタンブールのアヴジュラル地区、ブユクチェキメジェ地区を視察したOCHAチームによれば、8月28日時点で瓦礫処理は既に終了しており、普段の生活が戻っている。
当局の声明によれば、瓦礫の海、川への投棄は禁じられた。政府は、瓦礫処理策を必要としている。

<緊急被災度判定>
緊急被災度判定は、公共事業住宅省の管轄であり、地震後直ちに着手された。地震後1〜3週間で一次診断を実施し、大破(緊急に要取り壊し、立ち入り厳禁)、中破(要構造的補強、立ち入り制限)、軽微(構造被害なし、立ち入り可)に分けられる。調査は棟別ではなく、世帯及び事業所単位で行われ、その後の一時金の支給、仮住まいの家賃、建替え、補強の実施または費用の低利貸付の台帳となる。一次診断結果は、直ちに公表され世帯主等は不服を申し立て、詳細調査を申請することが出来る。過去の地震では、全壊個数が地震発生後数週間すると2倍にふくれあがるなど一時金等の取得をねらって世帯主が役所に圧力をかけた例が多かった。今回は、被害が大量に発生したため、係員一人当たり500〜1000世帯を受け持った結果、世帯主の被害申告を単純に受け入れて集計し中央に報告したとの見方もある。また、診断係員が業務上のストレスから自殺した例も報告されている。
9月16日時点で、大破と中破を合わせると、13万世帯に上る。これに対して、テントは、赤新月社40680、軍2122、海外援助54841、民間援助7970で合計約10万5千張りになる。

(2) 復旧・復興対策
 災害復興法に規定された復旧・復興対策と所管部署は、下記の通りであり実施は、全て公共事業住宅省の所管である。

@ 町の移転計画
  所管:公共事業住宅省、内務省、厚生省、農業省、森林地方省、財務省、教育省、
     工業通商省
A 町の移転の実施
B 仮設恒久住宅の建設
C 資機材の調達
D 資金の調達
当初、アダパザルの中心市街を8km南の丘陵地に移転する計画があると発表された現在まで具体化されていない。
復旧復興に関する資金需要はSPOから、「総国庫負担62億ドル、内、35億ドルが仮設住宅建設並びに恒久住宅建設及び住居家屋の修繕費用に支出される。」と発表された。世界銀行等とトルコ政府の間で、総額17億ドル余りの復旧・復興借款が合意され12月中旬から実施される。

 

3−3−2 台湾大地震地震発生後の対策について

1) 当局の対応
 台湾では災害対応の主体は中央当局であることから、震災後の組織や計画等も中央当局が作成、実行する中央集権型となっている。この点、兵庫県・神戸市等が主体となり国が支援する形を取った日本のシステムとは異なっている。

2) 応急対応関係
(1) 情報・広報活動
 情報の収集面では、山間部被害状況の把握が遅れた。一部孤立集落への救援・救助活動が数日間置き去りにされる事態が生じた。
情報の発信・広報活動面では、即座の対応、積極的な情報開示及び手段の多様化が見られた。地震発生直後の9月25日に19項目からなる被災者向けに慰問金の支給等の緊急救済措置一覧表を作成した。この中には、死亡者や家屋の全壊者に対する慰問金の支給額や、住宅資金の融資なども含まれるなど、迅速な対応が注目される。
 また、台湾では従来より若い世代を中心にインターネットが普及していることから、当局がホームページによる施策の広報を実施している。行政院のホームページには、九二一大地震のページがあり、関係省庁ごとのページや、震災後の状況をその都度更新している。

(2) 緊急輸送のための交通の確保・緊急輸送活動
 発生数日間は交通に混乱をきたした。活断層等の影響もあり、南投県、台中県をはじめとする被災地で道路の隆起や陥没、あるいは道路、橋の寸断等が起こっている。なお、道路が遮断された山間部等の孤立した地域に対しては、軍がヘリコプターを活用して救援物資の空中投下や負傷者の搬送を行った。

(3) 救助・救急活動
 救援・救助活動は、軍の活動に加えて、消防署及び警察が特別救助チームを結成して作業にあたったほか、民間のボランティア団体や各国から派遣されたレスキュー隊(国連人道問題調整事務所の調査では、約670名からなる17カ国20の救援・救助チームに及んだ)も合流し、懸命な作業が行われた。
中央・地方両当局及び民間ボランティア団体とも、地震発生後1時間以内に災害対策本部を設置した。
 現地の災害対策本部(災害救助センター)には、中央の前進指揮所や地方の災害対策本部、さらには警察、消防、軍、民間ボランティア団体などが一緒に入り込み、救援・救助、物資の配給、食糧の炊き出し、各種相談等を実施した。  

(4) 食糧、飲料水及び生活必需品等の調達、供給及び物価安定に関する活動
 地震発生3日後を前後して、軍、ボランティア団体を中心に食糧、飲料水及び生活必需品等が調達された結果、量的な不足は解消されていった。一方で、一部の被災地では大量の医薬品が届いたのに飲料水や食糧品が依然欠乏状態にあったり、別の被災地では飲料水や食料品の不足が解決したものの、医療品やテント等の欠乏が続くなど、物資分配での不均等な問題が発生した。次々と到着する物資が学校の体育館などに無造作に物資が山積みされるなど、効率の良い仕分けに問題点を残した。
 物価面では、公正取引委員会が、人為的な物価の引き上げ及び重要な国民生活物資の買い占めを禁止するとともに、被災地での調査や検挙のための専用電話を設けるなど、取り締まりを強化した。

(5) 応急収容(避難所の提供)
 最高で38万人近くもの被災者がホームレスとなり、大半は学校の校庭や公園、軍の敷地等でテント暮らしをした。余震による建物の倒壊を恐れる被災者が昼間は自宅で過ごし、夜間は自宅近くのテントで過ごすケースが多かったことから、実際の家屋の全壊、半壊に伴う被災者数以上にテント暮らしが増えた。
 臨時収容所は、大きな仮設テントにボランティアの支援所、食事配給所、発電器等があり、周囲に被災者用のアウトドア用テントや仮設トイレが配置されているケースが多い。

(6) ライフライン施設の応急対策活動
 電力では、台湾の生命線ともいえる南北を結ぶ超高圧電線が、被災地南投県の中寮での変電所の倒壊や、200箇所にも及ぶ給電システムの故障により、断絶状態となった。被災地のみならず、首都台北及び有数のハイテク工業地域である新竹科学工業園区などにまで影響を及ぼした。
 給電制限措置については、生活向けよりもハイテク産業の停滞への影響を優先的に考慮し、@まず一日千キロワット以上使用の超高圧専用回線の工業電力使用者への給電を確保し、Aそれから高圧、低圧工業電力使用者への制限を解除、Bさらに民間向けの電力使用者への制限を解除することとした。この結果、10月5日には工業用向けの電力供給制限を解除したのに続き、10月9日にはすべての電力供給制限を解除させた。
 水の確保については、活断層の隆起による給水ダムの損壊を受けたことなどに伴い、28万世帯が断水したが、外部からの水の確保や地下水の汲み上げ、水道管補修等により、10月中旬に通常レベルの給水を確保できることとなった。
 なお、被災者対策として、次の便宜を図ることとした。

