アジア防災センターでは、アジア22カ国の決定のもと、各国の自然災害の状況、災害対策に関する各国の制度・計画類・具体的施策等に関する情報、知識及び経験を収集し、体系的に整理し、データベース化した上で各国間で共有化することにより、各国の防災体制の整備を促進するとともに、アジア地域で必要に応じて今後各国が多国間防災協力を進めるための基礎的情報基盤を整備することとしている。
本年度は、既存資料、アジア各国防災担当者、その他防災関係機関からの情報収集等を通じて、次の事項につき概要を把握・分析するとともに、これらの情報をデータベース化し、自然災害情報、人材情報等一部の情報については情報発信を行った。
アジア防災センターは、本年度次のような方法で各国の防災関連情報の収集を行った。
センター設立以来、アジア防災センターの活動趣旨及び多国間防災協力の必要性についてメンバー各国の理解を求めつつ、自然災害情報、災害対策事例、防災体制等に関する情報の提供依頼を行い、関連情報の入手を進めてきた。
アジア防災センターのカウンターパートであるメンバー国の防災担当者の確認、アジア防災センターの活動趣旨説明、防災関係の基本的情報の入手及び今後の協力依頼のため、今年度はメンバー国8カ国(韓国、フィリピン、マレーシア、シンガポール、バングラデシュ、タイ、ヴィエトナム、インドネシア)の現地調査を行った。
その結果、これらメンバー国から、将来のアジア防災センターへの情報提供についての協力を取り付けると同時に、各国の防災担当者と面識を持ち、組織を認知していただき、法制度・組織等の資料入手、実際の被災地・防災施設等の現地調査等も行い、非常に有益であった。たとえば、バングラデシュやヴィエトナムの洪水被災地、フィリピンのピナツボ火山災害被災地やマニラ首都圏洪水管理システムの現地に赴き、担当者からヒアリング調査等を実施した。
アジア防災センター国際シンポジウム(1999年2月15日)及び第1回専門家会議
(2月16,17日)により、メンバー国、アドバイザー国及びオブザーバー等の参加各国・機関よりカントリーレポートを含む自然災害情報、災害対策事例及び防災体制等に関する資料の提供があり、またアジア防災センターの活動への要望も得られた(シンポジウムは
8−1 アジア防災センター国際シンポジウムの開催、専門家会議は4−1−2 専門家会議等の開催を参照)。アジア防災センターは独自にインターネットを活用して各国の防災体制に関する情報を収集するとともに、各国防災担当者、国際機関の担当者より防災関連情報を収集した。既にシンガポール及びヴィエトナム両国政府がインターネット上で防災関連情報を発信しているほか、インドネシア、韓国、マレーシア等情報の発信を準備中の国もあり、引き続き情報収集していく必要がある。
防災に関する情報は、世界各国において自国の防災情報を有しているほか、国際的な組織、研究機関等が様々な視点から防災情報の収集・提供活動を行っている。さらに、昨今のインターネットの普及により、それらが順次インターネットを通じて利用可能な体制が整備されつつある。
アジア防災センターが、防災情報のセンター機能を発揮していくに際して、現在、他の組織等がどのような活動を行っているかを把握し、先行する組織等と連携し、協力体制を構築していくことは、我々の活動を効率的に行っていく上で必要不可欠である。
そのため、まずは、このような世界中の防災関連機関等において、すでにどのような防災情報がインターネット上に発信されているかを調査し、今後どのようにこれらと連携をとっていくべきかについての基礎資料とした。
(抜粋:表3-1-3-1 全体:
https://www.adrc.asia/annual/98/h3-1-3-1.xls)この中でも、全世界の災害発生状況に関する統計データを有するのが、ベルギーのルーベン・カトリック大学の災害疫学研究所(CRED)の災害データベース(EM−DAT)であり、現時点ではデータベースそのものはインターネット上に公開されていないが、1999年の夏頃にはインターネット上からも利用可能となる予定である。
また、EM−DATが統計数値のデータベースであるのに対し、国連の人道問題調整事務所(OCHA)は、災害時の人道的援助活動支援のため、防災、災害対策、災害対応に関する信頼できる情報を、必要なときに得られるようにレリーフ・ウェブを運用している。
一方、メンバー国政府においては、表
3-1-3-2に示すとおり、ヴィエトナム、シンガポールをのぞいて、英語による防災情報は体系的には発信されていない状況ではあるが、ほとんどの政府がすでにインターネット上にホームページを有している。その他、各国のかなり詳細な総合的な統計数値をまとめた、アメリカCIAのワールドファクトブックなど、これらの情報は、アジア地域における防災情報ネットワークを構築していく上で、非常に重要な情報源であると考えられる。
そこで、今回収集した世界の防災情報データベースについては、本章で収集する情報ソースとして利用するほか、それぞれの掲載項目の一覧表を作成し、アジア防災センターのホームページから、直接データベースの項目にリンクを設置するなど、利用者が必要とするデータに、効率的にアクセスできる形でデータの内容、その所在を整理し、提供していく。
表3-1-3-1
インターネット上の防災情報 (抜粋)作成機関 |
データベース名:情報項目名 (→リンク先のデータベース名) |
国名 |
掲載されている情報の災害の種類 |
災害関連情報
|
|||||
災害全般 |
地震 |
津波 |
火山 |
台風 |
洪水 水 |
||||
OCHA(国連人道問題調整事務所) |
ReliefWeb (項目のNatural Disastersに災害関連情報、検索機能もある。) |
UN |
○ |
○(被害状況と国際的な援助要請についてなど) |
|||||
Asian Disaster Preparedness Center |
News letter:asian disaster management news(同機関の発行する防災に関する出版物) |
Thailand |
○ |
× |
|||||
IDNDR(International Decade for Natural Disaster Reduction |
× |
Swizerland |
× |
○ |
× |
× |
× |
× |
× |
IRIS(Incorporated Research Institutions for Seismology) |
Seismic Monitor(最近5年間に世界中で発生した地震の震源地図) |
America |
○ |
○ |
|||||
IFRC & RCS(国際赤十字・赤新月社連盟) |
現場からの報告という形で災害関連の情報が提供されている。 |
○ |
○ |
||||||
Canada Centre for Remote Sensing |
Environmental Monitoring(洪水、山火事、油濁) |
Canada |
○ |
○ |
○(但し衛星画像のみ) |
||||
Canadian Centre for Emergency Preparedness |
CCEP News(同機関の発行する防災関連の情報誌のサンプル) |
Canada |
○ |
△(サンプルによっては得られるのかもしれない。) |
|||||
CRED(Universite Catholique de Louvain) |
EMDAT |
Belgium |
○ |
○ |
|||||
Earthsat |
米国本土の洪水危険地域の地図(地域別もある) |
America |
○ |
○ |
× |
||||
Emergency Management Australia |
@災害から生き残るための情報 A緊急事態管理計画98/99 |
Australia |
○ |
@(オーストラリアで発生した地震と嵐の被害について) |
|||||
MINISTRY OF CIVIL DEFENCE |
ニュージーランドの自然災害1840〜1980 |
New Zealand |
○ |
○ |
○ |
○ |
|||
The United States Govrment |
危険性など災害の説明と、それに対する準備や特定の災害についての情報 |
America |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
△特定の災害についての情報(例えばノースリッジ地震の状況) |
Institut de Physique du globe de Paris, D épartement de Sismologie |
世界25地点の地震観測データ |
France |
○ |
○地震観測データのみ |
|||||
Unisys Corporation |
Hurricane/Tropical Data |
America |
○ |
○(気象学的データと台風等の軌跡の地図) |
|||||
Simon Fraser Univeresity |
様々なデータベースや組織へのリンク集 |
America |
○ |
○ |
○ |
○ |
○ |
△(リンクを通して) |
|
Institute of Industrial Science ,University of Tokyo |
× |
Japan |
× |
○ |
× |
× |
× |
× |
× |
National hurricane Center (Tropical Prediction Center) |
米国沿岸部と大西洋で発生した過去のハリケーンのデータ |
America |
○ ハリケン |
米国沿岸部に発生したハリケーンの気象学的情報、被害状況 |
|||||
Natural Hazards Centre at the University of Colorado,Boulder |
自然災害発生後に行われた、その災害に関する研究(社会科学系が多い)の報告 |
America |
○ |
△ |
|||||
Natural Hazards Research Centre, Macquarie University |
オーストラリアや周辺地域で発生した自然災害・人的災害についての研究リスト(リストのみ) |
Australia |
○ |
× |
|||||
Natural Museum of Natural History(Smithsonian Inst.) |
Holocene Volcano Basic Data |
America |
○ |
○ |
|||||
NGDC (National Geophysical Data Center) |
Natural Hazards Data available on line |
America |
○ |
○ |
○ |
○ |
|||
NOAA・National Weather Service,The Office of Hydrology |
米国の河川の水深状況の地図 |
America |
○ |
過去2年間の洪水の際の河川状況について掲載している。 |
|||||
The Weather Underground |
世界中の気象状況 |
America |
○ |
○各地の温度・湿度・気圧・天気 |
|||||
University of North Dakota, UND Aerospace |
世界の火山噴火状況 |
America |
○ |
○(衛星画像) |
|||||
West Coast & Alaska Tsunaml Warning Center |
津波データ→NGDC、Earthquake Catalogs(地震) |
America |
○ |
○ |
○ |
||||
Committee on Earth Observation |
各種機関が提供する(主にアメリカ、カナダの政府関係、公共機関)観測衛星のデータへのリンク集 |
ServerはAmerica |
○ |
○ |
○ |
||||
NASA Goddard Space Flight Centre |
Natural disaster Reference Database(1981〜の災害衛星情報の活用に関する研究や成果、結果についての文献データベース) |
America |
○ |
○文献から |
|||||
The Office of U.S.Foreign Disaster Assistance |
OFDA報告書(最近のOFDAの災害における活動に関する報告書) |
America |
○ |
○ |
|||||
The U.S.Agency for International Development(USAID) |
USAIDの行う経済援助と人道的援助活動についての情報 |
America |
○ |
△(一部の最近の災害については 最新情報がある) |
|||||
American Council for Voluntary International Action |
発生した災害の援助・救助に加わった組織のリストとリンク |
America |
○ |
× |
|||||
International Rescue Corps |
緊急対応組織へのリンク集 |
UK |
○ |
||||||
Disaster News Network |
米国・カナダの災害発生状況 |
America |
○ |
○ |
|||||
Division of Mines and Geology, California Department of Conservation |
地震災害地域地図(Seismic Hazard Mapカリフォルニア州)(液状化、強震度、地滑り危険地域を示したもの) |
America |
○ |
× |
|||||
Association of Bay Area Governments |
Earthquake Hazard Maps(サンフランシスコ湾の各都市の地震危険度マップ) |
America |
○ |
× |
|||||
American Rescue Team International |
Mission Situation Reports(ARTIの活動の報告が主な内容) |
America |
○ |
○ |
|||||
Volunteers in Techinical Assistance |
Emergency Management Information(各種機関の発行する災害に関する報告書へのリンクが災害別にまとめたもの) |
America |
○ |
○ |
|||||
Pan American Health Organisation (PAHO) |
DESASTRES(災害に関する文献目録 DB。約60%以上がスペイン語) |
America |
○ |
× |
|||||
Hurricane Watch |
Hurricane Watch(北米、カナダ、欧州、太平洋の衛星画像) |
○ |
○(気象状況) |
||||||
Search and Rescue Society of British Columbia |
Emergency Services Database(災害管理や救援活動などに関連する人材データ、本人の登録によるもの) |
Canada |
○ |
× |
|||||
International Council of Scientific Unions |
World Data Center System(世界の地質、太陽、環境に関連した地質物理学などの技術的数値へのリンク) |
America |
○ |
○(専門的、技術的な各種の数値) |
|||||
University of Geneva The Natural Hazards Mitigation Group |
Seismic Hazard Mitigation Team(スイス、ジュネーブ大学の災害緩和学科の研究概要と出版物) |
Swizerland |
○ |
× |
|||||
Mediccom.Org |
Disaster Nes Briefs(各種の情報源からの情報をまとめたもの) |
America |
○ |
○ |
|||||
ReliefNet |
Current Crisis(自然災害のニュース:Nes Page Networkの災害ニュースへのリンク) |
America |
○ |
○ |
|||||
Internet Disaster Information Center |
Ongoing Current Information(→VITAの報告書をはじめとした、各種の情報源へのリンクを災害別にまとめたもの) |
America |
○ |
○ |
|||||
Department of Geography, University of Edinburgh |
World-Wide Earthquake Locator:Global Earthquake Report(地震の震源地やマグニチュード) |
UK |
○ |
○ |
|||||
National Information Service for Earthquake Engineering , University of California, Berkeley |
EQIIS(地震による被害をうけた建物の写真のデータベース、建物の構造で検索ができる) |
America |
○ |
○(写真) |
|||||
Virtual Publishing Co. |
Disasters Online in Real-Time(項目別の各種の情報源へのリンクと、衛星画像などを集めたもの) |
America |
○ |
○ |
|||||
NESDIS |
The latest operational imagery for significant events(災害衛星画像) |
America |
○ |
○(災害発生場所の衛星画像) |
表3-1-3-2
メンバー国のホームページ(部分)( 全体は、
https://www.adrc.asia/annual/98/h3-1-3-2.xls )国名(英語) |
政府のホームページ* |
災害関連情報 |
災害対策情報 |
災害対応情報 |
|
災害時 |
災害後 |
||||
Bangladesh |
政府 |
○(98年に起こった洪水の詳細な情報を提供している。内容は別紙参照。リストの災害については入手不可。) |
× |
○ |
○ |
Cambodia |
× |
× |
× |
× |
× |
China |
National Meteorological Center |
× |
× |
× |
× |
India |
外務省 |
△(ニュースのページがあり、日付によって検索ができる。1998と99年2年分のみ。) |
× |
△ |
△ |
Indonesia |
House of People's Representatives, Parliament of Indonesia |
? |
× |
||
Kazakhstan |
President of Kazakhstan |
△(ニュースのページがあり、政府の出した最近の情報が得られる。) |
× |
△ |
△ |
Laos |
× |
× |
× |
× |
× |
Malaysia |
@Ministry of Fore. Aff. AMalaysian Meteorolo. Service http://www.kjc.gov.my/ |
@△(プレスリリースのページがあり、政府の出した最近の情報が得られる。) A○(気象情報と気象警報の情報) |
× |
@△ A× |
@△ A× |
Mongolia |
@Government on Mongolia AMinistry of Defense BMinistry of Nature and Environment |
@"Government News" A× B△(現在の雲,雪,火事の状況地図) |
× |
@? A× B× |
@? A× B× |
Myanmar |
×(The golden pages of Myanmar |
× |
× |
× |
× |
Nepal |
× |
× |
|||
Papua New Guinea |
首相と内閣 |
△(ニュースページがあり、政府の出した最近の情報が得られる。) |
× |
△ |
△ |
Philippines |
Office of the Press Secretary |
△(97〜99の政府発行のニュースが検索できる。) |
× |
× |
× |
Russia |
? |
× |
|||
S.Korea |
Ministry of Government Administration and Home Affairs(韓国語) |
?(韓国語のため) |
× |
? |
? |
Singapore |
Ministry of Civil Defence Force |
△(ニュースのページがあり、同省の出した最近の情報が得られる。) |
× |
△ |
△ |
Sri Lanka |
Ministry of Foreign Affairs |
△(ニュースのページがあり、政府の出した最近の情報が得られる。) |
× |
△ |
△ |
Tadzhikistan |
× |
× |
× |
× |
× |
Thailand |
The Secretariat of the Prime Minister, Spokesman Bureau |
△(プレスリリースのページがあり、政府の出した最近の情報が得られる。) |
× |
△ |
△ |
Uzbekistan |
InfoCentre of the Office of the President of the Republic of Uzbekistan (Mass Media- Official news) |
△(ニュースのページがあり、政府の出した最近の情報が得られる。) |
× |
△ |
△ |
Vietnam |
Disater Management Unit(DMU) (政府とUNDPのプロジェクト) |
○自然災害情報(台風・水害を中心に) |
○(水害対策,行動計画,法制度) |
△国連,赤十字社,NGOへのリンク |
△国連,赤十字社,NGOへのリンク |
*主に、災害関連の情報を扱っていると思われる省庁のホームページ |
|||||
○:特に災害関連の情報を得るための方法がある場合 |
|||||
△:一部に災害関連の情報を含んでいる場合 |
各国の防災体制を構成する要素としては、各国の対応の基本を定める法制度、これに従い実際の対応を行う組織、また防災体制の整備を着実に進めるための基本計画があり、さらには、個々の災害に対する防災行動や対策を定める災害対応マニュアル等がある。
法制度については、すべての国において、日本の災害対策基本法のような基本法が存在するわけではなく、政府命令や特定組織の規則により、防災体制を規定している国も存在する。国毎の事情を考慮すれば、このどちらがよいかという価値判断をすることは容易でない。しかし、広義の法制度と見られるこの法令規定につき、各国の情報を共有化することは、今後法制度を整備しようとする国、あるいは現在の制度を改善しようとする国にとって、参考となるであろう。
組織についても、各国の事情により異なる災害対策をとる場合が多いが、これも法制度と同じく、共通する災害に対する対応として、大いに参考にすることができる。
メンバー国の中で日本のように防災計画を既に有している国はまだ少数派であり、防災計画の情報を共有化していくことは近い将来策定を予定している各国にとり、計画策定の参考になり、結果として自然災害による被害の軽減に資する可能性が高い。
災害対応マニュアルは、各国・地域において固有の自然災害の被災経験、あるいは災害特性に応じて、独自の対応マニュアルが作成されている場合が多いと考えられる。しかし、各国・地域独自に対応しているため、各国・地域間で共通の災害に対する有効な対応策・経験が共有されているとはいえず、そのため、災害対応策に関する経験・知識・知見など重要な資料・情報に偏在がみられる。
アジア地域においても、特定国において蓄積された特定災害への対応策に関する経験・知識・知見などを各国間で共有化することは、今後の災害対策を検討・策定しようとする諸国にとり意義が大きいものと考えられる。