電話、電力、ガス等の支払期限を延長することとした。
6ヶ月分の電話基本料金を免除し、国内通話料金を一律半額とした。損壊した電話機の弁償は免除し、新規取り付けを無償とした。
被災地に無料電話を設置し、被災者が使用可能とした。
国内各地から被災地への電話は一律半額とした。

(7) 保健衛生、防疫、遺体の処理等に関する活動
 避難所を中心に、瓦礫処理の粉塵からくる呼吸器の症状、トイレなどの衛生施設の不足からくる下痢の症状、不十分なゴミの処理、さらには飲食をめぐる食中毒等の衛生管理の問題が報告された。
 遺体の処理は特に山間部では、救助活動の遅れや収容場所の不足等から、大多数の倒壊家屋の中に閉じこめられたままとなったり、あるいは連日の高温の中、路上に放置されたままの状態が続き、一部集落に異臭が漂う事態が発生した。  

(8) 家屋の応急危険度判定及び被害認定
 応急危険度判定は2段階に分けて実施された。第1次段階では、専門技師による目視で"安全"、"要注意"、"危険"に分類した。このうち"危険"と診断されたものについては、第2次段階で改めて審査し、"安全"、"要注意"、"危険"を再認定した。その結果、(A)完全に修復不可能、(B)修復できるが費用が再建費用の75%以上となる、(C) 修復できるが費用が再建費用の50%以上となる、に分類し、(A)を全壊、(B)(C)を半壊という目安を定めた。
 しかし、実際の被害認定は建物応急危険度判定とは別個のものとして、専門的知識を有していない里長、村長(日本の自治会長に相当する)に委ねた。全壊の場合は20万元、半壊の場合は10万元支給される一方で、全壊だと解体しなければならないことから、認定申請の段階で悩む申請者が多かった。里長・村長はこういった被災者の意向を無視することができず、認定に対する信憑性に疑問が生じた。

(9) ゴミや瓦礫の処理
 建物の解体作業及び瓦礫の処理は、総統緊急命令により、土地の用途に関わらず廃棄場所を選定するとともに、軍の支援を決定した。4階以下の建物は軍が、5階以上の建物は地方政府が専門業者を使って解体することとした。鉄筋や建材等再生可能なものは、選別により高速道路の建設に再利用するとともに、山間部の谷間は永久封鎖し、河川敷では公園や堤防の整備等に活用することとした。
 また、一般廃棄物の処理量は9万6千トン余りで、軍を中心に約1ヶ月で概ね処理を終えた。

(10) 二次災害の防止活動
 山間部では、山崩れや崖崩れ等の発生により集落ごと消滅した地域もある。広範囲に渡って山全体の森林がほぼ無くなったために治山計画を策定中であるが相当長期化することが予想される。台湾では旧正月以降から雨期が少しずつ始まり、五月には梅雨にはいることから、土砂崩れや土石流等の被害が懸念される。  

(11) ボランティア等自発的支援活動
 宗教系をはじめとする団体が、被災者の収容を中心に活動を展開した。なかには仏教団体「慈済功徳会」のように会員400万人以上を有し、台湾全土及び海外にネットワークを持ち、地震発生1時間後に被災地現場で救援活動を開始したものも多い(当局複数関係者聞き取り)。
 慈済功徳会では、中国大陸をはじめ、トルコ、ルワンダ、アゼルバイジャンなどの自然及び人的災害に救援活動を実施してきたほか、国内においては普段から奉仕活動や病院、学校の建設等を行っており、ボランティア団体として信者の枠を越え台湾社会に強く根付いている。このため、例えば、政府の骨髄バンク事業については、実際の活動を慈済功徳会に委託しているほどである(慈済功徳会資料4-2-11-1:仏教慈済基金会ご案内)。
 これらの団体は、政府の活動が本格化するとともに、拠点を未だ孤立した山間部に移動させるなど、政府の救援活動に対抗してというよりはむしろフォローするものとして、注目される。そもそも台湾では水害が多いことから、これらの団体は普段から組織的に活発な運動を展開しており、この点、震災直後に運動が活発になった日本のNGO活動よりも経験豊かなものが多い(当局複数関係者聞き取り)。

3) 復旧・復興活動等
(1) 生活復旧・復興
@ 慰問金
 死亡者は100万元、重傷者は20万元、また建物は全壊が20万元、半壊が10万元を支給することとした(参考:被災地の肉体労働者の平均的賃金は年間50万元程度)。

A 弱者対策
 身内を失った孤児や高齢者を支援するため、"扶助法"を成立させた。高齢者に毎月5000元、孤児に1700〜2000元を支給するが、「長青文教基金會」という慈善団体が資金提供先となっているのが、ユニークな点である。

B 被災地住民こころのケア
 日刊紙の世論調査によれば、約6割の回答者が心理面若しくは身体での不適応症状を訴えるなど、被災者の心のケアの問題が顕在化した。当局はもちろんのこと、軍や民間団体も心理的ケアを行うために、精神科医や心理カウンセラー等を被災地に派遣し、相談窓口を開設したり、巡回指導を実施したりした。

C 税金関係
 所得税、家屋税、営業税、地価税、貨物税、及び相続税の減免を認めるなど、被災者に配慮した積極的な減税措置を取った。

D 保険関係
 被災者を対象に、原住民にも配慮し、国民健康保険証の所持に関わらず自己負担額を来年3月まで6ヶ月間免除することとし、保険証所持有無に伴う混乱を防いだ。"921震災健保カード"を発行し、医療費、入院費の全額、その他一部の負担額を免除することとした。

E 就業対策
 無料職業訓練への参加を支援し職業を斡旋(訓練期間中は生活手当てを支給)したり、"職業訓練票(訓練所に優先的に入所できる)"及び"就業票(就業票の携帯者を雇用した企業は政府より1人つき5千元の奨励金を支給される)"を発行するなど、ブルーワーカーを中心に被災労働者の就業対策に積極的に取り組んでいる。また、震災後解雇あるいは減給された労働者に対し、労働者保険の継続加入に関する規定を6ヶ月間緩和することとした。  

F 教育対策
このたびの震災で619校が損壊を受け授業の継続が不可能となった(大学・短期大学・専門学校:33校、高等学校:20校、中学校・小学校:566校)。
 なお、被災学校に対しては、民間団体による建設も含めてプレハブ校舎を整備するなどして、休校の状態にあったものを含めて1,186の学校が概ね10月末までに授業を再開するに至った。
 児童・生徒に対しては、通常の慰問金とは別に、死亡や障害等に対し以下の慰問金を支給することとした。

死亡した学生一人に対し1万元、教育従事者の場合は3万元、障害の場合は一律5千元を支給する。
小中学校生の場合、死亡者、重傷者に対しては20万元、軽傷者は12万元、別途入院費最高5万元、通院費最高5千元を支給する。
 また、小中学生が被災地以外へ転校した場合は、食費として毎日100元、寮費として毎日200元支給した。さらに、被災地内での転校の場合は昼食費として40元支給することとした。
そのほか、全壊家屋の学生には学費や雑費等すべてを免除、また、半壊した家屋の学生は学費のみ免除することとしたり、被災高校受験生に対し、点数を加点することにより、優先的に入学できるよう便宜を図ることとした。