次に収集すべき情報は、各国政府レベルの情報のみではなく、州・地方政府、各地域、また市町村レベルでも有用な情報を収集する必要がある。その理由は、原則として実際に災害に対応するのは、各地域・市町村なり地方政府であり、地方レベルの対応能力を超えた場合に中央政府や国際社会が支援を行うということからも理解できるように、単に中央政府で規定や組織・制度を整備しても、地方や草の根レベルも含めた現実の災害対応力が高まったとはいえないからである。したがって、既述のとおり、各レベルの有益な情報を共有化していく必要がある。
前記3−1−2に記載のとおり、アジア防災センターは、メンバー国に対する情報提供依頼、現地調査、専門家会議、インターネットによる独自の情報収集等の方法により各国の防災体制に関する情報の収集を行った。
アジア防災センターでは、上記の方法により、メンバー国及びアドバイザー国等から防災体制に関する情報を収集し、その結果、各国の防災体制の概要につき把握した。その結果を次に示す。
法制度に関しては、各国個別の事情により対応に違いが見られる。
日本のように災害対策基本法を有している基本法型のグループ、ロシア・シンガポールのように市民防衛法型のグループ、バングラデシュ・マレーシアのように政府命令・内務規定などの規則による運用規定型のグループに分けることができる。これらのうちいずれがよいかの判断は難しいが、中央・地方を問わず何らかの法制度を有しておくことは政府の義務の明確化及び一般国民に対する周知徹底の面でも有益と思われる。
表3-2-4-1に、各国の状況を示す。また、基本法型の1例として日本の災害対策基本法の構成を表
3-2-4-2に示す。
表
3-2-4-1 各国の防災法制度
国 名 |
基 本 法・規 定 な ど |
バングラデシュ |
災害対策法は現在審議中。 政府の承認待ち。
|
カンボジア |
市民防衛法が1993年に成立。 |
インド |
自然災害は国、州、地域の3レベルで対応。ボパール災害以来、化学災害には1986年環境保護法に基づく別体系で対応。管轄は環境庁。全国に49の工場地帯があり、その中に950ヵ所の危険性のある工場があり、産業災害に備えている。 |
インドネシア |
大統領令43/1990(1995年)。 |
日本 |
1961年災害対策基本法施行。 |
カザフスタン |
市民防衛法のほか、自然災害及び産業災害に関する緊急事態法、消防法、緊急援助法、国家安全法、保健衛生法など。 |
韓国 |
自然災害対策法(1970年策定) 緊急対策法(1980年策定)/人災に対応 |
ネパール |
自然災害救援法(1982年制定。1989、1992年改正)。 自然災害救援規定(各組織の役割明記)未成立のため法の効果は不充分。 |
ラオス |
1998年、活動内容を定めた枠組みを規定。災害対策法は草案段階でまだ成立していない。 |
マレーシア |
国家安全保障令第20号。 |
モンゴル |
市民防衛法(1995年成立)のみ。人災、自然災害両方に適応。 |
パプア ニューギニア |
災害対策法(1975年成立)あり。州政府、地方政府レベルの対策法がないため、それをカバーする法律を検討中。 |
フィリピン |
大統領令1566(1978年公布)で政府から村落レベルまで防災調整委員会の設置を規定。 |
ロシア |
@自然災害、技術災害に対する国民・領土保全法 A災害救助法 B民間防衛法 C物資供給法 D災害物資備蓄法。 |
シンガポール |
市民防衛法が1986年に成立。人災、自然災害ともに適用。 |
スリランカ |
災害対策法案審議中。 |
タジキスタン |
市民防衛法が1996年に成立。 |
タイ |
市民防衛法が1979年に成立。 |
ウズベキスタン |
災害に対する国民保護法(1998年制定)。 |
ヴィエトナム |
首相命令、政治局通達に基づき、各地方が防災計画を立案。 |
オーストラリア |
8つの州・領土のうち、6州に災害対策法が存在。州レベルで十分対応可能なため、連邦政府としての災害対策法はない。 |
スイス |
市民防衛法(第二次大戦後成立。数回改正)。国際開発協力・人道援助法(1976年成立)。両法ともスイス連邦法として成立。 |
表 3-2-4-2
災害対策基本法の構成
|
組織についても、各国毎に固有の組織体制を構築しているが、大別すれば、日本の中央防災会議、インドネシアの国家災害管理調整委員会のように政府内横断組織とその専門事務局を有する国、バングラデシュのように災害対策・救援のための専門省を有する国、スリランカのように省内の特定組織で災害対策を担当させる国などがある。
表3-2-4-3に、各国の状況を示す。
なお、各国の防災組織図については、本報告書の添付資料とした。
(巻末資料1)
表3-2-4-3
各国の防災組織体制国 名 |
組 織 体 制 |
バングラデシュ |
災害対策省あり。災害発生時に各省庁に協力を要請。他に国家災害対策会議(議長/総理大臣)、省庁間調整委員会、サイクロン準備委員会あり。 |
カンボジア |
国家災害対策委員会、政策が確立されたのは1995年。組織は16人の閣僚で構成。カンボジア首相が組織を管轄。カンボジア赤十字が全面協力。 |
インド |
平時:政府内危機管理グループ(首相府長官が議長)。自然災害は農業省 が主管し、他省は支援。州レベルでは救援復興部又は歳入部が主管。 地域レベルでは、税務官の指導する調整監視委員会。 災害時:政府内横断チームが州政府と協力。 |
インドネシア |
国家災害管理調整委員会(Bakornas PB)で総合調整。人民福祉・貧困軽減調整省が事務局で、全災害に対応、各省に指示権限あり。技術評価利用庁、公共事業省、気象地質庁、環境庁などがBakornas PBメンバー。 |
日本 |
災害対策の基本政策は中央防災会議(閣僚で構成。議長は内閣総理大臣)で決定。事務局は国土庁。個別の政策は各省庁で策定。地方政府は主に救援活動を実施(自治省が管轄)。 |
カザフスタン |
緊急事態庁で対応。各市、市民防衛局、緊急医療センター、共和国緊急救援隊、水難救助隊等と連携。共和国首相が市民防衛責任者。 |
韓国 |
大統領、首相、行政自治部、市民防衛、災害対策本部の流れで組織を形成。その下部組織として災害準備・防災局(自然災害対策法に対応)、市民防衛・災害対策局及び消防局(緊急対策法に対応)あり。地域レベルでは各地方政府が対応。 |
ネパール |
中央自然災害救援委員会のもと、地域自然災害救援委員会、地区自然災害救援委員会、ローカル自然災害救援委員会あり。また救援医療小委員会と供給・避難・復興小委員会あり。 内務省災害救援部は、防災政策立案、防災準備、救援活動、情報収集、募金等被災者配付など実施。全国各地はネットワークで結ばれている。遠隔地対応が課題。 |
ラオス |
福祉省が総理府の事務局として活動。 |
マレーシア |
国家安全保障令第20号に基づき、総理府国家安全保障局が総括。災害対策・救援委員会が具体的活動計画を策定、実施。連邦政府、州、地域レベルで対応。 |
モンゴル |
環境省(政策面を担当)、市民防衛委員会(実務を担当)に加え、災害発生時には国家恒久緊急対策委員会を召集(閣僚により構成。議長は首相)地方レベルでは地域緊急対策委員会で対応。 |
パプア ニューギニア |
災害対策法(DMA)に基づき国家災害・緊急対策局(NDES)を設置。国家災害委員会(NDC)が災害を宣言し、政府に行動プランを助言。州レベルでは防災委員会(PDC)あり。 |
フィリピン |
国家災害調整委員会(NDCC)が民間と協力して防災計画立案、緊急対応・復興を行う。大統領に解決策や緊急事態公布の進言実施。政府内14省、軍総司令官、赤十字事務局長、国防省市民防衛局長などからなる。 |
ロシア |
ロシア市民防衛非常事態防災省(EMERCOM)あり。他国の組織との違いは専任の人員、資源を保有している点。 |
シンガポール |
内務省が管轄。市民防衛隊、警察隊が実務対応。大災害の場合、災害管理委員会を召集(閣僚がメンバー)。 |
スリランカ |
社会事業省が災害対策センターを設置。州、地域レベルでの対応はまだできていない。 |
タジキスタン |
首相が防災・災害対策を総括。国家緊急・市民防衛委員会が実務を担当。州、地域レベルでそれぞれ委員会があり、州が中心。各州には市民防衛本部あり。 |
タイ |
99年市民防衛法に基づく国家市民防衛委員会(議長/内務相)が各省を調整。国防省、農務省、厚生省等がメンバー。NGOもあり。地域、地方レベルで対応。 |
ウズベキスタン |
首相府緊急事態部(5名)が政府内各省調整及び災害対策の総合調整機能を担う。 |
ヴィエトナム |
洪水・暴風雨対策中央委員会が各地方人民委員会、軍管区本部と連携して対応。国家水気象予報センターが早期警報実施。 |
オーストラリア |
州、地方レベルで災害に対応。それぞれに災害対策委員会あり。地方委員会、州委員会、国家委員会(EMA)、国家災害対策委員会の順で災害に対応。必要に応じて連邦災害対策特別委員会が設置され、政府レベルでの調整に当たる。 |
ニュ-ジ-ランド |
危機管理計画に基づく緊急事態管理体制への移行手続中。 |
スイス |
防災に関しては地方政府が対応。災害発生時には地域レベルで対応。連邦政府の管轄は国防省。 |
基本計画については、国家レベルでの防災基本計画を有する国(日本、ネパール、パプアニューギニア、フィリピン、ロシア、シンガポール、スリランカ、タジキスタン、タイ、スイス)、現在策定検討中の国(バングラデシュ、カザフスタン、マレーシア、モンゴル、ヴィエトナム)のほか、州・地方レベルで計画を有する国(オーストラリア)などがある。
災害対応マニュアルについては、実際の災害に対応するのは各州・地方政府であることが多いという理由から、国家レベルでの災害対応マニュアルを有する国はなく、州・地方レベル以下に資料があると考えられるため、必要な場合にはこれら地方政府にアプローチして情報収集する必要がある。
表3-2-4-4に、各国の状況を示す。なお、1例として日本の防災基本計画の特徴を次に記す。
表3-2-4-4 各国の防災基本計画
国 名 |
基 本 計 画 |
バングラデシュ |
災害基本計画はないが、省庁別に災害対策内務規定あり。これに沿って国家、地方、村レベルに至る様々な災害対策委員会が対応。災害対策計画を今年5〜6月頃までに策定したい。マニュアルは市民団体レベル(主に人災向け)のみ。 |
カンボジア |
国家レベルでは防災法等を準備中。地域レベルでもリーダーシップ、人材、資金強化のための計画策定中。暫定的に救助活動、トレーニング計画も策定中。 |
インド |
ビジョン2020により、開発計画に防災を組み込み、最新情報技術、保険、法的枠組み強化を図る。 |
インドネシア |
最近UNDPの支援を受けてインドネシア防災情報システム(DIS)を開発。DISは防災用GISシステム、災害報告及び救援情報のためのデータベースを含む。 |
日本 |
災害対策基本法に基づき中央防災会議が防災基本計画を承認。4つの自然災害、8つの人災(火災、列車事故等)を防災、初動対応、復興に関して規定。阪神大震災の教訓を生かし、同計画を95年と97年に改定。各省庁、企業、自治体、ボランティア、公益企業の役割を規定。 |
カザフスタン |
緊急事態庁がIDNDR方針に則り防災緊急行動計画を策定中。カザフスタン総合防災計画も策定開始。 |
韓国 |
手順書、予備軍計画書、市民防衛計画書(赤十字、ボランティア等を対象)あり。昨年3〜5月、42,000人が災害活動について教育を受け、同じく5月にコンピュータシミュレーションによる台風対策の効果を検証。また、災害対策5ヵ年計画(1997年〜2001年/予算220億ドル)の中で昨年40億ドルを災害対策から技術開発に至る22項目に投入。 |
ネパール |
第9次計画(1998-2002年)により最新技術による国家防災体制及び消防力強化を計画。IDNDRネパール委員会のもと国家行動計画策定。UNDP等と協力し国家総合防災計画策定。 |
ラオス |
@災害対策法、活動計画書の作成。A人材育成計画。Bコミュニケーションシステムの改善。C財源の確保。D早期警戒システム。 |
マレーシア |
インドネシアの例を参考に独自の計画を策定中。中長期的観点や技術援助要請など盛り込む予定。オーストラリアの協力により森林火災対策計画を策定中。産業災害、土砂崩れも加え、計4の個別対応計画をつくり各ケース毎の関係省庁の役割、対応方法を規定。 |
モンゴル |
現在、自然災害軽減行動計画(草案)を策定中。市民防衛団体にマニュアルあり。 |
パプア ニューギニア |