G 戸籍等の身分証明
 身分証明書の紛失に伴う各種手続きの遅滞を防ぐために、内政部では、戸籍事務所を被災地に設置するとともに、臨時の身分証明書発行により被災者の身元を証明(写真不要)できることとした。戸籍証明発行にかかる費用は不要とし、証明書無しでの移転登録の受付も実施した。

(2) 住宅復旧・復興
@ 仮設住宅の提供
 1月4日付け当局調査によれば、4651戸が完成し、4248戸が既に入居済みとなっている。当初は8.8坪の広さで建築を開始したものを、被災者の要望を受けて、12坪に変えるなど柔軟に対処している。間取りは寝室2間、厨房、客間、台所、浴室が一般的。仮設住宅の敷地内に集会所、図書室、医務室、スーパー、児童公園等を設置するなどコミュニティ形成に配慮している。

A 国民住宅の提供
 全壊、半壊の持ち家取得者を対象に、公示価格の7割で計5988戸の国民住宅を提供することとした。被災地に戸籍があり、実際に居住していた家屋が全壊若しくは半壊した被災者のうち、本人若しくは配偶者が他に家屋を所有していない者が対象となっている。
 貸付にあたっては、中央銀行からの緊急融資により、普通銀行において150万元以下は無利子、150万元を超えて350万元以下は年利3%、支払い期間は最長で20年とした。頭金10万元で購入を可能とした。  

B 家賃補助
 被災者1人あたり3千元の家賃補助(1家族最大4人まで)を1年間実施することとした。金額的に充分に賃貸できることから、多くの申し込みが生じた。

C 被災した家屋の住宅ローン
 元金の返済期間を5年間延長(今後5年間は支払い免除)で、利子率を4%下げる、さらに利子の支払いを6ヶ月間猶予することとした。

D 労働者向け住宅対策
 ブルーカラー向け住宅対策として、被災地にある大手企業より労働者向け住宅の土地の提供を受け、一坪当たり建築費6万元で労働者に安価な住宅を提供することとした。そのための"労働者向け住宅購入貸付金"として、220万元を上限に年利5.075%で貸付を実施することとした。また、"労働者向け住宅修繕貸付金"として、50万元を上限に年利5.075%で貸付も実施した。

E 民間住宅の動向
 以前より空き室が多かったことから、民間分譲マンションが、市場価格の2割引きで売り出しを始めた。賃貸マンションも2割程度の安価となった。

(3) インフラ復旧・復興
 電力に関しては南北の送電線がたたれ、台北及びハイテク工業地帯が影響を受けた点を教訓に、南北に結ぶ第3の超高圧送電ケーブルの敷設及び発電所の建設工事を総統緊急命令執行要点に基づいて早急に実施することとした。
 給水に関しては、活断層の隆起により破損した石岡ダムの復旧に取り組むこととしている。

(4) 産業復旧・復興
 被災地山間部は、台湾有数の観光地であったことから観光産業をはじめ、紹興酒等の中小の地場・伝統産業、さらに農業が壊滅的被害を受けた。
 このため、観光業では6千万元、年率3%の低利融資貸付優遇措置を実施したり、商工業では金融機関への元金の支払いを6ヶ月間延長する措置を実施したりしている。商工業集積地域の構築や量販店の開発、マーケティング手法による観光及び伝統産業の再興等も検討中である。
 また、農業では、流失、埋没した田畑に対して、0.05ha以上の田畑流失の場合、1haにつき10万元、埋没の場合は1haにつき5万元助成することとした。さらに、農業、林業、漁業及び牧畜業に対し最高300万元、年率3%の産業低利融資を設けたりした。

4) 復興計画の策定(当局資料4−4:災後重建計畫工作綱領及び当局複数関係者聞き取り)
(1) 全体の概要
@ 計画目標・基本原則

A 準備作業

耐震設計基準の強化
地質と災害状況の調査
土地の基本的測量
建設禁止地域の設定と公告
人材並びに被災情報に関する資料室の設置

B 全体の再建計画

公共建設計画
産業再建計画
生活再建計画
地域再建計画

C 必要な施策

特別法の制定と既存法令の修正
救済、防災システム体制の強化
資金の調達
公共事業の土地の処理
地籍の測量
人材の提供

(2) 耐震性の強化
 水平加速度係数を0.25から0.33に強化することにより、米国や日本並に震度7クラスに耐えうるよう検討していくこととした。公共建築物については耐震設計基準を遵守するよう工事コンサルト会社の検査を受けさせることとしたほか、採購法(調達法)により安易に安価な建築資材を購入しないよう小売価格による購入を定めることとした。

(3) 公共建設計画について
 学校再建については、校舎の損壊が手抜き工事によるものとの疑いがあることから、安価な建材の使用や工事状況を検査する体制を強化しようとしている。
 また、公共建設再建にかかる政府負担を考慮して、交通インフラや廃棄物処理施設、学校等の建設等に関してBOTやBT方式等による民間参入を奨励している。

(4) 産業再建計画・生活再建計画について
 産業再建計画については、郡部・山間部の農業、紹興酒等の地場産業及び観光産業の復興を対象にしている。
 生活再建計画については、こころのケアを中心に民間ボランティア団体の参入を奨励している。

(5) 地域再建計画
 地域再建計画については、他の3計画が中央当局主導によるものなのに対し、地方当局主導とし、民間の参入、中央当局の支援のもとに執行することとした。計画段階から学識経験者に加えて住民の参画を求めるなど、台湾ではこれまでになかった手法を検討している。

@ 建築禁止制限のない地域の都市計画等の実施
 原則として、再建手続きの簡素化、低利融資、容積率の緩和等により、再建を積極的に支援している。

A 集落が滅失した山間部集落の再建
 主に原住民の居住する山間部奥地では、集落ごと滅失した集落が20近くある。これに対しては、集落の再建あるいは集落の移住という措置をとることとした。

ア) 集落の再建
    第1段階:再建計画の作成(99.10.16〜99.12.15)
    第2段階:再建計画の実施(99.12.16〜01.12.31)
イ) 集落の移住
    第1段階:移住計画の作成(99.10.15〜99.12.15)
    第2段階:再建計画の実施(99.12.16〜01.12.31)

3−3−3 大韓民国の干ばつ対策と国際比較

3−3−3−1 序文

 昨今、世界各地で地震、洪水、干ばつなどの災害が頻発している。また、地球温暖化への対策も急務である。世界には総量14億立方キロメートルの水が存在しているが、それは海水と淡水の2つに分類され、前者は総水量の97.5%、後者は2.5%である。淡水の大部分は氷の状態で北極・南極にあるので、我々が使用できるのは世界の総水量のうちのわずか0.8%のみである。降水量は予測不可能なため、水は貯水池に確保されているが、貯水地の水量は制限されている。水の使用量が増加すると表層水の使用計数は次第に上昇する。世界のほとんどの地域が干ばつに対して脆弱であると言われており、その被害は世界的に深刻化し、国の国際競争力を弱めるまでになっている。それゆえ、被害を最小限にとどめるためには干ばつ対策が必要である。干ばつが発生すると、必要な水資源はすぐに確保できないため、干ばつの際の新たな水源を早急に確保しなければならない。干ばつ対策への本格的な投資と関心が求められている。

3−3−3−2 干ばつの分類

 干ばつに完全に打ち勝つことは困難である。1970年代、1980年代初めには北アフリカで干ばつにより多くの人々が餓死した。干ばつは国家の経済を困窮させ、自然環境システムを破壊する。干ばつを定義することは困難である。なぜなら干ばつの状態により様々な種類の基準があるからである。干ばつとは、水資源工学では、水路と貯水池の水量不足によるとされている。しかし水文工学では干ばつは降水量と流水量の不足とされている。
 一般的には、干ばつ状態は水の不足と需給のアンバランスと定義されるがここでの干ばつの定義は以下のとおりである。
「干ばつとは、相当な範囲における植物、動物、人間に悪影響を及ぼす水不足の状態である。」
 正確にいえば、干ばつは降雨現象や水の使用などにより以下のように様々な説明の仕方が可能である。
¨ 気象学的干ばつ:異常乾燥気象が深刻な水文のアンバランス引き起こすほどある地域で続くこと
¨ 気候学的干ばつ:年平均降水量が年間、月間の同期間と異なること
¨ 大気の干ばつ:気温、風、湿度による定義
¨ 農業的干ばつ:穀物生産や生息動物生産に悪影響を及ぼす降雨量の不足などの気候の変化
¨ 水文的干ばつ:河川、貯水池、帯水層、湖、土壌における平均以下の水量が一定期間継続すること。

図3-3-3-1 干ばつの概念図

 

様々な干ばつの現象は個別的、独立的には発生しない。気象学的干ばつが持続すれば、それは土壌水分の欠乏を引き起こす農業干ばつへとつながる。結果的に農業干ばつは水路の流水現象と貯水池水量減少により水文的干ばつと関係している。図1は気象学的干ばつと農業的干ばつと水文的干ばつの関係を説明している。

1) 気象学的干ばつ
 気象学的干ばつが持続すれば様々な分野に影響する。気象学的干ばつが大気の干ばつにつながれば湿度は徐々に低下するであろう。高い気温によって蒸発が加速され、土壌の乾燥で農業的干ばつがもたらされる。長期にわたる気象学的干ばつを予測することは極めて重要である。もし水文的干ばつが予知できれば、干ばつの対策をたてることが可能となるからである。

2) 農業的干ばつ
 気象学的干ばつから生じる農業的干ばつは、穀物の質の低下と産出量の減少につながる。たとえば、1995年には穀物への干ばつ対策に40億ドルが支出されていたにもかかわらず、穀物被害総額は50億ドルのにのぼった。これにより農業干ばつによる被害は総額90億ドルにのぼった。

3) 水文的干ばつ
 水文的干ばつは、集中地域において水の循環コースの流出シミュレーション・モデルにより指数表示することが可能である。生活用水、工業用水,水路の維持、干ばつの被害などに相当する金額から干ばつを査定することができる。干ばつの進行過程は、分水界の水文的反応がわかれば予測可能である。
 もし干ばつの進行過程が予測できれば、干ばつの頻度、将来的な水不足と被害、干ばつ予防のための必要降水量が推測可能となる。このような推測に基づいて、干ばつ速報を発表したり対策をたてることができる。

 

3−3−3−3 干ばつ対策

 この報告書では短期間干ばつ、非常事態に対する大韓民国と日本の対策を比較した。また、インターネットからフィジーとパプアニューギニア(PNG)の報告も使用した。

1) 大韓民国
(1) 大韓民国の背景
 大韓民国は朝鮮半島の南部に位置する。面積は98,480平方キロメートルで貯水池面積は290平方キロメートルである。灌漑地域は1993年には13,350平方キロメートルで、人口は1998年には4,640万人であった。年平均降水量は1,274ミリメートルで水路の長さは1,609キロメートルであった。国民所得は1997年には13,700ドルであった。

(2) 大韓民国の干ばつ対策
@ 地下水開発
深堀井戸の開発、細い小型井戸と集合井戸
A 簡易水源
水路底、泉の発掘作業及び可動式ポンプ設備の使用
B ポンプ
ポンプ設備による水の使用
C 各自治体
地方の状況の段階別水供給対策
D 節水運動の宣伝

メディアを使用した節水運動
宣伝映画の製作と放映
生活用水の10%節約運動

(3) 地域の水供給

遊休井戸と農業井戸の使用
飲料水会社の協力による飲料水供給
清掃船による離島への飲料水供給

表3-3-3-1 干ばつの各段階による対策

基  準 内           容
10%節水 水不足地域への運搬供給
節水宣伝
水質管理強化(浄化設備消毒、バルブの検査)
10-30%節水 各都市の水資源緊急供給対策室始動
ビジネスアワーの大規模水道設備使用減量
公共設備と高層ビルの節水拡大
工場用水の節水と再使用
2〜3日に一度の水供給規制
30-50%節水 2日に一度のみ大量供給
農業用水と工業用水の飲料用水化
50-60%節水 3〜5日に一度のみ大量供給
最低限の生活用水供給
私用井戸と私用飲料水設備の公共化
60%以上節水 飲料水の大量使用停止
水資源枯渇 他からの水輸送
水配給

 

2)  日本
(1) 日本の背景
日本はアジアに位置し島で構成されている。面積は377,835平方キロメートルで貯水池面積は3,091平方キロメートルである。年平均降水量は1,700ミリメートルで水路の長さは1,770キロメートルである。灌漑地域は1993年には27,820平方キロメートルで、人口は約1億2500万人であった。国民所得は1997年には24,500ドルであった。
(2) 日本の干ばつ対策

@ 体制の改善
 干ばつ対策室と水力統制機関の設置

A 水使用保障

配給車による水供給
海水から真水への変換装置
電気水と下水の再利用
貯水池の使用

B 完全節水

節水指導と干ばつ情報の提供
水使用制限協議会設立
水質変化による経済への影響に対する理解
サラリーマンと農業従事者に対する支援策

たとえば、兵庫県の年間平均降水量は1,200〜2,400ミリメートルであるが、各市町村ではそれぞれ干ばつに備えている。県の面積は約8,385平方キロメートルであるが、干ばつ対策として約44,000の貯水池がある。日本国内では約50の海水を真水に変換する装置がある。

 

3)  フィジー

(1) フィジーの背景

フィジーは南太平洋に位置し332の島で構成されている。人口は1998年には約80万人で、国民所得は1996年には6,500ドルであった。面積は18,270平方キロメートルで貯水池はない。年平均降水量は2,500ミリメートルで、水路の長さは203キロメートル、灌漑地域は10平方キロメートルであった。

(2) フィジーの干ばつ対策

 水不足地域への車両と船舶による水と食糧の輸送
    農業省、厚生省、文部省、公共事業省による教育プログラム
    穀物の回復のための緊急基金協力
    干ばつ災害回避のため河川の浚渫
    重要地域における衛生検査とタンクの設置
    海洋利用及び新種の灌漑技術への投資
    灌漑設備の改良

 