@地域防災計画(州レベルの小規模な災害を対象)。A国家防災計画(見直しを検討中)。その他災害別に産業省が計画を策定(油の流出、民間航空機災害、火災等)。関係省庁が各計画を四半期毎に見直す。 |
フィリピン |
政府・各省毎に防災計画あり、定期的に見直し実施。 |
ロシア |
ロシア政府が災害基本計画策定。防災、救援、復興における関係省庁の役割を規定。災害対策計画では、森林火災、地震、洪水など、災害種類別に計画を規定。災害の規模によって中央政府、地方政府の区別なく使用。連邦レベルのマニュアルはない。 |
シンガポール |
最高責任者計画あり。あらゆる災害に対応。その下に災害別に16の実務対応計画あり(列車事故、爆発、化学災害、トンネル災害、航空機事故等)。 |
スリランカ |
災害対策基本計画あり(1990年策定)。改定を検討中。対策マニュアルはない。 |
タジキスタン |
政府が毎年市民防衛計画を採択。地理的条件、地方政府の災害対策計画を考慮したもの。1911年の地震で湖が氾濫し大被害が出たこともあり、今年5月に対策会議を開催予定。 |
タイ |
1988年の台風災害以来政府が災害対策の重要性を認識。国家開発計画の一部として災害対策5ヵ年計画(1997〜2001年)策定。これに基づき市民防衛マスタープランを導入(1998年)。災害時における関係省庁の責任の明確化、防災に関する各省庁の協力体制、コミュニケーションの効率化、NGOとの協力などを規定。実施6,7ヶ月目に入り、効果を評価中(1999現在)。 |
ウズベキスタン |
1997年キルギスで発生した洪水でウズベキスタンの116人の人命が奪われたことなどから衛星による早期警報システムが必要。 |
ヴィエトナム |
農業開発省洪水防御堤防管理センターで2010年までの防災行動計画を策定予定。 |
オーストラリア |
州、地方別に災害対策計画あり。その他に連邦政府災害対策計画、海外災害の協力を定めた支援計画あり。オーストラリア緊急対策マニュアルシリーズが必要事項のほとんどをカバー。 |
スイス |
国内では国防省が所管する災害基本計画(中央政府、地方自治体の理解統一のため用語定義)あり。実務対応用に災害別計画あり。国際協力は外務省所管の自然災害防災戦略あり。 |
《防災基本計画(日本国)》
また、地域レベルの防災体制に関しては、国内の地方自治体等の資料も各国の地域における防災体制の参考になると考えられるため、主要な自治体等から防災体制に関する資料を収集しており、参考までにそのリストの一部を掲載する。
これらの資料については、今後、アジア地域で共通する自然災害に対する、地域の防災体制を検討するための資料として有効に活用していく方針である。
表3-2-4-5
国内の防災体制に関する資料(抜粋)
発行者/作成者 |
タイトル(日本語) |
建設省 |
建設省防災業務計画(ホームページ) |
大阪府 |
大阪府防災会議条例【防災・消防】 |
名古屋市防災会議 |
名古屋市地域防災計画(附属資料編) |
宮城県防災会議 |
宮城県地域防災計画(風水害等災害対策編) |
静岡市防災会議 |
静岡市地域防災計画(一般対策編) |
静岡市防災会議 |
静岡市地域防災計画(東海地震等対策編) |
名古屋市防災会議 |
名古屋市地域防災計画(地震災害対策編) |
北海道防災会議 |
北海道地域防災計画(地震防災計画編) |
神戸市防災会議 |
神戸市地域防災計画地震対策編 |
芦屋市企画財政部防対策課 |
初動活動マニュアル |
北海道防災会議 |
北海道地域防災計画(資料編) |
大阪府 |
大阪府災害応急対策実施要領 |
芦屋市防災会議 |
芦屋市地域防災計画風水害等対策編 |
伊東市防災会議 |
伊東市地域防災計画一般対策編 |
芦屋市防災会議 |
芦屋市地域防災計画地震対策編 |
宮城県防災会議 |
宮城県地域防災計画(風水害等災害対策編)資料 |
北海道防災会議 |
北海道地域防災計画 |
神奈川県防災会議 |
神奈川県地域防災計画(風水害等災害対策計画) |
長崎市 |
長崎市地域防災計画、長崎市水防計画 |
大阪府防災会議 |
大阪地域防災計画-関係資料− |
神奈川県防災会議 |
神奈川県地域防災計画(地震災害対策計画) |
深江町防災会 |
深江町地域防災計画書 |
アジア防災センターとしての今後の課題は、収集した情報のデータベース化の推進、収集した情報の分析、これによる各国のニーズ把握、今後収集する必要のある情報の明確化、さらにこれらを通じた多国間防災協力の推進ということになろう。
アジア防災センターで収集した防災体制に関する情報は、各国で共有化していく必要がある。これにより、各国は自国の防災体制の整備・改善に生かすことが可能となる。この共有化の方法としては、アジア防災センターのホームページ上にデータベースへのアクセスシステムを用意し、ここから防災体制に関する必要なデータを抽出できるようにする予定である。
収集した情報の分析により、各国毎の特殊事情やニーズが明らかになってきた。また、既にある程度の防災体制が確立されている、日本、韓国、ロシア、シンガポール等の国と、防災体制の整備を進めつつあるネパール、ラオス、パプアニューギニア等の国に分かれることがわかった。前者についても、より一層の充実を図る必要があるし、後者については、域内協力の課題として優先的に取り組むことが必要と思われる。
また、アジア諸国の自然災害に対する脆弱性を軽減するには都市再開発などの都市計画の中で防災の要素を織り込む必要があるが、その前提として、各国政府及び市民の防災意識を高める必要がある。そのためには、早期に防災体制を含む防災に関する情報を各国で共有化することにより、立法担当者・計画立案担当者等が、防災問題の重要性の認識を、新たにすることが大切であろう。
これまでに収集した情報はまだ概要レベルの情報にとどまっており、法制度・計画等の整備をする国にとっては、法律・計画等の名称などの概要のみでは十分とはいえない。したがって、次年度より次のような情報の収集を図っていく必要があるものと考える。
専門家会議で決定されたように、今後も引き続き定期的な会合をもつことにより、最新の防災体制に関する情報の交換を進めていくほか、各国が防災体制に関する共通課題を継続して検討するワークショップの開催、またメンバー国研究員がアジア防災センターのスタッフとして活動することによる、派遣国及び域内の防災体制整備のための諸活動(アジア防災センターのネットワークと技術、各国の有用な人的・物的資源活用を含む)も大切な課題であると考える。
アジア地域においては、過去多くの大災害が発生し、その対応については、各国の特性、過去の災害の歴史などから各国において独自の積み重ねがある。しかし、これらの情報は、各国の言語により、各国独自の様式で記録されていることが多く、体系的な資料としてはインターネット上には発信されていないのが現状である。
今年度は、各国・関係機関で積み上げられてきた、過去の災害に対してどのような対応がなされてきたかについての情報を収集するとともに、世界各国における研究機関等で発信されている各国の災害対策事例の所在を明らかにし、アジア防災センターのホームページあるいは、各国のホームページを通じて、それらの情報の共有化を図っていくための基礎資料とした。
一方、災害発生後、被害状況や、対応状況などをまとめたレポートを、各国政府は、各国の国連開発計画
(UNDP)に提出しており、それらは、国連人道問題調整事務所(UN-OCHA)の、レリーフウェブからOCHA Situation Reportとして、インターネット上に発信されている。そこで、今年度はこのレリーフウェブに掲載された、OCHA Situation Reportをはじめとする関係機関からのレポート情報の中から、1998年度に発生し、アジア防災センターの最新災害情報に掲載した各国の自然災害での対策事例を中心に抽出し、それらについての所在情報をまとめるとともに、記述内容についての概略をまとめた。さらに、各国から提供されたカントリーレポート、他の既存データベース等における記述を抽出、整理することにより、各国における過去の自然災害に際しての対策についての概要把握を行った。
(表
3-3-2-1:抜粋 全体は https://www.adrc.asia/annual/98/h3-3-2-1.xls )さらに、専門家会議に際して各国から提出された防災情報全般をまとめたカントリーレポート全文の電子化作業、並びに全文の日本語への翻訳、さらに、体系的な目次の付加作業を行い、インターネットを通じてこれらの防災情報を提供していくための準備を行った。
(別添:カントリーレポート
https://www.adrc.asia/databox/countryreport/index.html)
表3-3-2-1
自然災害の災害対策事例〈1998〉(抜粋)Country |
Disaster |
Date |
Source |
Report |
Date of Issue |
災害対策事例の概要 |
China |
Floods |
Jun 1998 |
OCHA |
China - Floods OCHA Situation Report No. 1 |
9-Jun-98 |
中国政府は、救援物資を被災地に分配するとともに、被災者の救命・治療及び流行病の発生を防止するために医療チームを派遣。また、被害を受けた基盤施設の応急修理を開始。 |
OCHA |
China - Floods OCHA Situation Report No. 2 |
22-Jun-98 |
被災地に調査チームを派遣。救援活動は継続中。 |
|||
OCHA |
China - Floods OCHA Situation Report No. 3 |
3-Jul-98 |
中国民生省は、被災地にテントの配給するとともに、救援チームを派遣。 |
|||
OCHA |
China - Floods OCHA Situation Report No. 4 |
15-Jul-98 |
中国政府は、被災者救援のための資金を拠出。状況は安定しつつあるが、救援活動は継続中。 |
|||
OCHA |
China - Floods OCHA Situation Report No. 6 |
7-Aug-98 |
中国政府は、被災地に救援物資及び資金を大量に配分。 |
|||
OCHA |
China - Floods OCHA Situation Report No. 7 |
21-Aug-98 |
中国政府は、被災地に救援物資及び資金を大量に配分。軍は洪水と戦うための活動を展開。 |
|||
OCHA |
China - Floods OCHA Situation Report No. 8 |
3-Sep-98 |
中国民生省は、被災地への救援物資の配給計画を作成。被災地に100以上の作業チームを派遣し、その業務にあたらせる。救援活動に軍が重要な役割を担っている。 |
|||
OCHA |
Final Report on 1998 Floods in the People's Republic of China FANAL REPORT |
29-Sep-98 |
救援活動の実施にあたって、中央、地方、地元の組織機構が円滑に働く。 |
|||
Bangladesh |
Floods |
Jul 1998 |
OCHA |
Bangladesh - Floods OCHA Situation Report No. 1 |
17-Jul-98 |
救援管理室は、被災地の情報収集過程にある。救援が特に必要な地域では、すでに緊急救援活動を開始。 |
OCHA |
Bangladesh - Floods OCHA Situation Report No. 2 |
22-Jul-98 |
バングラデシュ政府は、被災地に米を支給。 |
|||
OCHA |
United Nations Flash Appeal in support of the Government of Bangladesh for Relief to the Victims of the Floods in Bangladesh |
4-Sep-98 |
バングラデッシュ政府は、被災者の救援のためにあらゆる資源を動員。また、政府は、基金からの拠出も含めた現金、米、衣類、ビスケット、飲料水などを支給。被災地には医療チームを派遣。 |
|||
OCHA |
Bangladesh - Floods OCHA Situation Report No. 8 |
9-Sep-98 |
バングラデシュ空軍は、救援物資を搬送。 |
|||
Bangladesh |
Country Report(1998) |
バングラデシュ政府は、孤立した住民を適切に避難させ、また洪水の状況を最大限の注意をもって監視。このため、大災害にしては、死者数は最小限となった。 |
||||
Indonesia |
Volcanic eruption |
Jul 1998 |
OCHA |
Indonesia - Volcanic eruption OCHA Situation Report No.1 |
15-Jul-98 |
インドネシア政府は、被災地に医師を含む救援チームを派遣。 |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul 1998 |
IFRC |
Papua New Guinea:Tidal Wave Information Bulletin No. 1 |
18-Jul-98 |
インドネシア政府は、早急に救援チームを派遣。生存者の確認とヘリコプターでの食糧輸送を実施。 |
OCHA |
Papua New Guinea - Tsunami OCHA Situation Report No. 3 |
20-Jul-98 |
地元の医療施設では負傷者を収容しきない状況である。首相は、非常事態宣言を発令。100万USDの拠出を即座に決定。ヘリコプターを使って負傷者をvanimo公立病院に搬送。 |
|||
IFRC |
Papua New Guinea:Tidal Wave Preliminary Appeal (22/98) |
21-Jul-98 |
災害直後、パプアニューギニア政府は、警察と軍隊を被災地に送り込んだ。また、首相等は被災地を訪問。 |
|||
OCHA |
Papua New Guinea - Tsunami OCHA Situation Report No. 4 |
21-Jul-98 |
Vanimo公立病院などには負傷者が次々と運び込まれている。現時点で優先されるべき事項は、死者の埋葬と被災者のための避難所の設置である。 |
単独の災害では最大の経済的被害を出した阪神・淡路大震災に関する文献については、すでに阪神・淡路大震災記念協会、神戸大学の震災文庫などで収集が進められており、目録については、インターネット上で検索できるシステムが構築されている。しかし、文献の中身については、これらからは直接アクセスすることができず、それぞれの文書庫に行かないと閲覧できない。
そこで、阪神・淡路大震災関連情報については、インターネットを通じて直接情報の中身にまでアクセスできる「阪神・淡路大震災関連全文データベース」(リンクページ)をホームページ上に構築するため、対策事例にとどまらず、統計データ、国、県、市等の公式文書、大学、研究機関等におけるレポート等のうち、インターネット上で内容を把握可能なものを抽出し、発信機関名、タイトル、著者、内容、ウェブアドレスなどの一覧を、インターネットを通じてリンクが可能な文書形式で整理した。
今回収集した阪神・淡路大震災関係の全文データとしては、日本語により発信されている情報と、英語による主として海外研究機関等からの情報にわけて整理すると下記のとおりである。
(1)
日本語の情報国内から発信されているものについては、ほとんどが日本語で記載されているが、一部は英語でも記載されたものがある。ホームページでは日本語と英語のページが異なるため、これらは別々に整理した。今回収集したデータは、日本語で記述されたもの
219件である。(表3-3-2-2, 表3-3-2-3)(
https://www.adrc.asia/hanshin-awaji_02_j.asp )(2)
英語の情報日本国内から英語で発信されている情報、海外から発信されている情報のうち、主としてアメリカにおける、政府・自治体、大学・研究機関等、企業関係
(出版社、コンサルタント)から発信されている情報について、全文にネット上でアクセス可能な82件を検索整理した。( https://www.adrc.asia/hanshin/database/ )
さらに、前述の阪神・淡路大震災記念協会のような阪神・淡路大震災に関する資料目録を発信しているサイトの一覧を作成し、文献検索が可能なウェブへのリンク集も同時にまとめた。
そして、阪神・淡路大震災の日本の公式記録ともいえる、日本国政府がとりまとめた防災白書における阪神・淡路大震災に関する記述については、平成7年度から
10年度までをインターネットに発信できる電子書式でとりまとめるとともに、その英訳版を作成し、阪神・淡路大震災の被害、対応、復旧・復興状況や、それらの経験から得られた教訓などを、アジア防災センターのホームページを通じて世界中で共有化するための資料とした。(別添 防災白書
https://www.adrc.asia/hanshin/hakusho/default.asp )その他、震災関連の最新統計情報を発信しているウェブへのリンク集など、阪神・淡路大震災に関する様々な情報源にアクセスできる、ホームページ作成に向けての基礎資料を作成した。
表3-3-2-2
阪神・淡路大震災 全文データ件数
《全文データ・基礎データ》
英 語 政府・自治体(Government Related) 19 大学・研究機関・学会等(Society / Association) 51 民間企業等(Business Related) 12 小 計 82
日本語 政府・自治体 46 大学・研究機関・学会等 127 民間企業等 12 小 計 219
合 計 301
|
《文庫リスト》 日本語 22
|
《最新統計情報(被害数値データ等)》 英語・日本語 (上記と重複) 6
|
阪神・淡路大震災関係については、早々に日本語、英語ともにウェブ上に発信する。なお、近年のインターネットの急激な普及に伴い、これまで印刷物として蓄積されていたレポート類が、一部インターネット上に発信されることが増えており、今後は、その動きを的確に把握するとともに、既存のリンク先をはじめ各方面に情報提供を依頼し、このデータベース(リンクページ)のさらなる充実を図る。
各国の災害対策事例については、今年度収集した情報を核として、特に大規模な災害をモデルケースとして抽出し、各国に災害対策事例に関する情報の提供、充実を依頼するとともに、それらを、各国で将来的に構築するデータベースの一部として蓄積していく。
表3-3-2-3
阪神・淡路大震災関連データの全文データベース(抜粋)
Top Page |
Title-1 |
Title-2 |
Title-3 |
Author |
DESCRIPTION |
自治省消防庁 (Fire and Disaster Management Agency) |
災害情報 |
阪神・淡路大震災について |
自治省消防庁 |
国の公式発表(第102報) |
|
総理府 (Prime Minister's Office) |
阪神・淡路大震災復興対策本部 (Secretariat of the Headquarters for Reconstruction of The Hanshin-Awaji Area) |
復興だより |
阪神・淡路大震災復興対策本部事務局 |
政府の震災復興対策の公式レポート |
|
運輸省 (Ministry of Transport) |
平成7年度 運輸白書 |
第1章 阪神・淡路大震災と運輸 |
運輸省 |
運輸省の公式記録 |
|
兵庫県 (Hyogo Prefecture) |
次の世代に伝えたい 阪神・淡路大震災 |
阪神・淡路大震災についての概要 |
知事公室防災企画課・消防課 |
地震と被害の概要 |
|
神戸市 (City of Kobe) |
阪神・淡路大震災 被災状況及び復興への取組状況 |
神戸市 |
神戸市の公式記録 |
||
神戸市教育委員会 |
阪神・淡路大震災 神戸の教育 100日間の取り組み |
神戸市災害対策本部学校部 |
|||
神戸市消防局 (Kobe City Fire Bureau) |
阪神・淡路大震災 |
地震の概要 |
神戸市消防局 |
神戸市消防局の公式記録 |
|
神戸市消防局 (Kobe City Fire Bureau) |
阪神・淡路大震災 |
被害の状況(総論、人的被害) |
神戸市消防局 |
神戸市消防局の公式記録 |
|
神戸市消防局 (Kobe City Fire Bureau) |
阪神・淡路大震災 |
被害の状況(物的被害) |
神戸市消防局 |
神戸市消防局の公式記録 |
|
芦屋市 (Ashiya City) |
阪神・淡路大震災 芦屋の記録 |
芦屋市 |
芦屋市の公式記録 |
||
西宮市 (Nishinomiya city) |
情報博物館 |
西宮市情報センター |
被害の分布等をビジュアルに解説 |
||
建設省建築研究所(BUILDING RESEARCH INSTITUTE) |
えぴすとら |
Vol.10 兵庫県南部地震における建築物被害の調査 |
建設省建築研究所(BUILDING RESEARCH INSTITUTE) |
||
科学技術庁防災科学技術研究所 National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
阪神・淡路大震災データベース |
報告書全文データベース |
1.阪神・淡路震災復興計画<分野別計画>緊急インフラ整備3か年計画 |
兵庫県阪神・淡路震災復興本部土木部土木復興局復興対策室 (Hyogo Prefecture) |
アジア地域においては、過去多くの災害が発生し、それらの情報は、各国において各国の言語で記録されているほか、関係研究機関、大学などでも整理、データベース化されている。
過去の災害の記録は、防災計画の立案、見直し、その他種々の調査、研究を行う上で貴重なデータであるため、情報の利用者であり供給者でもある各国のニーズを把握しつつ、各国において蓄積されている自然災害情報の収集を行うとともに、世界各国の研究機関等ですでにデータベース化されているものを中心に過去の自然災害についての情報収集を行った。
このように、一つの災害について、複数の機関から発信されている過去の災害情報を、アジア防災センターのホームページ上で有機的に連携し、過去の災害に関連する様々な情報が、必要に応じて容易に入手できる自然災害情報のリンク集をアジア防災センターのホームページに作成するため、これらの情報をウェブに発信できる形でとりまとめを行った。
過去の自然災害情報についての基礎的なデータは、ベルギーのルーベンカトリック大学災害疫学研究所
(CRED)の災害データベース(EM-DAT)に、1900年以降の死者数10人以上、あるいは被災者数が100人以上の災害等について蓄積されている。これらのデータは、各災害に際しての対応や海外からの緊急援助の状況、あるいはそれらから得られた教訓などを関連をづける際に必要な情報であり、今後、アジア防災センターあるいは各国で構築していく災害データベースの重要な基礎資料となることから、CREDに対して各国における主な自然災害についての情報提供を求めた。CREDのEM-DATが、統計データを主体としているのに対し、レリーフウェブにストックされているデータは、災害状況の詳細、背景、国内外の対応状況などが網羅されていることから、過去数年間の主な災害については、EM-DATに加えてレリーフウェブ、その他各国の政府関係機関、研究機関、大学等の既存データベース、あるいは、カントリーレポートの記載事項等も取り込んだ形で、過去の災害情報についてのとりまとめを行った。
さらに、
1999年2月に開催した第1回アジア防災センター専門家会議での議論を踏まえて、過去の災害データとして必要な項目を網羅したフォーマット原案を作成し、今後、これをもとにメンバー国と意見交換を行いつつ総括的なデータベースのフレームを確立する。
前述のCREDは、
1973年に創設された非営利研究機関であり、そのEM−DATには、1900年以降のアジア地域におけるあらゆる災害(自然災害、人災)のうち、死者が10人以上、あるいは被災者数が100人以上と報告されたもの及び国際救援のアピールが出された災害が記録されており、総数は10,000件を越え、それらについて、下記のデータが登録されている。この膨大なデータのうち、アジア防災センターの関係国に関する自然災害は、死者が