4) パプアニューギニア(PNG)
(1) PNGの背景

 PNGは南太平洋の赤道付近に位置しインドネシアに近い。面積は462,840平方キロメートルで貯水池面積は9,980平方キロメートルである。年平均降水量は2,800ミリメートルで、水路の長さは10,940キロメートルである。人口は1998年には約460万人で、国民所得は1996年には2,650ドルであった。

(2) PNGの干ばつ対策

井戸の設置
シェルター用製材設備の配布
穀物の播種と生産用の灌漑設備
救急患者への対応
交通基礎機関の整備
飲料用水の沸騰を奨励
離島部へのタンク設置
地下水の発掘と技術援助
小規模ポンプと浄水機の供給
地下水の質とレベルの調査
農民への種配布

 

3−3−3−4 干ばつ対策の比較と分析

1) 各国の概況比較
 干ばつが起こった際、各国はそれぞれ干ばつ対策をこうじなければならない。各国の概況は表2のとおりである。

表3-3-3-2 各国の概況比較

大韓民国 日本 フィジー PNG
国土面積 98,480km² 377,835km² 18,270km² 462,840km²
貯水池面積 290km² 3,091km² 0km² 9,980km²
灌漑地域面積 13,350km² 27,820km² 10km²   ―
人口 46.4million 125 million 0.8 million 4.6 million
水路の距離 1,609km 1,770km 203km 10,940km
年平均降水量 1,274mm 1,700mm 2,500mm 2,800mm
国民所得 13,700$ 24,500$ 6,500$ 2,650$

表3-3-3-2から、平均人口密度、貯水池の国土に対する割合、人口当たりの貯水池面積、水路の距離に対する灌漑地域が導き出される。

 

表3-3-3-3 各国の特徴比較

大韓民国 日本 フィジー PNG
人口密度(人/ km² 471 331 44 10
貯水池の国土に対する割合 0.29% 0.82% 0.00% 2.16%
人口当たりの貯水池面積(km²/10,000人) 0.06 0.25 0 21.7
水路の距離に対する灌漑地域(km² 8.3 15.72 0.05 不明

表3-3-3-3のとおり、日本は大韓民国と比べて貯水池面積が広く、割合としては2.8倍の灌漑地域をもっていることになる。日本は多数の貯水池によって干ばつに打ち勝ってきたように思われる。フィジーに貯水池はないが、PNGは日本の2.6倍の貯水池面積を有している。PNGがもし貯水池を効果的に維持,利用すれば干ばつに打ち勝つことが可能であろう。

 

3−3−3−5 干ばつ対策の比較


以下は各国における干ばつ状況の重要項目の比較である。

表3-3-3-4 各国の干ばつ対策状況比較

大韓民国 日本 フィジー PNG
関係機関の設立 災害予防本部 干ばつ対策室  
干ばつ報告事務所 水力統制機関
水使用の保障 地下水開発 貯水池保管水 水路底の浚渫 タンク設置
簡易水源 電気使用水 タンク設置 地下水開発
ポンプ 下水処理水 灌漑機材の使用 浄化設備
節水運動 メディア広告 節水指導 干ばつの教育  
映画放映 水使用制限協議会
段階的供給対策 節水効果の理解
支援策
水供給不安地域 飲料水会社との協力 車両の使用 車両の使用 薬品の供給
清掃船の使用 海水浄化装置 支援策 シェルター
    健康管理
所得の増加     海洋の利用 種の供給
インフラ 灌漑技術の改良 道路の舗装
灌漑設備

表3-3-3-4のとおり、干ばつ対策において大韓民国と日本はフィジー、PNGとは異なっている。大韓民国は地下水開発と節水運動に力を入れている。日本は水の再利用、節水運動と海水を真水に変換する装置に重きを置いている。フィジーの場合は水路の浚渫、PNGは地下水の発掘と薬品の供給を行っている。

 日本では干ばつ対策として地下水開発より貯水池の使用が一般的である。日本の貯水池面積の割合は大韓民国の2.8倍である。大韓民国は干ばつ対策として貯水池に水をためるより地下水開発を行っている。しかし大韓民国はフィジーのように海水の真水への変換が推奨される半島に位置するため、地下水のレベルを検査する必要がある。フィジーの場合はもう少し経済的な変換装置が必要である。PNGの貯水池面積は日本の2.6倍であるので、PNGはより効率的な貯水池管理の研究が必要である。またPNGの国土面積は日本の2倍に相当するので地下水開発を行うことが望ましい。

 

3−3−3−6 結論

 本章では、大韓民国、日本、フィジー、PNGの4カ国について、概況と干ばつ対策について、主にインターネットからのデータに基づいて比較検討を行った。
 大韓民国は、干ばつ対策として多くの貯水池をもつ日本と比べて、地下水を適度に利用していることが明らかになった。フィジーは地下水開発と海水から真水への浄化設備を開発することが望ましい。PNGもまた灌漑設備と貯水池設備を開発する必要がある。そしてフィジーもPNGも干ばつに対して節水運動を行うことが奨励される。
 結論として、干ばつ対策にはそれぞれの国の地理的気候的状況などの環境を十分に考慮すべきであるといえる。

 

3−3−4 中央ベトナムの洪水災害(1999)への対策


1) 背景
 ベトナムは災害の被害を非常に受けやすい国である。なかでも人口750万人の中央ベトナムはその他地域と比較して最も脆弱であり、ベトナムの最貧地域の一つである。この地域では洪水、台風、氾濫、干ばつ等の災害は恒例行事のようなもので、過去20年間、洪水や暴風による全国的な被害の70%はこの地域で起こっている。これら災害が、貧困と栄養不良の一因となっている。

2) 洪水の概要
 熱帯性収束帯と弱い熱帯低気圧に寒気が重なった影響で、1999年後半(11月上旬と12月上旬)に記録的な洪水が発生し、ベトナム中央地方を壊滅させた。短期間に大規模な豪雨が集中的に起こり、フエ市の1日の最高雨量は1,384mmに達した。この数値は1886年以来の100年間において、ベトナムの記録上の最高値である。
 短期間での豪雨により多くの地域で大規模な洪水が発生し、幾つかの河川では、水位が歴史的に見てもこれまでの水準を超えた。
 このため、クアンビン、クアンチ、トゥアティエン‐フェ、ダナン、クアンナム、クアンガイ、ビンディン、フーイェン、クァンホアといった9つの省が洪水の被害を受けた。トゥアティエン‐フェ、クアンチは第1回目の洪水で最も被害を受け、第2回目の洪水ではクアンガイ、ビンディン、クアンナムが深刻な被害を受けた。
 初めの洪水では、トゥアティエン‐フェ省全域及びクアンチ、クアンナム、クアンガイ、クアンビン、ダナン、ビンディンといった省の地区の多くが深く浸水した(20の地区で2‐4m浸水)。国道1Aは2m浸水し、北部から南部への交通は数日間麻痺した。フエ市では数時間通信網が遮断された。
引き続き、主にチュオンソン山脈西部での集中豪雨のためクアンガイ、ビンディン、クアンナム、フーイェン、クァンホアといった山間部の省でまたたく間に洪水が発生し、大規模な氾濫もカインホア、トゥアティエン‐フエで発生した。
 この二つの悲劇的な災害で、死者数は745人にのぼり、55,000世帯が住居を失った。また、数十万人が全財産、家畜等を失っている。9‐10月の豊作期の食糧貯蔵も流されたか、腐乱してしまっている。60,000ヘクタールを超える肥沃な水田が洗い流されたり、砂が溢れかえり使用不可能となった。