(表
3-4-3-1、表3-4-3-2)この表から、国際防災の
10年開始以降の災害は、総件数としては、過去100年間の三分の一が発生しているが、死者が1,000人を越える大災害の割合は低くなっており、被災者に対する死者数の割合も小さくなっていることが読みとれる。
表
3-4-3-1 メンバー国の自然災害〈1900〜1989〉
Country |
Number of Disasters |
Dead@ |
Injured |
Affected PopulationA |
Homeless |
Amount of Damage (US$) |
@/A |
||
Dead:10-99 |
100-999 |
over 1000 |
|||||||
Bangladesh |
41 |
32 |
24 |
2,423,123 |
752,925 |
235,429,405 |
36,152,667 |
3,792,779,000 |
1.03% |
Cambodia |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
|
China |
62 |
55 |
41 |
11,804,655 |
259,609 |
311,885,794 |
5,483,500 |
74,436,155,000 |
3.78% |
India |
86 |
110 |
79 |
1,777,178 |
11,445 |
1,556,605,544 |
20,206,400 |
8,111,561,000 |
0.11% |
Indonesia |
48 |
34 |
10 |
52,114 |
14,079 |
7,906,012 |
316,600 |
758,378,000 |
0.66% |
Japan |
85 |
49 |
24 |
214,425 |
5,267 |
6,347,757 |
1,705,100 |
5,890,800,000 |
3.38% |
Kazakhstan |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
|
Korea |
21 |
23 |
1 |
7,242 |
3,165 |
7,018,697 |
701,844 |
1,671,954,000 |
0.10% |
Laos |
4 |
1 |
0 |
361 |
0 |
4,868,000 |
17,600 |
16,780,000 |
0.01% |
Malaysia |
6 |
0 |
0 |
189 |
0 |
783,576 |
15,000 |
75,100,000 |
0.02% |
Mongolia |
4 |
1 |
1,257 |
0 |
250,000 |
20,000 |
25,000,000 |
0.50% |
|
Myanmar |
6 |
7 |
3 |
7,442 |
200 |
2,338,907 |
494,200 |
2,700,000 |
0.32% |
Nepal |
10 |
16 |
1 |
13,224 |
6,886 |
5,706,500 |
32,790 |
330,413,000 |
0.23% |
PNG |
7 |
3 |
2 |
7,231 |
0 |
93,300 |
4,000 |
43,275,000 |
7.75% |
Philippines |
103 |
67 |
9 |
44,157 |
26,314 |
28,922,336 |
3,371,123 |
3,908,003,000 |
0.15% |
Russia |
12 |
8 |
8 |
*** |
15,260 |
6,251,000 |
574,586 |
22,549,800,000 |
*** |
Singapore |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
|
Sri Lanka |
9 |
5 |
0 |
1,924 |
6,000 |
14,507,347 |
1,420,000 |
189,800,000 |
0.01% |
Tajikistan |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
|
Thailand |
8 |
5 |
0 |
2,689 |
2,745 |
7,832,078 |
35,000 |
1,179,046,000 |
0.03% |
Uzbekistan |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
0 |
|
Viet Nam |
16 |
17 |
3 |
15,329 |
6,007 |
36,031,957 |
1,115,861 |
81,000,000 |
0.04% |
Total |
521 |
436 |
206 |
22,742,108 |
1,109,902 |
2,232,778,210 |
71,666,271 |
123,062,544,000 |
1.02% |
〈アドバイザー国〉 |
|||||||||
Australia |
18 |
2 |
0 |
1,434 |
12,167 |
73,974 |
3,200 |
10,732,300,000 |
1.94% |
France |
17 |
1 |
0 |
672 |
194 |
529,700 |
0 |
1,938,520,000 |
0.13% |
New Zealand |
0 |
2 |
0 |
443 |
39 |
35,901 |
5,600 |
255,000,000 |
1.23% |
Switzerland |
5 |
1 |
0 |
353 |
0 |
2,070 |
0 |
977,500,000 |
|
Total |
40 |
6 |
0 |
2,902 |
12,400 |
641,645 |
8,800 |
13,903,320,000 |
0.45% |
This data was made available from the EM-DAT Disaster Database, Centre for Research into the Epidemiology of Disasters (CRED), Catholic University of Louvain,Belgium. cred
@epid.ucl.ac.be表3-4-3-2
メンバー国の自然災害〈1990〜1998〉
Country |
Number of Disasters |
Dead@ |
Injured |
Affected PopulationA |
Homeless |
Amount of Damage (US$) |
@/A |
||
Dead; 10-99 |
100-999 |
over 1000 |
|||||||
Bangladesh |
33 |
30 |
3 |
148,621 |
92,081 |
126,841,021 |
5,658,000 |
5,231,500,000 |
0.12% |
Cambodia |
1 |
2 |
665 |
7,850,000 |
29,100 |
3,542,000 |
0.01% |
||
China |
74 |
41 |
5 |
24,618 |
388,032 |
807,793,862 |
26,020,990 |
88,201,860,000 |
0.00% |
India |
38 |
46 |
7 |
39,835 |
24,157 |
239,775,290 |
3,467,700 |
20,775,600,000 |
0.02% |
Indonesia |
30 |
9 |
1 |
5,499 |
258,043 |
2,666,424 |
456,428 |
17,671,178,000 |
0.21% |
Japan |
20 |
1 |
1 |
6,354 |
30,690 |
1,291,460 |
159,441,800,000 |
0.49% |
|
Kazakhstan |
1 |
1 |
121 |
638,000 |
8,000 |
31,775,000 |
0.02% |
||
Korea |
13 |
2 |
975 |
201 |
553,248 |
300,757 |
2,368,600,000 |
0.18% |
|
Laos |
2 |
70 |
372 |
831,400 |
328,779,000 |
0.01% |
|||
Malaysia |
4 |
1 |
370 |
24 |
31,433 |
8,000 |
1.18% |
||
Mongolia |
3 |
103 |
61 |
105,000 |
1,822,800,000 |
0.10% |
|||
Myanmar |
5 |
188 |
4,341,633 |
263,739 |
563,915,000 |
0.00% |
|||
Nepal |
9 |
3 |
2 |
3,922 |
202 |
1,320,025 |
63,560 |
250,200,000 |
0.30% |
PNG |
6 |
1 |
1 |
2,627 |
947 |
1,469,999 |
117,500 |
409,000,000 |
0.18% |
Philippines |
48 |
17 |
3 |
17,421 |
14,948 |
39,810,049 |
5,828,231 |
3,829,065,000 |
0.04% |
Russia |
22 |
4 |
2 |
5,061 |
1,720 |
203,295 |
58,783 |
71,967,700,000 |
2.49% |
Singapore |
|||||||||
Sri Lanka |
5 |
175 |
1,978,970 |
931,140 |
250,260,000 |
0.01% |
|||
Tajikistan |
4 |
1 |
1 |
1,714 |
39 |
280,100 |
67,105 |
539,400,000 |
0.61% |
Thailand |
11 |
2 |
864 |
671 |
19,541,729 |
212,140 |
3,052,220,000 |
0.00% |
|
Uzbekistan |
1 |
96 |
67,800 |
3,900 |
0.14% |
||||
Viet Nam |
22 |
16 |
1 |
8,510 |
60,829 |
10,224,108 |
1,023,378 |
2,047,970,000 |
0.08% |
Total |
351 |
178 |
27 |
267,809 |
873,017 |
1,267,614,846 |
44,518,451 |
378,787,164,000 |
0.02% |
〈アドバイザー国〉 |
|||||||||
Australia |
3 |
149 |
1,372 |
22,856,075 |
8,815 |
7,512,933,000 |
0.00% |
||
France |
6 |
193 |
20 |
319,540 |
200 |
2,106,100,000 |
0.06% |
||
New Zealand |
4 |
2,815 |
126,500,000 |
0.14% |
|||||
Switzerland |
4 |
16 |
273,060,000 |
||||||
Total |
9 |
0 |
0 |
350 |
1,408 |
23,178,430 |
9,015 |
10,018,593,000 |
0.00% |
This data was made available from the EM-DAT Disaster Database, Centre for Research into the Epidemiology of Disasters (CRED), Catholic University of Louvain, Belgium.