3) 政府の迅速な対応
 これらの災害発生後入手した情報をもとに、政府高官は災害対応の必要措置を早急に講じた。
 初めの洪水においては、災害情報の概要をまとめた後、首相から地方人民委員会に至急電報を送り、災害への備え及び対応活動を早急に実施し、洪水の被災地住民に緊急救援を行うよう要請した。洪水暴風管理中央委員会(CCFSC)にも、関連省庁・セクターと協力して洪水への現場の対応を至急支援するよう要請した。
 対策を直接監視するために政府特別派遣団が結成され、中部地方へと派遣された。洪水及び雨の状況にそって、派遣団は政府に対し緊急対策を実施するよう助言を行う。
 軍に対し、救援・救助活動を引き継ぐよう即座に命じた。国防省は至急軍隊を動員し、輸送手段を利用して救援物資を洪水被災地に輸送した。軍艦が行方不明の漁船の捜索をする一方で、空軍の航空機やヘリコプターを活用し、孤立した住民を救助し、救援物資を投下した。
 天気の回復により運行が再開されれば、即座に必要物資を被災地へ輸送できるように、ザラム‐ビン‐ドンホイ‐フーバイ‐ダナンタンソンニャット‐ダナン‐チューライ‐フーバイといった国内の空港間に空輸連絡網が設置された。
 空路・陸路を整理し、食糧・救援物資の被災地への輸送状況を向上させるために全軍隊が動員された。
 空軍機24機、トラック280台、情報観測車2台、配電車2台、その他多数の輸送手段を活用して救援活動の支援が行われた。
 当初の数日間、救援物資800トン(麺類、救命浮き袋、衣料品、薬品、毛布、蚊帳、生活必需品等)が被災地へ届けられた。
 最初の洪水で、国家備蓄倉庫(National Reserve Source)の備蓄食糧33,000トンが無償で政府より洪水の被災者に配給された。
 救援軍及び地元住民は洪水の被害を受けた600人を救助し、28,000人を安全な場所へと移動させた。100万人が食糧と救援物資の支給を受けている。
 保健医療セクターは早急にヘルスケアネットワークを整備した。薬や水をろ過する薬品が洪水地域に輸送され、多数の医師、看護婦が被災者の治療や世話に従事した。
 交通・輸送セクターは至急道路、鉄道の修復に取りかかり、北部や南部から中央地域への救援物資の移送をはかった。
 洪水が沈静するまで郵政・通信セクターは通信ホットラインの整備に尽力をつくし、トゥアティエン‐フエ省やその他の孤立した省の中央政府との連絡復旧に努めた。
 電力セクターは早急にダナンとフエ市の電力網及び110kVラインを修復し、また洪水がひくと迅速にケーブルワイア、高低圧電力網も修復した。
 農業農村開発省は南部と北部の食料公社から米穀を調達し、被災者への塩、援助物資の輸送を整備した。
 その他の省・セクターは積極的に首相の指令電報を実行し、洪水がおさまり次第、中央地方での生産活動が再開できるよう物資の早急な準備を行った。
 現地状況報告をまとめ、かつセクターと現地の調整を監視するため、両者間の通信の復旧にむけ、CCFSC常任事務所及び気象水文総局の職員は洪水時24時間体制で活動を行った。
 政府は労働・戦傷者・社会福祉省、商業省、CCFSC、祖国戦線(Fatherland Front)、赤十字に呼びかけ、救援物資を適切かつ早急に配給するために救援活動で最善の対応策を取るよう要請した。
 マスメディア、ラジオ、テレビは早急に中央地方の洪水の概要を報道したところ、すぐに国中の関心が集まり、人々の一体感を生み出した。後に被災地に届けるための救援物資、基金がよせられた。多くの人が空港、テレビ局、放送局、祖国戦線、救援組織、募金所にて寄付を行った。
 災害発生直後、祖国戦線が洪水の被害者支援のためにアピールを出したところ、一般市民から数百トンの食糧や衣服が、援助を集める機関としてベトナム政府が指定した祖国戦線とベトナム赤十字に提供された。11月の洪水が起こって数日間は、その多くが鉄道、道路網が再開するまで空路で輸送された。
 大蔵省の援助受付管理委員会及びベトナム赤十字と協力して、ベトナム祖国戦線は受け取った物資をザラム、タンソンニャット、ダナン、チューライ空港へ届けた。各省・部局は軍隊、現地住民と協力して全ての手段や備蓄を使って救援が円滑に行われるようにした。
 ベトナム赤十字は祖国戦線と同様に、基金調達者としての貢献が認識されているが、最も評価されているのはその現地での救助救援活動が功を奏したことである。
 救援活動が続行されている間、別の洪水が、前回よりわずかに南ではあるが、同じ地域を襲い、とりわけクアンガイ省が壊滅的な被害を受けた。この洪水では農業分野の被害がひどく、農作物の種子の貯蔵には深い打撃を受けた。前回の洪水の後に田植えができた農家も、この洪水で水田が洗い流されてしまった。前回の長い洪水に疲弊した現地住民は、再度の洪水で過酷な状況に追い込まれている。
 再度、災害対応のために全ての軍隊が動員された。この時点では、救援活動やロジスティック・システムも順調であった。
 政府の早急な対応で、21,400万トンのインスタントヌードル、10万着のレインコートが48時間以内にクアンガイ、クアンナムに届けられた。閣僚、高官が被災地に赴き、首相、副首相、その他関係省の参加する会合が開かれた。軍隊及び軍の設備が再度速やかに動員され、被災者の救援、援助及び主な貯水池の保全に携わった。被害の恐れがある地域から数万人が当局の指導により避難している。
 2度目の洪水が襲ったとき、田植えシーズンはほぼ終わりに近づいており、災害をもたらす可能性があった。この地方に住む数百万人の6−9ヶ月先の食糧危機を引き起こしかねなかったが、中央政府の迅速な介入により、多くの農家は次の収穫期にむけて米、その他食用作物を植え付けることができた。
 国際赤十字社・赤新月社連盟やベトナム赤十字に対し、無償で軍用機や鉄道輸送を提供するといった救援活動を通して、ベトナム政府は国際人道組織の活動が円滑に進むようにした。政府高官の調停により、煩雑な手続きも問題なく行われた。
 地方レベルでは、人民委員会が援助受付事務局を設立し、被災地への援助物資の受け取り及び輸送に携わった。救援活動中、危険な状況に直面することもあったが、現地スタッフは熱心に活動を行い、救援物資を遅延なく届けられるよう尽力した。
 洪水が収まった後、二次災害の発生を防ぐため必要な対策を早急に実行した。兵士が動員され、環境の浄化、水道・衛生設備の修復、及び地域コミュニティによる仮設住宅の修理、建設の際の支援を行った。医師及び医療関係のボランティアは被災地に赴き、無料の治療及びワクチンを提供し、洪水後の疫病拡大の防止に努めた。被災した地域コミュニティで救援物資の配給が適切かどうか確認するため救援システムは活動を続行している。
 全てのセクター、部局は、現地支局が通常業務を再開できるよう準備金を活用した。また、生産活動、事業の復旧のためマイクロクレジット基金が被災世帯に供給された。
 被災地の経済は深刻な被害を受けたが、災害対応・復旧における中央政府・地方政府の多大なる努力により、災害後に疫病や飢餓が発生することはなかった。

4) 長期的プラン
 現在、この地方の自然災害を軽減するための解決策が模索されており、社会経済的開発計画は災害対策・軽減に焦点を置いている。
 農業農村開発省はオランダ大使館と協力して、被災地を対象とした災害への備え、軽減策の研究に取りかかった。
 1月初旬には、UNDP(国連開発計画)、オランダ及びベトナムの洪水暴風管理局の専門家で構成されるチームが、洪水の被害が最もひどかった中央地方の5省を調査した。
 3月初めには、ベトナム当局、国際機関がダナンの中心都市で開かれたセミナーに集結し、第2回目の調査での役割を確認した。調査はこの2、3ヶ月のうちに始まる予定であり、ハノイで次回行われる援助国会議の基礎となる。
 中央ベトナムの自然災害軽減プログラムに関しては、更なる努力が不可欠である。災害の影響を減じ、この地域のコミュニティの生活水準を向上させ、自然災害への抵抗力を備えるためにも、政府の計画は国際社会からの強い支援を必要としている。

 

3−3−5 ネパールチョロルパ氷河湖の決壊による洪水の危険性とその対策

1) ネパール概略
 ネパールは南アジアに位置する内陸の小国である。北部には中国、南部、東部、西部にはインドと、人口密度の高いアジアの二大国に囲まれている。国土面積は147,181平方キロで、そう広くない国土に亜熱帯地帯から高山地帯まで、あらゆる天候や地形が混在している。最低高度は60メートルであるが、北部地方では高度8,848メートルのところも存在する。エベレスト山は標高8,848メートルの世界最高峰の山である。
 起伏が激しくかつ脆弱な地球物理的構造のため、ネパールでは氷河湖の決壊による洪水(GLOF)、地滑り、火災、地震、暴風、雹、落雷、疫病、雪崩等、様々な種類の自然災害が起こりやすい。これらの災害がほぼ毎年どこかの地域で発生し、人命損失、物的損害の原因となっている。

2) 氷河湖の決壊による洪水
 氷河とは、巨大な氷塊が流れ出たものである。氷河を定義つける本質的な特性は、この流出にある。通常、氷河は低温の状態のもとで拡大するが、寒冷な気候さえあれば十分に形成されるというのではない。極地や山岳地方のように、地球上には年間の積雪量が融雪量を超える地域もある。そういった地域一帯を集積地域というが、このように、年間の積雪量がプラスとなるため、集積地域では年々積雪による雪の層が厚みを増していく。間段なく雪が積もっていくので、それ自体の重みで余分に負荷がかかり、より深い部分の雪の層が圧縮される。結果的に、層の比重が増し、ある深さを超えたところでは雪が最終的に氷に変化する。実際には、天候の影響により、氷河の大きさ、形は時折変化する。氷河は冷夏や冬季と雨季の大雪といった天候の変化を受けて拡大し、末端の高度はさらに低くなる。
 ネパールのヒマラヤ地域では、氷河湖は珍しくない。ヒマラヤには主に二種類の氷河が見られる。一つは土石に覆われたタイプの氷河、もう一つは水面に土石がなく濁っていないタイプの氷河である。159の氷河湖がクシ(Koshi)盆地、229の氷河湖がチベット・アルン(Tibetan Arun)盆地に存在するが、うち24の氷河湖は災害が起きる可能性がある。北部・南部バルン(Barun)、ツァンモランスー(Chamlangtsho)、チョロルパ(Tsho Rolpa)、サブー(Sabou)、ドゥドクンダ(Dudh Kunda)、マジャン(Majang)、インジャ(Inja)、トゥラライ(Thulari)のような地域には災害の危険がある氷河湖がある。これらの湖は水の容量も大きく、不安定な状態のため、結果として時を選ばず決壊し、大規模な人命損失や物的損害を起こしかねない。そういった氷河の決壊による洪水が、過去14件発生した。

3) チョロルパ氷河湖
 チョロルパ氷河湖はネパール・ドラハ(Dolakha)地区ガウリサンカル(Gaurishanker)村開発委員会管轄区にある。海抜高度4580メートルに位置し、面積は1.65平方キロ、容積は推定8000万立方キロである。1960年以来、実際の湖の規模は5倍の大きさに拡大している。1997年、氷河湖決壊(GLOF)の専門家であるJ.レイノルズ博士は、同年夏には湖が決壊するかもしれないと警告した。加えて、科学技術省の報告によると、湖が決壊した場合、ドラハ及びラメチャップ(Ramechhap)地区の18の村開発委員会(VDCs)に被害が及ぶとのことである。
 同報告書には、潜在的な洪水の被害を抑えるためにも、早急に必要な対策を取る必要があるとの記述もある。それゆえ、前述の報告書、拡大しつづける湖の規模、氷の溶け具合を考慮して、国家中央災害救援委員会(CNFRC)は必要措置を取ると決定した。この目的のため、CNDRCはチョロルパ氷河湖水害防止委員会を結成した。
 このように、1997年以来幾つかの対策が取られている。

チョロルパ氷河湖の概観

4) チョロルパ氷河湖対策

氷河の水量減少
当初、氷河の容量を減らすために、上下水道管理局によって5本のサイフォン(吸上げ管)が設置された。それに加え、現在は湖の水量を減らすために湖口が削られている。
生命の危機に脅かされる住民の移動
チョロルパ氷河湖の下流、ロルワリング(Rolwaling)川沿岸の住民は、河岸から約20メートル先への移住を余儀なくされている。
早期警報システムの整備
 サイレンが下記の地区に設置されている。

・ ナーゴウ・ドラハ(Nagau Dolakha)地区
・ ベディン・ドラハ(Beding Dolakha)地区
・ ボルレ・ドラハ(Bhorle Dolakha)地区
・ シンガティ・ドラハ(Singhati Dolakha)地区
・ ドンブ・ドラハ(Dhumbu Dolakha)地区
・ ナヤプル・ドラハ(Nayapul Dolakha)地区
・ キルネ・ドラハ(Kirne Dolakha)地区
・ キムティクラ・ラメチャップ(Khimti khola Ramechhap)地区
・ マンタリー空港ラメチャップ(Manthali Airport Ramechhap)地区
・ プラカスプール・スンサリ(Prakashpur Sunsaris)地区
・ クシバリジャ・スンサリ(Kosibarrage-Sunsari)地区

チョロルパ氷河湖に導入された第一期の早期警報システムは以下の通り構成されている。

・ マスターステーション‐1
・ 氷河湖センシング‐2
・ 氷河湖警報監視‐2
・ 氷河湖警報(サイレン)‐19
・ 早期警報リレーステーション‐3

監視ポストの整備
 ネパール王国軍、通信関係者、水文気象局専門家、ネパール通信公団からなる監視チームが置かれ、氷河の定期的な監視を行い、雨季の間、関係当局に対し即座に情報を提供できるようにしている。