cred@epid.ucl.ac.be
国連の人道問題調整事務所
(OCHA)のレリーフウェブについては、1980年以来20年にわたって、OCHA、その前身のUNDHA(UN Department of Humanitarian Affairs=国連人道問題局)等が災害状況をまとめたレポートを蓄積し、インターネット上に公開している。また、過去2年程度のものについては、国連の情報以外に国際赤十字社、WFP、WHO、ロイター通信などからの情報も含まれている。今回、
1995年以降の自然災害について、レリーフウェブに掲載された全災害について、各レポートのウェブ上の所在を確認し、それらを一覧表にまとめ、過去の災害情報の基本的な骨組みとした(全世界を対象)。上記の各災害に関するレリーフウェブをはじめとする、アジア防災センターの最新災害情報、カントリーレポートの所在、各国、関係機関の防災データベースのその災害に関する情報の所在を、なるべく多く検索し、それに続けてウェブアドレスをまとめた一覧表を作成し、一つ一つの災害をキーワードとした関連情報がウェブ上で検索できるようなデータベース構築の基礎資料を作成した。
(
抜粋:表3-4-3-3 全体: https://www.adrc.asia/annual/98/h3-4-3-3.xls )
表3-4-3-3
1995〜1998における世界の主な自然災害情報の所在(抜粋)Country |
Disaster |
Date |
Home Page |
Japan |
Earthquake |
Jan-95 |
ReliefWeb |
Japan |
Earthquake |
Jan-95 |
ADRC |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
ReliefWeb |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
ADRC |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
Australian Geological Survey Organisation |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
DISASTER RELIEF |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
IFRC&RCS |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
JET |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
NOAA |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
NVNAD |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
The AGE online |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
The USC expedition team |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
United States Geological Survey |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
WEST COAST & ALASKA TSUNAMI WARNING CENTER Home Page |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
赤十字国際ニュース |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
まちづくり計画研究所 |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
BRIAN CASSEY photographer |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
Center for Tsunami Inundation Mapping Efforts |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
Japan Meteorological Agency |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
NDA (防衛大学校) |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
NOAA |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
NTF |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
OCHA-Online |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
Siberian Center for Global Catastrophes Computing Center |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
USGS |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
VITA |
Papua New Guinea |
Tsunami |
Jul-98 |
Water Cycle Change and Impacts Laboratory |
Bangladesh |
Flood |
Aug-98 |
BANGLADESH-FLOOD '98 |
Bangladesh |
Flood |
Aug-98 |
DISASTER RELIEF |
India |
Floods and Landslides |
Aug-98 |
ADRC |
India |
Floods and Landslides |
Aug-98 |
IFRC&RCS |
India |
Floods and Landslides |
Aug-98 |
OCHA-Online |
India |
Floods and Landslides |
Aug-98 |
ReliefWeb |
India |
Floods and Landslides |
Aug-98 |
VITA |
India |
Floods and Landslides |
Aug-98 |
赤十字国際ニュース |
Nepal |
Flood |
Aug-98 |
ADRC (Country Report 1998) |
Nepal |
Flood |
Aug-98 |
OCHA-Online |
Nepal |
Flood |
Aug-98 |
ReliefWeb |
Nepal |
Flood |
Aug-98 |
VITA |
Rep. of Korea |
Flood |
Aug-98 |
ADRC (Country Report 1998) |
Rep. of Korea |
Flood |
Aug-98 |
IFRC&RCS |
Rep. of Korea |
Flood |
Aug-98 |
OCHA-Online |
Rep. of Korea |
Flood |
Aug-98 |
ReliefWeb |
Rep. of Korea |
Flood |
Aug-98 |
VITA |
Russian Federation |
Flood |
Aug-98 |
ADRC |
Viet Nam |
Drought |
Aug-98 |
VITA |
Viet Nam |
Drought |
Aug-98 |
ADRC |
Viet Nam |
Drought |
Aug-98 |
OCHA-Online |
Viet Nam |
Drought |
Aug-98 |
ReliefWeb |
Viet Nam |
Drought |
Aug-98 |
UNDP |
Philippines |
Flood |
Sep-98 |
VITA |
Russia |
Forest Fires |
Sep-98 |
ADRC |
Russia |
Forest Fires |
Sep-98 |
IFRC&RCS |
Russia |
Forest Fires |
Sep-98 |
ReliefWeb |
Russia |
Forest Fires |
Sep-98 |
OCHA-Online |
Russia |
Forest Fires |
Sep-98 |
VITA |
Papua New Guinea |
Volcanic Eruption |
Oct-98 |
VolcanoWorld Starting Points-Univ.of Dakota |
Bangladesh |
Cyclone |
Nov-98 |
VITA |
Bangladesh |
Cyclone |
Nov-98 |
ADRC |
Bangladesh |
Cyclone |
Nov-98 |
DISASTER RELIEF |
Bangladesh |
Cyclone |
Nov-98 |
OCHA-Online |
Bangladesh |
Cyclone |
Nov-98 |
ReliefWeb |
Bangladesh |
Cyclone |
Nov-98 |
VIETNAM WEB |
China |
Earthquake |
Nov-98 |
ADRC |
China |
Earthquake |
Nov-98 |
DISASTER RELIEF |
China |
Earthquake |
Nov-98 |
OCHA-Online |
China |
Earthquake |
Nov-98 |
ReliefWeb |
China |
Earthquake |
Nov-98 |
Seismology Research Centre |
China |
Earthquake |
Nov-98 |
VITA |
Indonesia |
Earthquake |
Nov-98 |
ADRC |
Indonesia |
Earthquake |
Nov-98 |
DISASTER RELIEF |
Indonesia |
Earthquake |
Nov-98 |
OCHA-Online |
Indonesia |
Earthquake |
Nov-98 |
ReliefWeb |
Indonesia |
Earthquake |
Nov-98 |
Seismology Research Centre |
Indonesia |
Earthquake |
Nov-98 |
VITA |
第1回アジア防災センター専門家会議における議論において、必要な災害情報としては、単なる統計データのみならず、過去の災害から得られた教訓などが重要であることを各国担当者は認識し、過去、現在の自然災害情報を整理する上で必要とする項目のリストアップを行い、フォーマットのひな形を作成した。(表
3-4-3-4)このフォーマットをベースに、各国に自然災害情報の提供を求めることとするが、基本的には、この様式にはとらわれずに、ここに記載した項目が包含された既存のデータベースや、報告書等がある場合は、それを代用していくことで、情報提供を求めていく。
表
3-4-3-4 データフォーマットDATA FORMAT | ||
COUNTRY |
||
LOCATION |
(Village, City, Region, Epicenter-Earthquake) |
|
KIND |
(Earthquake,Landslides, Flood, Typhoon,---) |
|
NAME |
(Ex. Kobe arthquake---) |