5) 予算割当
 1997年のチョロルパ氷河湖での前述の管理体制に関し、500万ネパールルピーが首相災害援助基金から利用可能となった。それ以来、ネパール王国政府は1997/98会計年度に180万ネパールルピー、1998/99会計年度には400万ネパールルピーを運用した。1999/2000会計年度の予算は540万ネパールルピーである。加えて、オランダ政府が1999/2000会計年度用に1億2000万ネパールルピーを提供したのに対し、世界銀行は1997/98会計年度に5000万ネパールルピーを利用可能とした。更に、オランダ政府派チョロルパ氷河湖管理経費として2億ネパールルピーを提供することとしている。<1.00米ドル=69.00ネパールルピー>

6) 結論
 国土の地形状態や資源の限界を考えると、ネパールでは氷河湖の決壊による災害に対応することは困難である。その上、ハザードマッピングシステム、脆弱性評価、危険度分析、物理的環境の変化を監視する科学的探知システム、効果的な早期警報システムの必要性がネパールではますます高まっている。

 

3−3−6 ネパールの最近の2災害について

 ネパールは、地震、地滑り、洪水、火災、疫病、雹、暴風、落雷、雪崩、氷河湖の噴出による洪水(GLOF)、干ばつといった様々な自然災害の被害を受けやすい国である。これら災害の中でも、洪水と地滑りは毎年多大な損害と被害を引き起こしている。下記のとおり、1999年8月の洪水、及び2000年2月の火災という二つの顕著な災害について報告する。

1) チトワン郡洪水概要
1999年8月24日午前2時−5時、雷を伴う集中豪雨がカリャンプール、アヨデャプリ、ボグーダ、及びチトワン郡ガルディ村開発委員会管轄地区で発生し、地域に壊滅的な洪水を引き起こした。地域の全河川が増水し、多くの人命が失われ、莫大な物的損失の原因となった。

(1) 被害概要
 1999年8月24日チトワン郡で発生した壊滅的な洪水により、22名が死亡、6名が行方不明、牛900頭が被害にあった。加えて510棟の家屋、502棟の牛小屋が倒壊し、482世帯が被害を受けた。この不幸な出来事により、推定3000万ルピーの被害が発生した。(1米ドル=69.30ネパールルピー)

(2) 洪水の原因
 上記の地域における洪水の主因は、3時間の間に計測された激しい降雨によるものである。また別の原因として、降雨が極めて局地的なものであったことが挙げられる。

(3) 死者数多数の理由
 被災地域の河岸沿いは多くの漁師とその家族が住む地域であり、それら多数の人間が増水した河川の犠牲になった。

(4) 対策
 人命損失、物的被害を防ぐためにも、河岸沿いに住居を構えないようにすべきである。加えて、ネパールでは現時点で未開発の洪水予報・警報システムを、災害の危険のある地域で開発・整備を進めていく。
 降水データの観測、収集も不可欠であり、年間を通じての実施が重要である。地域の水文を把握するためにも雨量観測所及びピエゾメーターの設置が必要と考えられている。

2) サプタリ郡での火災の概要
 ネパールのサプタリ郡タラヒ村開発委員会第1・第2行政区で、2000年2月21日午後3時、大規模な火災が発生した。この火災は警察および地域住民によって午後6時に消火された。

(1) 被害概要
 2000年2月21日にサプタリ郡の上記地区で発生した火災により、草葺きの家屋41棟、牛小屋64棟が倒壊し、41世帯が被害を受けた。この不幸な事件で推定2700万ルピーの損害が発生した。幸いにも人的損失はこの火災では見られなかった。

(2) 火災の原因
 干ばつ、強風、及び草葺きの家屋や牛小屋が近接していたことが、この火災の主な原因と思われる。

(3) 対策
 こういった火災から人命及び物的財産を守るためにも、一般市民の意識を高め、草葺きの家屋や牛小屋を近接させないようにすることが必要である。

 

3−3−7 インドネシアの森林火災対策

1) 森林管理システム
インドネシア林業省は、1億9,000万ヘクタールの国土のうち60%(1億1380万ヘクタール)を管理している。林業省 は最近、国土の1億2060万ヘクタール(GOI/FAO 1996年)を森林が占めていると発表をしたが、実際の数字は更に25%程低いと思われる。実際には9170万ヘクタールしか森林が残っていないという報告もあった(Ramon and Wall 1998年) 。そのうち、森林面積のおよそ2600万ヘクタールは他の用途に変更可能(森林生産可能)である。森林伐採の比率は毎年60から120万ヘクタールまでと推定されている(Sunderlin とResosudarmo 1996年)。
政府の森林管理で最も基本的な問題は、その土地の特徴や、そこに元々住んでいた住民が継承してきた権利、森林生態系保護の重要性などに対する知識がほとんどないまま、生産可能な森林と指定されたということである。林業省が材木会社に伐採権を与えることで、この状況は悪化する。伐採経験の少ない材木会社は森林の特徴や生態系の意味などを理解せず事業を行っているため、監督側である林業省の責任は重大である。こういった不適当な森林管理システムが火災を引き起こし、動植物形態に深刻な影響、土壌侵食をもたらすこととなった。短期間の伐採権契約、低額の伐採税、また不十分な監督指導も材木会社の意識の低さにつながっている。

2) 森林火災の概要
1982‐83年の数カ月間、今世紀最大規模の森林火災が推定5百万ヘクタールのボルネオの熱帯雨林で発生した。 インドネシアの州の1つである東部カリマンタンが最も打撃を受けた。 それ以来、火災が1986年、1991年、1994年と1997年にボルネオ島とスマトラ島で繰り返し発生し、広大な土地が焼きつくされた。
1986年以来、これらの火災による煙霧が数週間にわたって東南アジア周辺を覆ったため、隣接するマレーシアとシンガポールでは健康上の問題が発生し、国際空港の閉鎖にまで至った。経済的損失と環境的損害は莫大であり、 1991年にはインドネシアは国際的な援助を求めた。

3) 森林火災の原因
 煙霧の多くは、パルプ木とオイルヤシプランテーション用に土地を準備するため、広域に火を放ったことから発生した。火の使用は公式には禁じられているが、どの会社もそれを無視している。火の使用は莫大な量のバイオマス(biomass)を減らす唯一の経済的な方法だからである。オイルヤシが高額のため、どの材木会社も森林輸出からヤシプランテーションに移行する。その根本的な原因は政府の政策にもある。即ち、500.000ヘクタールの森林をオイルヤシプランテーションに変えることを目標にした政策である。この政策を修正しない限り、火災は無くならない。  
伐採会社が新しい地域に参入する際には、自動的に火災問題が発生する。森林を開き、道路などを建設することで森林火災の可能性が高まった。残念ながら、そういった会社には火災管理の概念がなく、同様に火災発生時の緊急対策の準備もない。今後は、火災防止管理で十分な実績を持つ会社だけが年度ごとに許可証を与えられるべきである。

4) 今後の対応
火災と煙霧の軽減に取り組む上で最も重要なステップは、土地使用権利及びインドネシアの森林政策の修正である。インドネシアでは原則的に消火活動に問題がないことから、森林火災の削減に関しては消火活動でなく、あまりに多くの火が放たれたという問題を認識せねばならない。