|
DATE |
||
OUTLINE |
||
Human Life Losses |
||
Missing |
||
Injured |
||
Affected Population |
||
Homeless |
Evacuated, Resettled |
|
Houses destroyed |
Totally |
|
Partially |
||
Loss of Cattle |
||
Loss of Cattle Sheds |
||
Estimated Amount of Damage/Losses |
||
Measures, Aid, Contribution |
International |
|
National |
||
Local |
||
Others |
||
Recovery |
||
Reconstruction |
||
Rehabilitation |
||
Causes of Disasters |
||
International Appeal |
Yes No |
Date, Contents |
Miscellaneous/Remarks |
今年度は、レリーフウェブに掲載された
1995年以降の災害について、関連情報の所在をとりまとめた。今後は、
CRED等からのデータ提供を求めつつ、それ以前の主な災害のリストを作成し、それに関する各国・各機関の情報の所在を順次追加していく。同時に、各国におけ防災関連情報のインターネットホームページの作成を支援し、今回作成した自然災害情報に関するデータフォーマットのひな型に含まれる項目を含めた各国独自の災害情報ホームページを構築し、将来的には、各国のホームページから各国の情報については発信できるようなネットワークシステムの構築を目指していく。
このように、世界各地、各機関で発信されている自然災害情報と、今後構築していく各国のホームページに掲載される自然災害情報のインデックスをアジア防災センターのホームページに作成するとともに、それらを容易に抽出できる検索エンジンを設置し、インターネット時代にふさわしい世界中の情報資源を有機的に活用した自然災害情報データベースの構築を目指す。
なお、インターネットホームページをすぐには設置できない国々については、当面アジア防災センターのコンピューターに情報を蓄積し発信することとする。
各国における危険度診断評価がどのように実施されているかの概要についての情報を収集するとともに、日本においてすでに実施されている各種の危険度診断評価手法を収集し、その考え方や評価方法、活用方法、さらに、各手法の有用性や問題点等について整理する。
第1回アジア防災センター専門家会議に際して提出を求めたカントリーレポート、各国の現地調査に際して入手した資料の中から、危険度診断評価にかかる内容を抽出し、それらをとりまとめた。
また、既存文献等から、日本において実施されている地域危険度測定や被害想定手法、ハザードマップ等の災害種別危険度診断評価手法を収集し、その考え方や評価方法、活用方法等を整理した。
さらに、災害の種類ごとの、日本における主な危険度評価手法についてまとめた。
カントリーレポート、現地調査から得られた資料については、表
3-5-3-1のとおりである。また、インターネット上から収集できた資料は表3-5-3-2にまとめたとおりである。
一方、日本における危険度診断評価手法としては、表3-5-3-3をはじめ、災害の種類別に様々な手法が導入されている。
(
https://www.adrc.asia/annual/98/h3-5-3-3.doc)
今年度は、日本における危険度診断評価手法を中心に収集したが、今後は、アジア地域各国や先進国における地域危険度診断評価手法の収集・整理を行うとともに、各手法の有用性と問題点、日本の危険度診断評価手法との比較等を分析する。
表3-5-3-1
各国の危険度診断評価手法(カントリーレポート(1998)より)
韓 国
災害による危険度評価システム(RAESDI)
○河川の下流域に居住する住民の生命や財産を守るために、1996年10月21日に導入された。計50のプロジェクトが1998年8月末までに検討され、このうち37プロジェクトが承認。
○洪水ハザードマップの例
フィリピン
PHIVOLCS
Laban La Nina
表3-5-3-2
WEB上の危険度診断評価手法Disaster |
Source |
Report |
Web Adsress(Report) |
Home Page |
Eearthquake |
国土庁 |
地震被害想定支援マニュアル |
http://www.nla.go.jp/boushi/manual/index.html |
国土庁ホームページ |
Eearthquake |
国土庁 |
地震被害想定支援ツール |
http://www.nla.go.jp/boushi/manual/tool/index.html |
国土庁ホームページ |
Eearthquake |
自治省消防庁 |
簡易型地震被害想定システムVer.2の作成について |
消防庁ホームページ |
|
Eearthquake |
自治省消防庁 |
簡易型地震被害想定システムについて |
消防庁ホームページ |
|
Tsunami |
気象庁 |
新しい津波予報 |
http://www.kishou.go.jp/info/981102/tsunami.html |
気象庁ホームページ |
Tsunami |
自治省消防庁 |
「地域防災計画における津波対策強化の手引き」及び「津波災害予測マニュアル」の策定について |
消防庁ホームページ |
|
Volcanic eruption |
日本火山学会 |
火山災害と噴火予知 |
http://hakone.eri.u-tokyo.ac.jp/kazan/jishome/koukai98/ida.html |
日本火山学会ホームページ |
Earthquake |
消防科学総合センター |
被害想定 |
消防科学総合センターホームページ |
|
自治省消防庁消防研究所 |
自治省消防庁消防研究所ホームページ |
|||
財団法人原子力発電技術機構 |
NUPEC |
表3-5-3-3
日本における主な危険度評価手法について(項目抜粋)
国土庁:地震被害想定マニュアル(及び地震被害想定支援ツール) |
自治省消防庁:簡易型被害想定システム |
東京都:東京における直下地震の被害想定 |
東京都:地震に関する地域危険度測定 |
気象庁:新しい津波予報及び津波災害予測マニュアル |
国土庁:火山噴火災害危険区域予測図作成指針 |
桜島火山噴火災害予測調査協議会:桜島火山噴火災害危険区域予測図 |
建設省:洪水氾濫シミュレーション |
防災においては、他の分野と異なり、優れた知識や技術を持つ研究者だけが、エキスパートとして認められるものではない。これらの研究者、それらの知識・技術を基に政策を決定する行政の防災担当者、決定された政策を基に行動をとり、また意見を行政サイドにフィードバックさせていく市民の
3者が密接なネットワークを作り、情報の交流が円滑に進んでこそ、真の防災行政が機能するものである。そこで、人材情報については、高度な知識や技術を持つ研究者という狭義のエキスパートではなく、より広く防災に従事するもの、ということで人材情報の提供をよびかけている。具体的には、学識経験者、防災の研究者・技術者、行政の防災担当者、防災を主な業務とするNGOのエキスパート、防災関連の国際機関の担当者などを想定し、情報提供を呼びかけている。情報提供に関しては、一部の情報を除く全ての情報を公開のものとし、誰でも参照可能な形で提供を行う。ただし、集められた情報をそのまま提供しても、ユーザーのニーズに合致した情報以外の無駄な情報の流れが多くなるため、国別、専門分野別に検索機能を設け、よりニーズに近い形でユーザーが情報収集を行えるよう配慮した。
人材情報の収集と提供の方針に基づき、収集する情報の項目を決定した。項目は以下のとおりである。
敬称、氏名、生年月日、性別 |
勤務先名、勤務先住所、勤務先の所在する国名、勤務先電話番号、勤務先FAX番号、 勤務先電子メールアドレス、勤務先職位 |
最高学位、最後に所属した教育機関名、卒業年次、言語能力、勤務経験(国内)、 勤務経験(国際) |
研究分野、キーワード、アブストラクト |
このうち、生年月日、性別、最後に所属した教育機関名、卒業年次、アブストラクトを除く項目が、オープンにされている。
人材情報の収集に関しては、インターネットを介した方法と、紙媒体を使ったものの二通り用意した。
インターネットを介した方法は、アジア防災センターのホームページの一部である
http://unhinet.adrc.asia/
にアクセスし、所定の項目入力画面で入力を行い、「完了」することにより、アジア防災センターへの電子メールとして情報が送られてくるものである。電子メールという情報伝達方法を利用し、ユーザーが直接データベースを変更する形をとらなかったのは、セキュリティ対策のためである。
紙媒体を用いた方法は、インターネットを介した場合に用いた登録用紙と同様のものを印刷物として作成し、人材データベース作成の意義、利用方法などを合わせた小冊子を作成し、配布を行った。この用紙に記入を行い、FAXもしくは郵送によりセンターに情報を送付することにより、センターへの登録が可能となる。また、印刷可能な登録用紙をWebで提供するサービスの提供も行っている。これは、ネットワーク環境の管理方針により、Webの閲覧は可能であるが、電子メールの送付が行えないホストの利用を考慮してものである。
データベースシステム上に入力された一人分のデータのサンプルを、図
3-6-2-1に示す。
図
3-6-2-1 データベースシステム上に入力された一人分のデータのサンプル表3-6-3-1に示すように、58カ国1383人の情報を収集することができた。これらのうち、アジア防災センターメンバー国の人数は1290人である。これらの情報はすべてアジア防災センター内のデータベース上で管理され、ユーザーのリクエストに応じて情報の提供を行っている。ユーザーのリクエスト方法は、
の二通りで、これらにより選られたリストを閲覧し、ニーズに合致した人材情報をさらに選択することで、その人材の全ての情報(公開対象となっていない項目は除く)を入手することができる。
表3-6-3-2に、人材情報データベースの専門分野による検索機能を用いて、災害名を基にキーワード検索を行った結果を示す。専門分野は、表記方法が統一されていなかったり、専門の絞り込み型が異なっているために、キーワードだけによるの検索は難しいが、これだけでも一定の結果が得られることを示している。
収集された情報の提供は、該当する人材のリストによる簡易データ一覧と、特定の人材の公開情報をすべて網羅した詳細データ欄より構成される。簡易データ一覧では、表示項目を「氏名」、「勤務先名」、「勤務先職位」、「勤務先住所」、「勤務先電話番号」、「勤務先
3−6−4 今後の方針
表3-6-3-1で示したように、人材情報ネットワークで収集している人材情報は、国・地域によって大きな偏りがある。これは、それらの国・地域にエキスパートが少ないためではなく、アジア防災センターの初年度の調査地域の選定によるものである。次年度以降は、今年度あまり情報が得られなかった地域を中心に、情報の収集を行う予定である。また、利用者の反応を踏まえ、サービスする内容やインターフェースについて改善を図っていく。
表3-6-3-1
収集された人材情報の国別一覧
表3-6-3-2
災害名による検索結果Disaster |
Number |
Typhoon |
1 |
Cyclone |
17 |
Hurricane |
0 |
Tsunami |
3 |
Tidal Wave |
0 |
Landslide |
1 |
Flood |
66 |
Drought |
20 |
Earthquake |
101 |
Volcanic Eruption |
36 |
Forest Fire |
4 |
図
3-6-3-1 簡易データ一覧 サンプル
図
3-6-3-2 詳細データ欄 サンプル